
ボルボEX90ウルトラ・ツインモーター・パフォーマンス/価格 1399万円。パフォーマンスは前220kW/後280kWモーターを搭載し、0→400m加速を4.2秒でクリアするパワフル仕様。一充電航続距離は650km。広いキャビンは3列シート構成。乗車定員は7名
EX90はXC90クラスのBEV版であり、ボルボの新たなフラッグシップSUV。そのEX90が、ようやく日本に導入された。実は海外では2024年にデリバリーされていたのだが、日本ではカジュアルなEX30が先行した関係もありこのタイミングになった。だが待たされた甲斐あって今回のEX90は、800Vのアーキテクチャーを採用するなどかなり大がかりな変更を受けた最新版だ。
パッケージは3列シート/7名乗り。現在でも多人数乗車が可能な大型SUVというジャンルは少数派である。快適で多彩に使えるBEVを探しているユーザーにEX90は最適なモデルといえる。
EX90は強い個性を放っていた。Cd値0.29を達成したフラッシュサーフェスのモダンかつ空力性能に優れたデザインがまず印象的。ヘッドライトは高精細ピクセルタイプを搭載しており、トールハンマーが上下に割れるタイプを初採用。周囲の状況に応じて配光特性を自在に変える。ボディサイズは5035×1965×1740mmとビッグサイズ。だがシンプルな表面仕上げもあって威圧感はあまり感じられない。最小回転半径が5.9mと比較的小回りが利く点もうれしい。
クリーンな印象のインテリアも好印象。天然およびサステイナブル素材が採用され、上品でシンプルなスカンジナビアンデザインが心地いい。もちろんスペースは広大といいたくなるほど余裕がある。フロアが後方に行くほど高くなるシアター設定のため、どの席に座っても視界がワイドで閉塞感を感じない。
ディスプレイはツイン仕様。ドライバー正面に小さな液晶、センターには縦長の大型タッチパネルがレイアウトされている。EX30と同様に、物理スイッチがほぼ廃止され、操作系はほぼすべてセンターディスプレイに集約されている。ステアリングやドアミラーの位置調整もここで行う。最初はやや戸惑うが、慣れると便利。安全面を含め、人間研究に定評のあるボルボだけに、シンプルなだけでなく使いやすさもよく煮詰められている。各部の作りはフラッグシップと呼ぶにふさわしく、入念そのもの。ラゲッジは3列目が電動で倒せるようになり、フロントラゲッジ(フランク)はフタがなく使いやすくなった。
今回は都内から栃木県の日光・中禅寺湖までを往復した。試乗車は最上級グレードのウルトラ・ツインモーター・パフォーマンス。パフォーマンスは、フロントモーターが220kW、リアモーターが280kWを発揮する最強版。システム合計で最高出力は500kW(680ps)、最大トルクは実に870Nmを誇る。0→100km/h加速も4.2秒と俊足だ。一充電走行距離は、WLTCモードで650kmを実現している。
走り出すと、車両重量が2.7tを超えるヘビー級であることを忘れる。フラットで滑らかな走りに感心した。これには路面の状況に応じて機械的に減衰特性を変化させるFSD(周波数応答型ダンピング)機能が効いているに違いない。
静粛性も圧倒的。すべてのウインドウを合わせガラスにした効果もあり、驚くほど静寂な車内を実現している。高速道路を巡行しても、風切り音はまったく気にならない。それほど静かなEX90には、車内の前後席間での会話を聞き取りやすくする機能まで装備されている。1列目と3列目で声を張らずに会話できるのは、やはり素晴らしい。
高速道路では、先進運転支援機能の高い完成度も体感した。パイロットアシストの制御は自然で、コーナー手前では自動的に適宜減速してくれる。渋滞時のストップ&ゴーの待機時間が3秒から5秒に延長された点も使いやすさを高めている。
車線維持の的確さはもちろん、レーンチェンジアシストの動きも極めて自然。気づいたら車線変更が完了している印象だ。スムーズさと安心感は絶大である。また、ステアリングホイールのセンサーが静電容量になったので、指を添えていればOK。先進のレーダー機能に加えて、ドライバーモニタリング機能は2方向からドライバーを監視しており、誤検知がほぼないというのも助かる。
パフォーマンスは優秀。さすがは0→100km/h加速4.2秒というだけあって、踏み込むと加速力はかなりのレベル。余裕しゃくしゃくのクルージングを満喫した。ワンペダル機能は、AUTOを選択すれば前にクルマがいるとそれに反応し、いないとコースティングする。サスペンションフィールやステアリング操作感は、3段階から選べる。
日光いろは坂のワインディングでは、サイズを意識させない運動性能を感じることができた。物理的な重さは下りのコーナーではどうしても感じるが、意外にスイスイと走れる。全部で25基ものスピーカーを備えたB&Wのサウンドが味わえるのもEX90のポイントのひとつ。細かく設定が可能で、サウンドがわかりやすく変わるので、いろいろ試して楽しむことができた。
早朝から夕方までの試乗は快適に終了。静かでなめらかで振動のない走りは本当に疲れ知らずで、もっと走っていたい雰囲気だった。電動化により得たものは非常に大きい。EX90はボルボらしさを磨いた安全で快適、そして速さも光るロングクルーザーである。
