【岡崎宏司カーズCARS/CD名車100選】これは、もう「かっとび」だ。新鮮な走りのFF1300ハイコンパクト・スポーツ「1984トヨタ・スターレット(EP-71型)」のヤンチャ世界

スターレットは現在のヤリスに相当するトヨタのエントリーモデル。1984年10月にデビューした3代目は、駆動方式をそれまでのFRからFFに刷新。エンジンや足回りを含め、すべてを新設計した意欲作。ニックネームは「かっとびスターレット」だった

スターレットは現在のヤリスに相当するトヨタのエントリーモデル。1984年10月にデビューした3代目は、駆動方式をそれまでのFRからFFに刷新。エンジンや足回りを含め、すべてを新設計した意欲作。ニックネームは「かっとびスターレット」だった

エンジンから駆動方式まで、すべてを一新

 今度のスターレットの中身は、文字どおり「オールニュー」だ。何から何まで新しくなっている。2E型と呼ばれるエンジンも新開発。吸気が2個、排気が1個の3バルブ式4気筒エンジンは、いかにも最新ユニットらしく軽量かつコンパクトである。Siリミテッドが積んでいる2E-ELU型は1295㏄の排気量から93ps/6200rpmのパワーを発生する。同じようにEFIを組み込んでいた旧スターレットの、4K-EU型と比較すると14psものパワーアップである。それだけの性能アップを果たしていて、重量は20㎏の軽量化。走りは鮮烈だ。

エンジン

 エンジンは6000rpmのレッドゾーンまで、なんのストレスもなくよく回る。バランスのとれた5速トランスミッションとの連携で、軽いボディをグングン引っ張っていく。キビキビと、まったく気分のいい走りっぷりである。このパワーと、0.35というCd値を考え合わせれば、トップスピードは170km/hを超えるだろう。アウトバーンに持ち込むと、VWポロクーペGTやオペル・コルサRSといった強力なライバルたちと好勝負ができるに違いない。Siリミテッドは山岳の登りのセクションでも速い。「チッポケなヤツ」とルックスで軽く侮ったりすると、ひどい目にあう。山岳ワインディングロードでもドライバーを十分にエキサイトさせ、楽しませてくれるのである。しかもパワフルなクルマなのに、低速性がいいのもうれしい。走りはほぼパーフェクトだ。

 さて、軽量なエンジンといえば騒音の心配をする人もいるだろう。だが、このエンジンに限って、そんな取り越し苦労はいらない。不快な騒音をよく抑え込んでいる。4200rpmあたりに騒音のピークがひとつあるものの、5速で140km/h付近のことだ。日本では完全に常用域から外れているので、問題にする必要はない。騒音の点ではロードノイズのほうが問題だ。これはかなりうるさい。

リア

 ニュー・スターレットの足は、もちろんそっくり新開発したものだ。フロントはL型のロアアームを持ったストラット式、リアがスタビライザーを内蔵したツイストビームとトレーリングアーム、パナールロッドの組み合わせである。スポーツ系(Siリミテッド、Si、Ri)にはハーダーサスを組み込んでいる。Siリミテッドにはそのうえ、ロクマルタイヤ(175/60R14)が標準だ。試乗車はBSのポテンザRE86を履いていた。ダイヤフラム式クラッチみたいな形状のアルミも標準だ。

 Siリミテッドのステアリングは、マニュアルのラック&ピニオンだ。ややフリクションの強さが目についたが、よく締まったシャープなステアリングだ。サスペンションもほどよくタイトにセッティングされている。タイヤが初期レスポンスのいいRE86とくれば、身のこなしはキビキビ、まったく軽快なものである。

 試乗日は不幸にも雨にたたられてしまった。限界的なコーナリングは、だからチェックできなかった。しかしステアリングを切ると、間髪を入れずにスッとノーズの向きを変えるシャープな動き、短いホイールベースとワイドなトレッドがもたらした、軽快さとしなやかさの適度なバランスは、見事である。タックインやブレーキングドリフトをきっかけにする鋭角的なコーナリングのしやすさ、くずれた姿勢の立て直しやすさなど、全体にいい印象を受けた。ドライな路面でテストしても、こういう基本面の好印象は、おそらく変わらないだろう。

室内

 ステアリングは、先に触れたようにフリクションが少し強かった。したがって、微妙な舵角を使う高速コーナーを飛ばす場合などは、コントロールがやりにくく、不安な気持ちが高まることになる。こういう高速コーナーのクセを除けばSiリミテッドのハンドリングは、とにかく楽しい。スポーツ派のキミたちは、きっと満足するはずだ。

 乗り心地は、Siリミテッドは当然だが固めだ。でも段差や突起などに出会ったときのショックはたいして強くはない。ガツンとくる直接的なショックや不快な音は、よく抑え込んである。固めだが快適な乗り心地、と評価ができる。以上が、素直に感じたままのレポートである。ニュー・スターレットはなかなか魅力がある、いいクルマだ。
※CD誌1984年11月26日号掲載

表紙

諸元

【プロフィール】
おかざき こうじ/モータージャーナリスト、1940年、東京都生まれ。日本大学芸術学部在学中から国内ラリーに参戦し、卒業後、雑誌編集者を経てフリーランスに。本誌では創刊時からメインライターとして活躍。その的確な評価とドライビングスキルには定評がある。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)名誉会員

 

 

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