2026年7月号の特集を機にSUVについてあらためて語ると、その起源について忘れている人が多い。もはやデフォルトとなるこのジャンルのクルマを始祖から振り返る機会は少ないが、いま一度そこに触れるのは悪くない気がする。これだけ多様化すると、原点回帰は意味が出てくるからだ。いうなれば“ネオSUV”的な視点が持てる。そうすれば、ますますSUVの進化を楽しめるようになるだろう。
それでは、“SUV”とはいつどこで生まれたのか。
これまでたくさんの文献を読んできた経験から鑑みるに、スタートは1969年のシボレーブレイザーと思われる。ピックアップトラックのシボレーC10/K10をベースに仕上げたクルマだ。
具体的にはフロントベンチシート後方、つまりベッド部分にセカンドシートを置き、ベッド全体をFRP製のキャノピーで覆ったクルマだった。ピックアップトラックより人がたくさん乗せられ、荷物を外的要因から守ることができるようにしたのだ。外的要因とは雨風や盗難など。農場で藁を積むピックアップとは明らかに違う使い方を想定していた。
そしてそれをメーカーはSUVと呼んだ。“スポーツ・ユーティリティ・ビークル”の略である。そもそもUV(ユーティリティ・ビークル)はピックアップトラックやカーゴバンを指すワードだ。日本語なら“貨物”ってところ。そこにスポーツギアを意味する“S”を付けてSUVが生まれた。“S”は「スポーティな走り」とか「運動性能の高さ」を表すものではなく、スポーツギアを積んで週末に家族で旅行するためのクルマをイメージしていた。
ではなぜそんな言葉を作ったのかだが、それにはメーカーらしい思惑がある。安く作れるピックアップトラックに簡単な架装を施して仕事で使う人以外に売ろうとしたのだ。
つまり、新たなマーケットの創生だった。20世紀初頭、富裕層に一巡したクルマをオートメーション化で安価で作り、大衆にターゲットを広げたのと同じロジックである。
ちなみに、フォードはシボレーを追うように1978年に小さかった初代ブロンコをフルサイズのFシリーズピックアップトラックベースで作り替えた。そして1981年、ダッジがラムでそれに追従する。ベースはDシリーズだ。
それじゃ当時のGクラスやレンジローバー、ランクル系やパジェロはSUVじゃないのかといえば、当時はそうではなかった。これらはクロカンとかオフローダー、RVとしてカテゴライズされた。なぜならこれらはすべて4WD。それに対しアメリカ発祥のSUVは2WDもあったし、4WDは生活四駆でありクロカンほどの走破性能は要求されていなかった。
そんな中、北米でSUVが浸透し、ブームが巻き起こると世界中の自動車メーカーがそこを目指した。1997年リリースのレクサスRX(日本名ハリアー)やメルセデス・ベンツMクラス、1999年のBMW X5、それと2002年のVWトゥアレグ、ポルシェ・カイエン、ボルボXC90などだ。いまやランボルギーニやベントレーまでそれをラインアップする。
進化の場面ではBMW・X6が新境地を作った。SUVクーペである。そして昨今のGクラスを筆頭とするクロカンブームの再燃。SUVは多様化して細分化された。では、この後はどうなるのか。特集でクローズアップした最新SUVの中にそのヒントが隠れている気がする。
