
トヨタ・クラウン・エステートRS(PHEV)/価格:810万円。エステートはワゴンとSUVの機能を融合したマルチモデル。ラインアップはPHEVとHEVを設定。PHEVは充電時はBEVとして走り、長距離でも電欠知らずのオールラウンダー。駆動方式は電動4WD。WLTCモード燃費は20.0㎞/リッター
HEV(ハイブリッド)の王者ともいえるトヨタは、PHEV(プラグインハイブリッド)のラインアップを積極的に増やしている。現在、プリウス、RAV4、ハリアー、アルファード&ヴェルファイア、そして、このクラウン(エステート&スポーツ)に設定。PHEVはBEVと同様のモーターでの走行が楽しめ、長距離でも充電の心配がいらないオールラウンダーとして存在感を高めている。
トヨタのPHEVは独特である。欧州勢によくある、内燃エンジンを主体とするパワートレーンにモーターを組み込み、バッテリーと組み合わせて外部から充電できるようにしたシステムとは成り立ちが違う。ざっくりいうと、もともと完成度の高い独自のシリーズパラレル式のストロングハイブリッドがあり、それをベースにバッテリー容量を増やして、外部から充電できるようにした機構となっている。併せてシステム出力を大幅に向上しパフォーマンス強化を図ったのも特徴だ。
4タイプの個性が揃う最新クラウン・シリーズには、それぞれ中核となる2.5リッターハイブリッドともうひとつ特色のあるパワートレーンが設定されている。最初に発売されたクロスオーバーの場合は、スポーティ指向の2.4リッターターボ+マイルドハイブリッドだった。スポーツとエステートにはPHEVが用意された。スポーツはモーターのパワーを使ってキビキビと走れるように、一方のエステートは長距離をどっしりとクルージングできるよう味付けしている。同じシステムでもクルマの性格に合わせてチューニングを分けているのが最新トヨタらしい。なお、セダンに関してはFCEV(水素燃料電池車)を設定した。これは、公用車や法人のユーザーにこそ、環境負荷の少ないクルマに乗ってもらいたいというメーカーのメッセージでもある。
試乗したエステートのPHEVは、モーターならではレスポンスと強力なパワーが生み出す余裕。そして優れた静粛性が印象的。パートナーや気のおけない仲間と旅に出かけたくなるキャラクターの持ち主だった。
EV/HVモードの切替スイッチのほかに設定された、AUTO EV/HVモードスイッチを押すと、EV走行をメインにしながら、パワーが必要なときに自動制御でエンジンが始動する。
EV走行可能距離は89㎞(WLTCモード)。走りの電動感は強く、実際にバッテリーが残っていればEV走行比率は90%以上になる。通常ユースはほぼBEVと変わらない。
モーター出力はフロントが182㎰、リアは54ps。EV走行時でもモーター出力が十分なので、加速力に不満はない。HVモードを選択すると、積極的にエンジンがかかり、より瞬発力のある走りが味わえる。パフォーマンスはまさに緩急自在。ドライバーの意のままだ。ちなみに積極的に充電するチャージモードも設定されている。
システム最高出力は225kW(306㎰)。これはHEVの179kW(243㎰)に比べて、46kW(63㎰)も大きい。200㎏近い車両重量の増加分を考えても余力があるのは明白だ。
一方、WLTCモード燃費は20.0㎞/リッター。HEVの20.3㎞/リッターと比べるとわずかに劣る。とはいえ今回の約300㎞の試乗では22.1㎞/リッターをマークした。燃費・経済性はサイズや車格を考えると驚異的である。V2Hにも対応しているので、住環境によっては利便性も高くなる。
足回りの完成度も高い。PHEVにはHEVに対して減衰力の向上と摩擦の低減を図ったAVS(電子制御サス)が装備されており、乗るとその効果を実感。上質でしなやかな仕上がりとなっている。PHEV専用設定のリアコンフォートモードを選択すると、乗り心地が一段とソフトになる。
21㌅大径幅広タイヤを履くのはクラウン・シリーズ共通。エステートの足回りは「軽快ながら重厚感のある走りを目指した」という狙いから、重心高が高くなることやフル乗車して重い荷物を載せる場合にも配慮して調律している。滑らかな味わいはクラウンならではだ。
安定感も抜群。DRS(後輪操舵機構)は70㎞/h以上での走行時に同相制御を強めた独自のセッティングが施されていて、高速コーナリング時の安定感が増していた。適度に俊敏な回頭性と優れた操縦安定性のバランスは素晴らしい。
エステートはユーティリティも抜群。テールゲートを開けてリアシートを倒すと奥行き2mを超すフラットスペース出現する、これは、なかなか圧巻だ。クラウンは「全席特等席」を念頭に開発をされているが、エステートはその思想を荷室にまで広げ、カーペットに毛並みの細い材質を採用。触感を高めるなど、質感に徹底的にこだわっている。
どの席に座っても、広大と表現したくなるパノラマルーフ(op11万円)が絶大な開放感を与えくれるのも「全席特等席」の表れ。さらには、1500Wまで使えるAC100V電源が後席と荷室に設定されているほか、引き出し式のデッキチェアやデッキテーブルといった気の利いたアイテムまで装備されている。
あらためてじっくりと乗って、クラウンは従来モデルに比べてキャラクターは変化しているが、日本のユーザーにとって到達点だと実感した。この走りや仕立てに触れると気持ちが落ち着く。やはり「いつかはクラウン」であることを再認識させられた。
