【跳ね馬の新たな最高峰】The Spirit of Testarossa/フェラーリ849テスタロッサ、その栄光の名称が意味するもの

最新のフェラーリ949テスタロッサは伝説の称号の復活。それは歴史から大切なスピリットを継承したことの証

最新のフェラーリ949テスタロッサは伝説の称号の復活。それは歴史から大切なスピリットを継承したことの証

「テスタロッサ」とは、「最強」を意味する特別な称号

 イタリア語の響きは日本人の耳にたいてい心地よい。「テスタロッサ」という単語を初めて聞いたとき、私は20歳前後だったはずだ。すぐにその語感、ワードフィールの虜になった。興味を持って意味を問う。テスタ=アタマ、ロッサ=アカい、つまり「赤い頭」。その名前の由来が赤いシリンダーヘッドのことだと知って、憧憬の念が増した。もちろん、「くちプロレス」用の強力ネタとしても!

 アラカン世代にとってテスタロッサとは1984年にデビューした180度V12をドライバーの背後に積んだ、サイドフィンデザインもユニークなあのモデルのことである。レオナルド・フィオラバンティ率いるピニンファリーナデザインの傑作。モデル的には10年目を迎えていたベルリネッタ・ボクサーシリーズの大発展版であり、当時のスーパーカー界においてF40とその人気を二分するスーパースターだった。その心臓部が「Testa-rossa(テスタ・ロッサ)」で、名前の由来であるというという事実が、そのネーミングをさらにかっこよく響かせていた。とにかくアラカン世代はテスタロッサという単語が好きで好きでしようがない。

テスタ01

512TR

 個人的に初めてドライブした跳ね馬が、そのテスタロッサの「大発展形」というべき512TRだった。もちろんTR=テスタ・ロッサだ。テスタロッサに比べてエンジン搭載位置を下げ、ドライバビリティを向上させた名車である。

 当時インポーターだったコーンズ・リミテッドからデモカーの512TRを借りて、撮影取材のため芦ノ湖スカイラインへ回送した時のこと。通称「山羊さんコーナー」の駐車場に512TRを止めて撮影部隊を待っていると、そこに見慣れぬ小さなオープンカーが爆音を轟かせてやってきた。エンブレムを確認せずとも、ボディサイドの黄色いシールドペイントを見ればフェラーリだとわかる。ドライバーはメディア界の大先輩で、日本屈指のフェラリスティでもあったS氏だった。自己紹介を済ませ、フェラーリが大好きであることをアピールすると先輩はこう言い放たれた。

「ニシカワ君、512TRもいいフェラーリですけどね、これが本当のテスタ・ロッサなんですよ」。
 いまでもそのときの様子を鮮明に覚えているのだから、よほど強烈な印象だったのだろう。S氏のフレーズだけじゃない。まるでレーシングカーのようなサウンドを響かせた、その小さな赤いバルケッタもまた私の心を大いに昂らせたからだった。

500TR-01

500TR-02

 その正体こそが、初代テスタ・ロッサの500TRである。1956年に登場したこのモデルには500モンディアルの「大発展形」として2リッターの「レーシングユニット」が積まれていた。500とは1気筒あたりの排気量を意味していた。つまり4気筒モデルである。

 とくに高性能なエンジンであるという目印としてメカニックがボディ修復用の赤いペイントでそのカムカバーを塗ったのが名の由来とされているが、そのエンジンを積み込み車名として初めてその名を使ったのが500TRであった。その後、500TRCへと進化し、さらには3リッター・V12を積んだ250テスタ・ロッサも登場するに至った。アラカンよりも兄貴の世代にとって憧れのテスタロッサといえばそれはポンツーン・フェンダーを持つ250TRであろう。現在では20億円以上の価格で取引される名馬である。

現代に蘇った「テスタロッサ」それは史上最強のロードカーを示す称号

 時代をリードする高性能モデルシリーズにあって、そのポテンシャルを飛躍的に引き上げたとき、マラネッロは象徴的なネーミングを使う。マラネッロにとってテスタロッサのようなビッグネームは、そのモデルのデザインやスペックを代弁するものでは決してない。まして懐古趣味ではあり得ない。それはあくまでも高いパフォーマンスと、伝説や哲学を継承するものである。つまり現代に蘇ったテスタロッサには、最新のロードカーラインアップにおいて重要な役割があるというマラネッロからの積極的な宣言であるといっていい。

真正面

リア

 いったいマラネッロは最新のテスタロッサで何をアピールしたかったのか。849=8気筒+499cc/シリンダーの新型テスタロッサは、ロードカー・ポートフォリオにおけるパイロットモデル(=超高性能スポーツカー)のトップランクであるという宣言に他ならない。決して12気筒であることやサイドフィンやポンツーンフェンダーであることを意味するものではない。「テスタロッサ」というネーミングが、コンセプトをアピールするために最も有効な手法だったというだけのことである。

 SF90の後継モデルとして誕生した849テスタロッサ。BBからテスタロッサへの進化イメージと私にはダブって見えた。4リッター・V8ツインターボエンジンに高電圧バッテリーと3基の電気モーター、そして8速DCTを組み合わせたPHEVパワートレーンシステムはSF90と形式的には共通である。

エンジン

 だが大型IHI製タービンやブロック、ヘッド、EXマニホールドなど多くを新設計としF154FC型へと進化したV8ツインターボは単体の最高出力が830cvとなり、3基合計で220cvを発生する電気モーターを加えて、システム最高出力は1050cv、最大トルクも1250Nmにまで達した。

 最高出力だけを見ても、いまなお現役のパフォーマンスを見せるSF90ストラダーレに比べて50cvアップ、SF90XXストラダーレと比べても20cvアップという驚異の数字である。そして実際に試してみたその実力のほどは、確かに、史上最強のロードカーと呼ぶにふさわしいものだった。

 フィオラノテストトラックにおけるラップタイムは、クーペのアセットフィオラノ仕様であればサーキット重視のSF90XXストラダーレよりなコンマ2秒遅いだけの1分17秒500である。0→100km/h加速に至ってはなんとXXを上回って2.25秒を記録するという。 

 それゆえ849テスロッサはデザイン的にはもちろん、肝腎要のパフォーマンス的にみても、限定生産のスーパーカーシリーズ(いわゆるスペチアーレ)を除けば、マラネッロ史上最強のシリーズ生産ロードカーなのである。

リア

室内

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