【跳ね馬の新たな最高峰】Interview/フェラーリ・ジャパン社長 ドナートA.ロマニエッロ「フェラーリを持つという体験価値」

ドナートA.ロマニエッロ代表取締役社長は、2012年にフェラーリジャパンに入社。マーケティング部門などを経て2023年10月に現職に就任。流暢な日本語を話すナイスガイ

ドナートA.ロマニエッロ代表取締役社長(写真右)は、2012年にフェラーリジャパンに入社。マーケティング部門などを経て2023年10月に現職に就任。流暢な日本語を話すナイスガイ

フェラーリが選ばれる理由、それは「感情」と「合理」

 フェラーリは近年、好調に業績を伸ばしている。日本市場で昨年の年間登録台数が1523台(前年比105.4%、出典:JAIA)を記録した。フェラーリ・オーナーが増え続けている現状にはどんな背景があるのか。日本はアメリカ、ドイツに次ぐ大きな市場であり、いまもなお多くの新しい顧客が増え続けている。そこで今回、フェラーリジャパン代表取締役社長のドナート・A・ロマニエッロ氏(以下、ドナート社長)に、近年の市場動向と共に現在のフェラーリの顧客実態について、そしてフェラーリを所有するとはどんなことなのかを、オブザーバーにモータージャーナリスト・九島辰也氏を交え、お話をうかがった。

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山本善隆(カー・アンド・ドライバー統括編集長):あらためて「フェラーリを持つ」ということはどんなことなのかをうかがいたく、まずは購入実態について教えてください。

ドナート社長:購入動機にはさまざまな要素が絡まっていて、大きく分けて感情面と合理面があると思っています。まず感情面でいうと3つあって、第一にフェラーリを持つことで、社会的成功のひとつの到達点として、いわばステータスの象徴として手に入れたいと思っていただくことがあります。第二にはやはりプロダクトの魅力、具体的には性能や技術への愛着が挙げられます。加速やエンジンサウンド、あるいはモータースポーツ由来の技術に魅力を感じてくださっていることです。そして第三にイタリアンデザインの美しさがあり、ブランドストーリーやアイコニックな造形、そしてアートとしての価値を感じてくださっています。

 一方の合理面で見ると、資産価値としての保全性が高い点。つまり、フェラーリのクルマはどれも残価が高いという特徴があります。数年前には残価どころか価値そのものが上昇する、といった事例があったのも事実です。最近では認定中古車も充実しており、新車だと2年ほど納車を待つといったことも起こりますが、中古車なら予算に合わせて好きなモデルを待たずに購入できます。なので、初めてのフェラーリとして自然な選択肢になっているという実情もあります。

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 現状の販売構成としては、既存顧客と新規顧客の割合はおおむね半々となっています。新規顧客の多くは認定中古車をご購入いただいているのですが、そのお客様の多くが次にフェラーリの新車を購入をしてくださっています。その理由としては、個々のお客様から見れば、年齢や社会的成功の進展に伴って、認定中古車から新車購入へのモチベーションが自然と上がっていく、というパターンが一般化していると見ています。これがご指摘のあったフェラーリ・オーナーが増え続けている背景だといえるでしょう。

山本:認定中古車プログラムにはどんな特徴があるのでしょうか?

ドナート社長:フェラーリの認定中古車制度、「フェラーリ・アプルーブド」は世界共通です。202項目の技術チェックに加え、保証延長を含めた詳細なプログラムがあります。

 また、日本では2015年に「フェラーリ・フィナンシャルサービス」として、当時の一般的な常識を超える残価率を設定した革新的なプログラムを開始しました。クルマ好きな方々がその内容をみれば、それがいかに驚異的なことなのかをわかっていただけると思います。

物価上昇が続く中、いまこそ認定中古車に注目すべきタイミング

山本:フェラーリとしても電動化モデルが着々と増えていますが、これらの市場動向はいかがでしょうか?

ドナート社長:現在はハイブリッドモデルと純ガソリン車で状況が異なっていて、複雑化しています。一般論としても、やはりバッテリーに対する不安や充電環境の問題など、日本市場としてはまだ電動化の準備が万全ではないと捉えています。ただフェラーリとしては大きな問題はなく、いずれものモデルも好調です。市場の複雑化はありますが、フェラーリのブランド価値が低下しているということはありません。

山本:経済的背景とその影響についてどのように捉えていますか?

ドナート社長

ドナート社長:近年の物価上昇を考慮すると、一般的に新車の価格調整は自然な流れですが、当社の価格改定はつねに商品力の進化とともに行われています。パフォーマンス、デザイン、空力ソリューションの向上に加え、インテリアの機能性や素材も刷新され、車両ダイナミクスは大きく進化しています。その結果、お客様にはこれまで以上に質の高い、洗練されたドライビング体験を提供しています。そして旧モデルとの価格差が広がることになり、中古車の割安感が高まっているという過去になかった現象が起きています。不動産に例えればわかりやすいかもしれませんね。もしかすると、フェラーリを認定中古車で手に入れる、というのはいまが絶好の機会かもしれません。ただ、もちろん最終的には先ほど申し上げたような感情と合理性のバランスですので、人によって判断は異なってくると思います。

ライフスタイルとの親和性を図る新世代オーナーたち

山本:合理性の点についてはもうひとつの側面があるのでは思っています。それは金額という数字では測れない、体験価値という点です。具体的にはオーナー同士のコミュニティによる交友関係の広がりや、フェラーリやディーラーが提供するさまざまなアクティビティへの参加などの特別な機会が得られることなどです。あらためてうかがいますが、「フェラーリを持つ」ということで、そのオーナーは何を期待し、そこにはどんな世界が待っているのでしょうか?

ドナート社長:これは顧客層と価値観によって異なると思います。年代でみれば、50〜60代の既存顧客層でみれば、所有すること自体の自己満足、つまり「ステータス」を重視する傾向は強いと思います。一方で、中古車を購入する30〜40代の比較的若い世代では「ライフスタイル」が重要な要素になっていると思います。この世代は、やっと憧れの世界に近づいたという感覚とともに、数多くのモデルの中から自分のライフスタイルに合う1台をピンポイントで探しているのです。実際、新車の場合はモデルの選択肢が限られますが、中古車はカリフォルニアからポルトフィーノ、最近のローマまで、多様なモデルから選べるという自由があります。ライフスタイルに合うかどうかが、ステータスに加えて重要な要素になっているのです。また、お話にあったようなコミュニティの存在、同じ価値観を持つ人々とのつながりが偉えることも、購入動機につながっているようです。

走り

九島辰也(以下、九島):私の友人ではクラシック・フェラーリと現代モデルのフェラーリを使い分けしているオーナーがいます。また今の時代、一人でフェラーリに乗ってどこかへ行っても、その体験がSNSを通じて瞬く間に広がります。これは、「あのとき行っていた場所に今度一緒に行こうよ」というように、SNSがきっかけで新たなつながりが生まれることがあるのです。

 また、50〜60代のオーナーたちが、事業主や経営者同士でつながり、それがビジネスに発展するケースも見受けられます。つまり、フェラーリはコミュニケーションツールとしても素晴らしい役割を果たしているといえるでしょう。

ドナート社長:SNSのおかげで、フェラーリのブランドイメージにもポジティブな影響が起こっています。かつて、高価なクルマを購入しても、その世界観が自分にあうかどうかは一種のリスクだったといえます。しかし、いまではSNSのおかげで、これまで見えにくかったフェラーリ・オーナーの世界観を事前にチェックできるようになりました。これは、ライフスタイルや価値観を重視する世代にとって、大きな判断材料となるのです。

九島:さまざまなオーナーが、SNSで積極的に情報発信することで、フェラーリのイメージはこれまで以上に良くなっていると思いますね。オーナーにとって「体験価値」はとても重要だと思います。フェラーリ・ジャパンは今年どんなイベントを予定していますか?

イベント

ドナート社長:グローバルで展開するプラットフォームとして、「オン・トラック(サーキット走行)」と「オン・ロード(公道走行)」の2種類のイベントがあります。究極のサーキット体験としては「フェラーリ・クラブチャレンジ」というレースがありますが、より参加しやすい「クラブ・チャレンジ」という走行会イベントもあります。

 さらに、今年は日本で初めて「コルソ・ピロタ」というドライビングレッスンプログラムも導入予定です。ビギナーからアドバンスまでを対象とした1泊2日のプログラムで、詳細はこれからご案内できると思いますが、もう少しお待ちたいだければと思います。将来的には、ここからフェラーリ・クラブチャレンジやフェラーリ・チャレンジに参加するお客様が増えてくれることを期待しています。

九島:以前も開催していた「ピロタ・フェラーリ」とは違うものですか?

ドナート社長:いえ、それと同じものです。しばらく中断していましたが、正式なプログラムとして再開します。他にも、公道走行では「フェラーリ・ツアー」というコンセプトのイベントがあります。普段お客様もあまり足を運ばないような、歴史ある美しい場所を探し出し、ホスピタリティの高いツアーを企画しています。
 他にもより一般の方も参加できるようなイベントも考えています。ぜひ今後のフェラーリにご期待ください。

ドナートさん

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