芭蕉の言葉に“不易流行”という理念があります。永遠に変わらない普遍性と、たえず変化する流行性、その根元はひとつであるという考え方です。自然の営みも男女の関係も、芸術も、昔から基本的に何も変わらない。これはクルマやバイクにも通じると感じます。今回は、イラストレーターの佐藤ヒロシさんが、昔から好きな古いクルマやバイクの魅力をさまざまな視点から語ります。
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Stage❶ 懐古趣味や年齢のせいではなく、昔から古いクルマやバイクが好きで、ボク自身1993年型ホンダCB1000SF、初代Big-1を所有しています。そんなクルマやバイクを描くのは楽しいです。 作品①は『カワサキAR 80(改)』1981年型です。小説の挿し絵として描きました。 タンデムステップを外し、あえてAR50のシートにした強烈な走り屋仕様です。現在は生産中止の2ストロークのオートバイですが、その後ろを走ると、排気煙に混じったオイルでヘルメットやライディングジャケットがよく汚れました。作品では、2ストロークチャンバーの排気煙を表現しました。
Stage❷ 作品②は『カワサキZ750FX(改)』1979年型です。これも小説の挿し絵です。 よく知られている“漢KAWASAKI”角ゼットは、直線デザインがカッコいいです。このバイクは昔からほしかったけれど、いまではプレミアがついて高額です。中古車相場を見ると最高値680万円とか。驚きです!
Stage❸ 作品③は『メルセデスベンツ450SEL 6.9』1975年型です。自動車雑誌でエッセイの挿し絵として発表しました。 Sクラス(W116型)の最上級モデルで、その性能は、当時のリアルスポーツカーに匹敵するものだったと記憶しています。 古きよきスーパーSクラスは、リアルに描くことよりもあえてイメージ重視で描きました。
Stage❹ 古いクルマやオートバイ、いわゆる旧車は、資料探しが大変です。ネットを駆使しても情報がないか、見つかっても不正確だったり。そのため、中古車販売店やその車種に特化したクラブで写真撮影をした取材経験もありました。 とくに、旧車クラブのメンバーのクルマに対する思い入れ、情熱は凄まじいと思えました。ガレージに入れてコレクションしている場合と、普段使いでガンガン走らせている場合があるようで、ボクは後者に好感が持てます。やはり、クルマやバイクは、走らせてこそ本来の魅力が発揮されます。 古いクルマは初年度登録から13年、18年の壁があり、税金が増額されていくのは残念です。環境負荷低減、省エネ推進、安全性の確保などの理由があげられますが、古いものを大切に使うのは日本人の美徳だと思います。かつて、『カー・アンド・ドライバー』に寄稿していたモリタクさん(故・森永卓郎氏)も別のメディアでおっしゃっていました。
Stage❺ EVなどによるクルマの進化は時代の流れだとしても、大切にメンテナンスしている古いクルマも優遇してほしいところです。欧米では、車齢20〜30年以上で税金が免除・減額されるなどの優遇措置があるとか。
Stage❻ クルマやバイクを描こうとするとなぜか古いものに絵心が向いてしまいます。人の心というかデザインというか、温かみがあり有機的で優しいなと思っています。現代のクルマやバイクより魅力的に感じます。 ボクはアナログ派か?と聞かれれば、作品はデジタルで描いています。仕事でAIは使いますが、アナログとあまり変わりません。
インタビュアー/山内トモコ
さとうひろし/1961年、宮城県仙台市出身。自動車メカニックから転身し、野口佐武郎氏が主宰す るスタジオ・オブ・イラストレーターズに参加。テクニカルイラストレーション事務所、デザイン会社イラスト部を経てフリーランスに。クルマから人物まで幅広く描く。AAF オートモビル・アート連盟会員。神奈川県茅ヶ崎市在住
やまうちともこ/TOKYO-FMパーソナリティを20年以上つとめ、インタビューした人1000名以上。映画評論家・品田雄吉門下生。ライター&エディター
