【九島辰也のカーガイ探訪記】xEVの時代を迎え、パワーソースは選び放題。この状況を楽しんだもの勝ちである!

 最近、最も話題になったクルマといえば、フェラーリ・ルーチェに他ならない。中身はともかく、そのスタイリングに賛否両論の声が上がった。きっと多くの人がPHEVのSF90ストラダーレ、もしくはその後継となる849テスタロッサのようなスタイリングを思い描いたに違いない。シュッとしたフェラーリらしいフォルムのクルマだ。

 ところが現実は違った。アンベールされたのは4ドア/5シーターのセダンタイプ。しかもこれまでのフェラーリとは一線を画す仕上がりだった。となればネガティブ発言が噴出しても不思議ではない。素直に「こんなのフェラーリじゃない」と声に出してしまうフェラーリ・ファンは少なくない。

 それでは2シーターのフェラーリ然としたBEVを作れば販売を含めすべてが丸く収まるのかといえばそうとも限らない。2024年にアウトモビリ・ピニンファリーナが純スポーツカースタイルのBEV、バティスタチンクアンタチンクエとオープントップモデルのB95を発表しているが、ともに大きな話題にはならなかった。しかも販売も振るわなかったという事実がある。3億円後半というプライスも関係しただろうが、それと同時に「これがエンジン車なら即買いした」という富裕層の声が多かったと耳にする。マーケットが欲しているのはそういうことなのだ。

 となると、まったく異なるアプローチをしたルーチェのほうがフェラーリらしいかもしれない。予定調和を嫌い、つねにマーケットを驚かすのが彼ら流だ。まだ誰も手をつけていないシリコンバレーのデザイン集団、LoveFromとのコラボがそれを象徴する。

 それにしてもフェラーリはこのパワーソース乱立の時代によく頑張っていると思う。BEVやV8、そしてV6のPHEVとともにV12のNAやV8ターボをラインアップするからだ。会社の規模からは想像できない数である。

 これに対し同じモーターヴァレーのランボルギーニはというと、V12+モーターと2種のV8ターボ+モーターといったPHEVしかない。ラインアップもパワーソースも絞られている。この違いは両者の立ち位置にある。独立したメーカーとグループ内のいちブランドでは考え方が変わってくる。

 具体的にいえば、ランボルギーニは同グループにポルシェがいる。そう、そこには今年リリースされたカイエン・エレクトリックが存在するのだ。つまり、パワーソースの共有化でバリエーションは増やせられる。マーケットニーズが絞り込まれ、世の中のトレンドが決まれば、それに応じた措置が取れるといった感じだ。ベントレーにも同じことがいえる。同じVWグループ内からパワーソースを借りてきて、自分たち流に味付けすれば出来上がりとなる。

 それにしても今回あらためてxEVを考えてみると、その多様性はさらに広がりを増している。全固体電池の登場やFCVの進化、eフューエルもそうだ。内燃機関をそのままに燃料を変えていくという視点は、個人的に期待してしまう。長年つきあっているだけに、自動車メーカーに一日の長があってほしい。

 以上を鑑みると、何かが淘汰され何かに集約されることはまだ起きそうもない。ならばわれわれはこの乱立するパワーソースを楽しむだけ。いったんBEVに乗って内燃機関に戻ってくるのもあり。この状況を楽しんだもの勝ちである。

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