【最新モデル試乗ワイガヤ】トヨタGRカローラはスーパー耐久の知見を活かして熟成。「25式後期」は確実に先に進んでいる。でもちょっとハードかも!?

トヨタGRカローラRZ(25式後期)/価格:6MT 568万円/8SAT 598万円。25式後期はスーパー耐久参戦やニュルでの開発を通じボディ骨格/吸気冷却性能/サウンド作りが進化。通常販売モデルに移行した

トヨタGRカローラRZ(25式後期)/価格:6MT 568万円/8SAT 598万円。25式後期はスーパー耐久参戦やニュルでの開発を通じボディ骨格/吸気冷却性能/サウンド作りが進化。通常販売モデルに移行した

より走りを究める方向で発展リファイン

山本善隆(以下、山本) GRカローラもGRヤリスと同様に「進化するスポーツカー」ですね。2023年に発売された22式が最初で、西村さんが乗っている23式、そして25式前期、今回試乗した25式後期へと発展しています。

西村直人さん(以下、西村) “23式”は締結剛性を高めるボルトを使っている点が話題になりました。リブ付きフランジボルトに変えたり、ボルトサイズを拡大したりしています。バッテリーアースの特性も変更していますね。

これはエンジニアが「細かい点だけど、最もお金をかけずに改善効果が大きい」と語っていました。通電したときに、モーターに伝わる最初の電力がだいぶ違ってくるからで、EPSの特性まで変わってしまうくらいだそうです。

西村さん

山本 “25式前期”では運動性能をさらに引き上げていますね。開発の舞台は富士スピードウェイで、トラックモードの設定、ABSやエンジン、サスペンションと、いろいろな点を改善しています。アブソーバーにリバウンドスプリングを追加したり、コイルスプリングとスタビライザーのバランスを改善したり、ジオメトリーの変更、アンチスコート率の変更、トレーリングアームの取り付け点変更、トラックモード使用時の駆動力配分の改善とABS制御の最適化などなど、その進化ポイントは多岐にわたっています。本当に走り込んだうえでリファインを進めていることがわかります。

 そして最新の“25式後期”では、構造用接着剤を13.9mプラスしてボディ全体の剛性、剛性感を引き上げています。出力面では二次吸気口にダクトを追加して、エンジンに取り込むフレッシュエアの流れを最適化しています。さらに、アクティブサウンドコントロール(以下、ASC)を使った車内音響効果の演出を図ったということも紹介されています。

西村 本当に徹底していますよね。

山本 そうですね。でも、正直いうと、西村さんが乗っている23式のほうが個人的には好みだなというか、先入観とのギャップがないフィーリングだと思いました。

リアルスポーツとして進化するGRカローラの功罪

西村 ボクの23式は1万3000㎞走っていて、2年間タイヤを交換していないので、トレッド面の硬化がすでに始まっています。タイヤを新品にしたら、もっといいフィーリングになると思います。

山本 25式後期のGRカローラに乗って思ったのは、すごい“スポーツカー”になっているな、ということです。進化の方向が私が勝手に想像していたものと違っていた。

グレースタイル

インパネ

 23式GRカローラと比較して、ボディの剛性感は間違いなく上がっているのですが、硬派な方向にいきすぎたようにも思います。23式でちょうどよいバランスを感じていたのに対し、25式後期では引き締まったことによって、ややリニアすぎるように感じました。ただ、これはあくまでも公道試乗での印象なので、トラックを舞台にするのであれば、また印象は異なることでしょう。

 アクティブサウンドコントロールは、一般公道でスポーツフィールを楽しむことにフォーカスした効果音だとすれば、いいものだと思います。BEVのヒョンデ・アイオニック5Nが示したように、“それっぽい音”が出ているだけで楽しいのは事実です。開発者が何のためにこれを作ったのかという意図がわかれば、素直に楽しいと思えることでしょう。

西村 ASCやアクティブノイズコントロール(以下、ANC)機能が付かない23式に乗っている私からすると、ASCの音はクリアで図太くいい音色ですが、やはり実際のエンジン音や排気音とは違うし、ドライバーの操作に対して微妙にずれていると感じられました。具体的にはエンジン音の発生位置と、ウーハーを含めたスピーカーから聞こえてくるASCからの音では、音質だけでなく、そもそも音像定位が異なるためリアルさに欠ける。実際、これだけの音がエンジンや排気系から発生していれば体感値として振動も増えるけれど、疑似音なのでそれはない。そうした事情もあって、違和感にならないようASCにはオン/オフのスイッチが用意されているのだろうと思います。ただこれはGRカローラに限らず、世の中にあるこうした疑似音システムの機能限界。その意味でASCは気分を高揚させるアイテムとしては魅力的ですが、私としてはANCだけ後付けしたい(こっそり質問したら後付けはほぼできないらしい……)。6速80㎞/h走行時の2000rpmから、100㎞/h走行の2500rpmにかけて盛大に耳へと届くセンターマフラー由来のコモリ音が非常に大きく、長時間ドライブでは疲れてしまうからです。

リア走り

山本 GRカローラについて、個人的には“オールマイティなクルマ”というイメージを持っていました。GRヤリスは“戦うためのクルマ”に対して、GRカローラは“サーキットも走れるグランドツーリングカー”というように。でも25式後期GRカローラは、想像以上に“本気のスポーツカー”に進化させたという印象を持ちました。

西村 23式がいちばんオールマイティだったのです。DATを設定した25式の前期型のほうがオールマイティだ、という人もいるでしょうが、GRカローラは25式前期型から“ヤリス・ドーピング”が始まっています。私からすると25式前期型は乗りづらい点が多々ありました。私もヤリスはスポーツカーを目指していて、カローラはGTカーを目指していると思っています。それぞれのクルマの生い立ちを見ても、この点は明らかだと思います。

 25式後期に試乗して思ったのですが、ある種の限界を感じました。というのは、内装材はカローラスポーツと同様です。あれだけ足回りやボディを固めてしまうと、いろいろな樹脂パーツがガタガタギシギシ鳴き始めるのです。その音は500万円台後半で販売するクルマのものではないと感じました。

“引き算の美学”を体現したGRピュアモデルに期待!

西村 今回、熟成されたGRカローラ(そしてGRヤリス)に試乗して思ったことがあります。実は本当にGRが手がけたいのは、次期セリカなのではないかと。

山本 噂になっている次期セリカの名前が出たので、話しておきたいテーマがあります。それは、GRブランドの中心点はどこなのか、いまのGRが考える理想のクルマづくりはどんなものだろうということです。

走り

 FRスポーツであるGR86とBRZの場合、スバルとの関係など諸々ある中で、それぞれが自由にクルマづくりをしています。でも、それがGRブランドの理想像を体現しているかというと、きっとそんなことはないでしょう。

 それではGRヤリスはどうなのか。GRブランドの実力を示したり、開発・進化のプロセスを発信したりという意味では、すごくいい題材にはなっています。でも誰もが幸せになれるクルマを作っているかというと、そこを目指しているものでもない。GRカローラの場合は、もともとの基本骨格に対する“プラスの話題”はあるものの、どこに向かって進化していくのか、その方向性がわからない。

 こういった点を考えていくと、実はGRヤリスのアンダーパワー仕様、“足し算”ではなくて“引き算”したモデルがあってもいいのではないかと思うのです。これまでの限界を高め、拡張していくクルマ作りから、そのよさをスポイルさせない範囲で引き算したGRヤリスを作ったとしたらどうなるか。きっと、すごくピュアでいいクルマが誕生するだろうという期待感が高まります。

 開発ドライバーでもある大嶋さんは「いまスーパー耐久でやっている取り組みが、自分たちがやりたいことのカタチ。スーパー耐久を通じて自分たちが目指していくところを探求している」と語っていました。噂の次期セリカがミッドシップで本当に出てくるのかどうかはわかりませんが、GRとして現在持っている技術でやり切りたいという強い思いはあるはずです。

山本01

西村01

西村 先ほどの引き算の美学でいえば、コンペティションモデルは、どのメーカーも軽量化を進めていきます。引き算して軽量化に向かうのは、スポーツカーの王道なのです。GRはWRCやS耐に参戦して、クルマを鍛えて市販車につなげました。これはこれで素晴らしい。その一方で、軽量バージョンを突き詰めていくアプローチも、GRがブランドとして成長し、多くの人に振り向いてもらえるようになるうえで、大切な意味があると思います。販売現場を含めて、ますますの研鑽を期待したいと思います。

進化プロセス

GRカローラ

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