【岡崎宏司カーズCARS/CD名車100選】日本初ザ・ミッドシップ! 「1984年トヨタMR2(AW11/10型)」の背中にはふたりを酔わせるハートがある

初代トヨタMR2は、日本初の2シーターMRスポーツとして1984年6月にデビュー。 「MR2」という車名は「ミッドシップ・ラナバウト・2シーター」の略だった。当初のパワーユニットは1.6リッターDOHC16V(4A-GELU型/130㎰)と1.5リッターOHC8V(3A-LU型/83㎰)の2種。1986年8月にスーパーチャージャー仕様を追加し、スポーツ性能に一段と磨きをかけた

初代トヨタMR2は、日本初の2シーターMRスポーツとして1984年6月にデビュー。 「MR2」という車名は「ミッドシップ・ラナバウト・2シーター」の略だった。当初のパワーユニットは1.6リッターDOHC16V(4A-GELU型/130㎰)と1.5リッターOHC8V(3A-LU型/83㎰)の2種。1986年8月にスーパーチャージャー仕様を追加し、スポーツ性能に一段と磨きをかけた

ホットな走りと快適な日常性能を巧みに融合

 日本初のミッドシップカー、MR2はこれまでのミッドシップカーとはちょっとイメージが違う。ミッドシップというと、すぐにフェラーリやランボルギーニのようなスーパーカーを思い出すだろう。しかしトヨタのMR2は、その固定観念から見れば、少々型破りだ。

 もちろん、走りのポテンシャルは抜群に高い。キミがハイテクニックの持ち主なら、MR2でワインディングロードを駆け抜けるアベレージスピードは、素晴らしく高いものになる。それだけではない。これまでのミッドシップカーにはなかった性格を発見して驚くだろう。それはMR2の「日常的な走りの中での穏やかさ、快適さ」である。世の中のミッドシップカーが全部、ホットで過激である必要はない。リラックスして、快適に楽しめるミッドシップカーがあってもいい。いや、多くの人が楽しめるクルマが、あるべきだと思う。MR2が、性能に少しマイナスでも快適性を重視したのは正解だったと感じている。

リア

 開発途上では、もっと鋭角的なルックス案もあったという。全高がずっと低くて、空気抵抗にも優れていたそうだが、結局、おとなしい印象のノッチバック案が通った。理由は高い快適性を選んだからだ。

 ハンドリングのセッティングでもそのポリシーを貫いている。誰がステアリングを握っても、緊張して体を硬くするような心配はいっさいない。よくいう「手首のひとひねりで、ノーズはスパッと向きを変える……」という鋭いハンドリングとは明らかに違う。トヨタは、これまで限られた一部のユーザーに向けたクルマだったミッドシップを解放した。より幅の広いユーザー層に愛されるクルマに仕上げたのだ。

インパネ

 試乗車はトップモデルの1600Gリミテッドである。エンジンは4A-GELU型だ。レビンやトレノが積んでいるものと基本的には同じツインカム16Vである。7700rpmのレッドゾーンまでスムーズに回り、敏感にレスポンスするあのエンジンである。加速は、もちろんいい。トヨタのデータでは0→400m加速を15.6秒で走り切る。1.6リッタークラスとしては文句なしだ。が、体感的には、それほどの速さと迫力は感じない。駆動輪の後輪荷重が大きいため、4A-GELUのパワーをしっかり受け止めてしまうからだ。レビン/トレノなら、後輪を激しく空転させ白煙と悲鳴を上げながら発進……といった、派手なシーンを簡単に演出できる。MR2だと、そうはいかない。相当に強引にしない限り、リアタイヤがぐっとパワーを受け止めてクルマをすんなり前に押し出してしまう。とはいえ、軽くリアを沈めた姿勢で、ガッチリとパワーを路面に伝えていくフィーリングは素晴らしい。

 トップスピードは、180km/hでリミッターが作動する。実力は190㎞/hを少し上回るあたりだろう。1.6リッター車としては、文句なしのハイレベルだ。しかし、超高速域での直進安定性には、いまひとつ物足りなさが残る。130〜140km/hあたりまではOKだが、それ以上になると、フロント側のリフトがやや気になりはじめる。日本の道路では、現状でも問題はない。しかしヨーロッパ向けのMR2は、もっと空力バランスを向上させる必要があるだろう。

走り

 ハンドリングは、キミたちがイメージし期待しているほどには鋭くない。ひと言で表現すれば、「誰にでも違和感も不安感もなく乗れる」設定である。MR2のステアリング特性は、基本的に強めのアンダーステアだ。これは意図的なセッティングである。

 中・高速コーナーでも、アンダーステア特性は出る。それでも低速コーナーのように扱いにくいものではない。それどころか、高い安心感を感じる。MR2のハンドリングは安定志向で限界でのコントロール性もいい。それにしても、テールの流れが恐怖を誘わずに楽しみの対象とした味付けは、素晴らしい。MR2の足のセッティングに、ボクは拍手を送る。

 MR2は走りやすく、高い安心感があり、高度なポテンシャルを発揮する。トヨタは毎日を楽しくするミッドシップカーを作り上げた。このクルマは多くの運転好きを魅了するに違いない。
※CD誌1984年7月26日号掲載

表紙

諸元

【プロフィール】
おかざき こうじ/モータージャーナリスト、1940年、東京都生まれ。日本大学芸術学部在学中から国内ラリーに参戦し、卒業後、雑誌編集者を経てフリーランスに。本誌では創刊時からメインライターとして活躍。その的確な評価とドライビングスキルには定評がある。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員

 

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