
SUBARUレヴォーグ・レイバック・プレミアムブラックS:HEV EX/価格:424万6000円。レイバックのS:HEVモデルはプレミアムブラック(写真)とプレミアム(452万1000円)の2グレード。プレミアムブラックは装備の一部見直しでを従来の1.8ℓターボとほぼ同価格に設定。なかなかリーズナブル
都会的で上質なSUVを狙って2023年10月に登場したレヴォーグ・レイバックは、スポーティな走行性能、上質さ、質感がオーナーから高く評価されてきた。
一方で、燃費のいいハイブリッドがほしい/ボンネットのターボダクトをなくしてほしい/街中でより便利なパッケージングにしてほしい/なんとか全高1550㎜以下にならないかなど、いろいろな声が聞かれ、メーカーとしても重く受け止めたという。
新たにラインアップに加わったレイバックS:HEVモデルは、ユーザーニーズに応えた期待の1台。開発陣は「いいものを納得いく価格で、少しでも早く」を念頭に、さまざまな要素を盛り込んだ。
S:HEVシステムは、既存のクロストレックやフォレスターと共通。すなわち2.5リッターの新開発ボクサー(160㎰/209Nm)と高出力モーター(119.6㎰/270Nm)、大容量バッテリーを組み合わせ、駆動方式はスバル独自のシンメトリカルAWD。だがそこはスバルである。理想の走りのため、各部はレイバックに合わせて最適化されている。
スバルのS:HEVについておさらいしておこう。状況に応じて動力源のエンジンとモーターを効率よく使い分けるトヨタの技術をベースとするシリーズパラレル方式である。スバル独自のシンメトリカルAWDの基本レイアウトを継承しつつ、水平対向エンジンと新開発トランスアクスルを搭載。また、前後輪をプロペラシャフトでつなげる機械式AWDを採用することで、あらゆる路面で優れた走行安定性を発揮する。
トランスアクスルは、S:HEV専用品である。駆動用と発電用の2基の高出力モーター、フロントデファレンシャルギア、電子制御カップリングをワンパッケージ。最高出力119.6psを発生する駆動用モーターにより、幅広い走行シーンでモーター駆動をメインとし、モーターが苦手な領域をエンジン駆動がカバーする。また、発電用モーターから高電圧バッテリーへの電力供給を緻密に制御することで駆動用モーターの電力量を常に安定に保つのも特徴だ。
もちろんS:HEVは、十分な燃料タンク容量と、標準1.8ℓターボモデル比で約35%の燃費性能向上を合わせて、圧倒的な航続可能距離を実現している。レイバックS:HEVのWLTCモード燃費は19.0㎞/リッター、燃料タンク容量は63リッター。単純計算だが、航続距離は1197㎞に達する。
開発コンセプトは、「移動の質を高めるハイブリッド・クロスオーバー」。レイバックS:HEVは、レヴォーグ譲りのツーリング性能と、ストロングHVの上質さと経済性、そしてSUVに匹敵する実用性を兼備した生粋のオールラウンダー。ライバル不在、唯一無二の価値を追求したモデルといえる。
ラインアップはプレミアムブラックS:HEV EX(424万6000円)と、プレミアムS:HEV EX(452万1000円)の2グレード構成。エクステリアはターボダクトを廃したボンネットと専用デザインのフロントマスク、そして従来モデル比で20㎜車高を低くして1550㎜とした全高が特徴。最低地上高も従来比20㎜低い180㎜。一般的な立体駐車場を利用できる利便性を実現しながら、地上高を雪道や一般的なオフロードを余裕でこなせる設定としているのがスバルらしい。ちなみにルーミーな室内空間はS:HEV化されてもそのまま。後席を使用した状態で、荷室長1000㎜以上というワゴンならではの積載性を実現。安全・運転支援機能は最新鋭のアイサイトEXをもちろん標準で装備する。
車両キャラクターは、レイバック自体がSUVとワゴンのクロスオーバーだが、今回のS:HEVはそこから質感と性能を高めたところに位置づけられる。
実際に対面するとエクステリアは、スッキリとした印象。専用フロントマスクはワイドなイメージを強調し、ターボダクトの廃止で伸びやかなルーフラインとのバランスが改善されたと感じた。
魅力は、思いのほかリーズナブルな価格だろう。販売主力となるプレミアムブラックのプライスは前述のように424万6000円。本革シートをはじめナビなどのインフォテインメント機能、18㌅アルミなど、このクラスに求められるラグジュアリーさを備えたうえでの戦略価格に価値がある。兄弟分のフォレスターのS:HEV(437万8000〜464万2000 円)より安く、1.8ℓターボを搭載する同じレイバックのブラックセレクションと同一価格なのだ。詳細にチェックすると後席リクライニング&シートヒーター、パワーリアゲート、ハーマンカードン・オーディオ、スマートリアビューミラーなどが省かれているが、その多くはメーカーopとして装着ができる。
約28万円高の上級グレード、プレミアム S:HEV EXはタンナッパレザーシートが付くほか、上述したオプションのほとんどが標準装備となる。また、ディーラー装着用品を駆使した個性的な3種類のパッケージがラインアップされたのも新しい。
走りは上質でしっかりとした印象だった。車両重量は約100㎏重くなっており、それに対応してサスペンションは車高を下げるだけでなく各部が最適化されている。
ベースとなった1.8リッター・ターボ車では小さなうねりなどでコツコツが感じられたところ、S:HEVは滑らかさが増していた。通常は車重が重くなった場合、スプリングレートを固めるのが常套手段。しかし開発陣は絶妙に設定。実質的にベース車と同等になるようにし、車重の増加が“落ち着きを増す方向に作用”するよう工夫した。
こうすると固有振動数が下がりサスペンションが動きやすくなるのだ。しかも姿勢を下げた分のサスペンションストローク量を確保するために、ストラットダンパーのケース長と、バンプストッパーの長さを最適設計した。もちろんダンパー減衰特性も見直している。具体的には微振幅域は少し動きやすくして、路面のひび割れや小さな凹凸での吸収性をリファイン。一方、100㎏重くなったアッパーボディは、ひとたび動き始めてしまうと止めるのが難しい。その対応として減衰力を少し高めて収まりをよくしている。つまり動かすところと止めるところで最適化を図ったのだ。これはレヴォーグを深く知る開発陣だからこその手腕。走り味を重視するスバルならではだ。アライメントについても、20㎜車高を下げた改良に最適化するよう修正したという。
試乗は長野県・白馬のスキー場の一角を用いたラリーのSSのようなコースで、アップヒルとダウンヒルを試した。
アクセルレスポンスはさすがS:HEV。リニアで力強い。急な上り勾配をものともせず駆け上がっていく。足回りはしっとりと上質になっていた。荒れた路面でも入力が上手く緩和される感覚もある。入念なチューニングの効果が実感でき、このクルマに与えられたコンセプトにもふさわしい味付けだった。
レイバックS:HEVは、時に攻めた走りにトライしてもドライバーの期待に応えてくれるオールラウンダーだった。ツーリングワゴン作りに豊富な経験を持つスバルらしい味わいが心地いい。こういうレイバックを待っていたユーザーは多いに違いない。