【跳ね馬の新たな最高峰】Overview/フェラーリ849テスタロッサは伝説の名を継承した新フラッグシップ。システム出力1015cvを誇るPHEVスポーツの目指した地平とは

フェラーリ840テスタロッサはクーペボディ(6465万円〜)とオープンボディのスパイダー(7027万円〜)をラインアップ。車名の「849」は8気筒エンジンと、1気筒当たりの排気量(499cc)に由来する

フェラーリ840テスタロッサはクーペボディ(6465万円〜)とオープンボディのスパイダー(7027万円〜)をラインアップ。車名の「849」は8気筒エンジンと、1気筒当たりの排気量(499cc)に由来する

SF90の後継車であり、フェラーリの新たな象徴。それは驚きに満ちている

 2025年9月にデビューしたフェラーリSF90の後継モデル、その名は「849テスタロッサ」。8気筒エンジンの「8」と、単気筒あたり499ccという排気量を示す「49」を組み合わせたこの数字、またフェラーリの伝統として高性能エンジンの証でもある「赤い(エンジン)ヘッド」を意味する「テスタロッサ」の名を冠したフェラーリ渾身の最新作、超高性能パワートレーンを持ったプラグインハイブリッド(PHEV)のスーパースポーツカーである。

サイドビュー

エンジン

 全面的に改良された4リッター・V8ツインターボエンジン(F154FC型)は、最高効率を追求してシリンダーヘッドを再設計。これまでの公道走行可能なフェラーリの中で史上最大のターボチャージャーを採用するなどして、SF90比で50cv上乗せされた830cvを発生する。これに3基(リアに1基、フロントに2基)の電気モーターによって最高220cvが加わることで、システム総合出力1050cvを誇る高性能パワートレーンを搭載する。

 また、エンジン回転数とともに力強く高まるサウンドを生み出す工夫も徹底的になされている。F1マシンにも使われる超耐熱合金、インコネル製のマニホールドが、軽量化はもちろん、素材自体の響きのよさを活かして、全回転域で密度の濃いサウンドを実現。フェラーリ独自のホット・チューブ(サウンド伝達パイプ)と相まって、キャビンに官能的なサウンドを届けてくれる。

俯瞰01

俯瞰02

 一方で、7.9kWhのバッテリーを搭載し、最大25kmかつ最高速度135km/hのBEV走行が可能なEV(eDrive)モードでの静けさも手中に収めた。他にも、最新ADAS(先進運転支援システム)のACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)や、制限速度の遵守を促すワーニング機能など、市街地を含む一般道でのジェントルな振る舞いに必要な機能はひととおり備えている。
 これらは、もはや現代的スーパースポーツの新たなお作法ともいえる。いや、もはやいわずもがなの必須装備なのである。

先進と伝統の融合。新開発トータル制御システム」FIVE」で知性も手に入れた

 どこか懐かしくも新しさを感じるフロントフェイスは、1980年代のスーパースポーツの象徴でもあるリトラクタブル・ヘッドライトを現代版にアレンジしたもので、その意匠だけでなく造形的に緻密な空力デバイスとして機能する。躍動的な形状のドアも、独自のホットスタンプ技術によって実現された深い溝が、リアのインタークーラーへの導風を促し、SF90比で空気流量が30%向上、ハイパフォーマンスに不可欠な熱管理に寄与した機能性を併せ持つ。特徴的なツインテールは、512Sや512Mといった往年のレーシングカーに着想を得て、最新のデザイン言語で再解釈されたものだ。これもただのアクセントではなく、250km/h走行時に車両全体で415㎏も発生するダウンフォースの約10%を生み出すという。圧倒的なパワーと空力という、「速さ」に対する機能性とともに、未来視点から見た「美しさ」を秘めたデザインが、現代フェラーリの哲学を感じさせる。

正面

リア

 インテリアに目を向ければ、人間工学の観点からドライバーを重視する空間が広がっている。空間構築の考え方はこれまでも変わらないのだが、歓迎したいのは物理ボタンの復活である。エンジンスタートボタンを含む、主要な操作に物理ボタンが配され、直感的かつスピーディな操作が可能になった。お馴染みとなったマネッティーノ(ダイヤル式のスイッチ)はダイナミックコントロール用(WET/SPORT/RACE/CT OFF/ETC OFF)だ。さらにホーンボタン下部には、タッチパネル式のeマネッティーノと呼ぶパワートレーン制御用(eDrive/Hybrid/Performance/Qualify)のスイッチが配される。メーターパネルは、16㌅大型ディスプレイに各種インフォメーションがデジタル表示され、ドライバーの視線移動を最小化するためにそれぞれのレイアウトが緻密に工夫されている。

室内全体感

給油リッド

充電リッド

 フェラーリはこの849テスタロッサについて、レース用車両の導入ではなく、あくまで公道での官能性を追求した「究極のロードカー」だと主張している。その強大なパフォーマンスを、プロドライバーに限らず、誰の手にも委ねられるようにするためだという。そこでこのモデルでは「知性」という新たなファクターに注目しておきたい。

 それは、「FIVE(フェラーリ・インテグレーテッド・ビークル・エスティメーター)」と呼ばれる新開発の制御システムの導入である。「デジタルツイン」という概念で、車載コンピュータの中で、実車の状態をリアルタイムに再現。車体各部のセンサーから得られる膨大なデータを用いて、FIVEシステムが車両の状態をミリ単位で正確に「推定」する。これまでのように、滑ってから対処する、というフィードバック型の「介入」制御ではなく、先んじて予測・準備され、同時並行で「確定」させていくフィードフォワード型の制御となるため、ドライバーには違和感なく、「意のままに操っている」という快感を提供できるように仕立てられているのだ。

スタイル

 1050cvものモンスター級のパフォーマンスを持ったマシンを、だれもが安全かつ官能的に操ることができるようにする、という新たなチャレンジ。テクノロジーとエンジニアリングによって、知性と感性の先にある新次元のパフォーマンス体験を顧客に提供すること。これがまさに「一歩先の技術」を搭載したこの849テスタロッサで実現した新たな価値であり、フェラーリにおける新たな最高峰の誕生だといえるだろう。

エンブレム

諸元

フォトギャラリー

SNSでフォローする