
キャデラック・リリック・スポーツ/価格:1100万円。リリックはキャデラック初のBEV。2モーターのeAWDシステムを採用し、最高出力384kW(522ps)を実現。WLTCモードの航続距離は510km。ハンドル位置は右
キャデラックはアメリカを代表する高級ブランドである。GMのトップレンジに位置し、GMが提唱する「事故ゼロ、排出ゼロ、混雑ゼロ」という「トリプルゼロ」のイメージリーダー的な役割を担っている。2025年に日本デビューしたリリックは、新時代のラグジュアリーと先端テクノロジーを積極投入。排出ゼロを実現したキャデラック初のBEVだ。
数多くの魅力のうち、スタイリングは特筆ポイント。エレガントにして先進的。明確な個性を主張する。4995×1985×1640mmの伸びやかなサイズと3085mmのロングホイールベースが織りなす造形は、はっとするほど美しい。キャデラックのアイコンである縦長のランプ類と相まって、独自の世界を主張する。
室内は先進イメージ。前後席とも広々としており、作りも入念。キャデラックならではのクラフトマンシップが息づいている。湾曲した33インチの大型モニターは、日本語表記とされているのが特徴。ガラス製大型パノラマルーフが装備され、開放感を満喫することもできる。
ドライブして印象的なのは静粛性だ。BEVは静粛性が美点だが、リリックはライバル以上に静かさにこだわっている。合わせガラスを採用したり、ドア開口部を3重シールで仕上げるなど、徹底して消音対策しているのだ。それだけではない。フロントサスペンションのストラットタワー上部には、足回りの作動音を検知し、それを打ち消す周波数をスピーカーから出す、新世代のノイズキャンセルシステムを採用。驚くほど静かな車内空間を実現した。
オーディオも素晴らしい。静かな空間を活かし豊かな音場を楽しめるようにと、19ものスピーカーを持つ名門AKG(オーストリア)との共同開発によるフルサラウンドサウンドシステムを導入した。AKGは、プロフェッショナルオーディオ機器のブランドとして有名である。
パフォーマンスは俊敏で力強い。最高出力522ps(384kW)、最大トルク610Nmを発生し、0→100km/h加速を5.5秒でクリアするというだけのことはある。バッテリーは95.7kWの容量、一充電で510kmの走行を可能としている。
ハンドリングもハイレベル。気持ちよく曲がれるコーナリング性能が光る。先進装備も意欲的だ。パドルを引くとブレーキを踏まなくても完全停止できる先進機能が与えられている。実際に使うと、足を踏み換えてペダルを踏むよりずっとラク。車速に合わせて適宜減速し穏やかに止まる。とても重宝する。
先進運転支援装備も充実。シート座面を振動させて危険の迫る方向をドライバーに知らせる機能を採用している。キャデラックならではのこのアイデアは実用的だ。
ちょっぴり残念なのは、印象的なフロントやリアクオーターの光の演出が、日本では未装備な点。日本の車両規制に抵触するらしい。いずれ何らかの形で光るようにしてほしいものだ。
リリックは、キャデラックらしいエレガンスさと未来を先取りしたBEVである。車両価格は1100万円。絶対的には高価だが、内容を知るとリーズナブルに思えてくる。魅力的な1台である。
リリックの納車時期は、希望の購入条件に合致するモデルが国内に在庫していれば、即納状態も可能である。オプションはクリスタルホワイト・トライコートのボディカラー(20万円)とフルレザーシート(65万円)だ。オプションのために納車待ちが長期化しないように配慮されたモデル設定になっている。ユーザーは40〜50代が中心。アメリカンラグジュアリー・ブランドの頂点に立つモデルにしては若いユーザーが多いようだ。リリックが評価されているポイントは、「唯一無二のデザイン」と「キャデラックらしさ」に集約されるという。
