【いまこそディーゼル!/CDワイガヤ会議】ディーゼルは進化を実感する「未来に続くエンジン」である!

ディーゼルエンジンの魅力は膨張比が大きく低回転で大きなトルクを生み出すこと。つまり燃焼効率に優れ、燃費がいいエンジンの代表。かつては遅く、うるさく、排気ガスが汚いという欠点があったが、いまや最新技術でウイークポイントをすべて一掃。低燃費はそのままに。パワフルで速く、静粛でクリーンなエンジンに変身した。マツダCX-60が搭載する3.3リッター直6ディーゼルは新世代の代表

ディーゼルエンジンの魅力は膨張比が大きく低回転で大きなトルクを生み出すこと。つまり燃焼効率に優れ、燃費がいいエンジンの代表。かつては遅く、うるさく、排気ガスが汚いという欠点があったが、いまや最新技術でウイークポイントをすべて一掃。低燃費はそのままに。パワフルで速く、静粛でクリーンなエンジンに変身した。マツダCX-60が搭載する3.3リッター直6ディーゼルは新世代の代表

電動化の時代だからこそ、ディーゼルに注目しよう

カー・アンド・ドライバー統括編集長

山本善隆/カー・アンド・ドライバー統括編集長

 山本善隆(本誌、以下山本) さて、この場では今号の特集テーマ「いまこそディーゼル」についてお話していきたいと思います。いま、世界では電動化に向けた動きの変化もあり、電動車の中でもとくにバッテリーEVの普及が伸び悩んでいます。その一方で、ここ10年で日本におけるディーゼルエンジン搭載車の販売台数は大きく伸長しました。最新のディーゼルエンジンは、燃費はいいしトルクフルでパワーもある。しかも大きな課題だった静粛性も、いまや高水準に改善・進化しています。そこで、このディーゼルエンジンについてあらためて知るべく、みなさんとワイガヤと語り合いたいと思います。

岡本幸一郎/モータージャーナリスト

岡本幸一郎/モータージャーナリスト

岡本幸一郎さん(以下岡本) ディーゼルエンジンは一時、消滅してしまうのではないかと危惧した時期が何度かありました。しかし、BMW、メルセデス・ベンツ、アウディなどの欧州勢は、ディーゼルの開発を継続しています。確かに最新のディーゼルエンジン搭載車は素晴らしい出来だと思います。

九島辰也/モータージャーナリスト

九島辰也/モータージャーナリスト

九島辰也さん(以下九島) いま岡本さんが挙げた欧州メーカーは、日本市場にはディーゼルエンジンでビジネスができる可能性があると考えているのではないかと思う。実際、欧州ではディーゼルエンジンの販売が減少しているが、最新のユニットは5年前のエンジンと比べると別ものと思えるほどよくなっているので商品性はとても高い。

横田宏近/カー・アンド・ドライバー編集委員

横田宏近/カー・アンド・ドライバー編集委員

横田宏近(本誌、以下横田) 特集のために国内で販売されているディーゼルモデルを数えてみると、全部で66モデルありました。国内メーカーが11モデル。その他は海外ブランドで、ドイツと英国が多くを占めています。ちなみにMインチIクロスオーバーのディーゼル仕様は日本専用です。海外メーカーは日本市場で、ディーゼルが求められていると判断している一例でしょう。

クリーンディーゼルは2006年に日本に登場

山本 かつて嫌がられる存在というイメージだったディーゼルエンジン搭載の乗用車ですが、最近では当たり前の存在になったと思います。この急進のきっかけはなんだったのでしょうか。

横田 それはきっと2006年にメルセデス・ベンツが「クリーンディーゼル」を搭載したE320CDIを発売したのが最初だと思います。平成17年(2005年)に新長期規制が導入され、排出ガスの規制が強化されました。この規制値をクリアした最初のディーゼル車がE320CDIです。ちなみに、クリーンディーゼルと、わざわざ「クリーン」とつけられていたのは、石原慎太郎都知事時代の「ディーゼル車NO」作戦(1999年)を知っておく必要があるでしょう。

E320

岡本 その後に三菱のパジェロやデリカが新長期規制に対応したディーゼルをラインアップしています。

九島 トヨタもランクル用にクリーンディーゼルを新開発した。

横田 このころからE320CDIに続いて、BMWも3シリーズにクリーンディーゼルを搭載するなど、ドイツ勢が目立っていきました。

九島 メルセデスは最初V6ディーゼルだったけれど、途中から直6に変更して技術的な進歩を続けているね。

スカイアクティブ

横田 V6時代のメルセデスのディーゼルは確かにパワフルでした。でも 最新の直6ディーゼルに乗ると、緻密なサウンドを響かせながら、パワーとトルクが伸び上がっていくようで、素直に感動します。これはマツダのSKYACTIV-Dにも同様のことがいえると思います。

岡本 SKYACTIV-Dという名でマツダが2012年に直列4気筒ディーゼルターボエンジンを世に出したことで、一般ユーザーにディーゼルエンジン普及の立役者となったのは間違いないと思います。また、最新のラージ商品群には新開発の直6ユニットが搭載されています。

山本 なるほど、ここ20年ほどでディーゼル車が躍進してきた流れがよくわかりました。ちなみに、クリーンディーゼル登場以前、そもそも日本におけるディーゼル車がいつどのように普及していったのか、そしてどのように捉えられていたのかをあらためて知っておきたいです。ディーゼルに対する認識形成の経緯を探るためにも振り返っておく必要があると思っています。

九島 日本でディーゼル乗用車が普及しはじめたのは初代パジェロくらいだったかな。1980年代半ばごろ。

横田 1975年にメルセデス・ベンツは300D(W115型)というディーゼルモデルを発表しています。3リッターの直列5気筒エンジンでした。1977年にはVWゴルフのディーゼルが日本でも発売され、「新時代の賢い選択」というイメージを打ち出しました。1970年代のガソリンエンジンは排出ガス対策に追われている時代でしたが、ディーゼルに対する規制が緩かった関係もあり、ディーゼルが乗用車にも搭載が進んだ経緯があります。それ以前は、振動と騒音がひどくて一般ユーザーが乗用車として使うには難しい面がありました。

九島 300Dのディーゼルは、イグニッションキーだけでエンジンの始動と停止ができる点が画期的でした。余熱のグローランプなんて話をしても、もうわかる人が少ない(笑)。ボクは学生時代に2㌧トラックで配送のアルバイトをやっていたので、古いディーゼル車についてもちょっと知っている。けど、とにかく軽油は価格がいまよりもずっと安かったから、燃料代がとにかく安く済んだのがよかった。

パジェロ

ハイラックスサーフ

岡本 1980年代後半から1990年代初めごろにクロカン・ブームがあって、ディーゼルエンジンを搭載した4WDが街中を走るケースが増えました。すると、ディーゼル車が排出する黒煙やその臭い、煤などが問題になっていったのです。

九島 それが冒頭の話にあった石原都知事の「ディーゼル車NO」作戦の話につながっていく。ディーゼル乗用車に乗らない・買わない・売らないという運動になり、それが首都圏全体に波及し、実質的にディーゼル車に乗れなくなった。それまで販売されていたディーゼルに対し、新しい排出ガス規制の新長期規制に対応したディーゼルを、「クリーンディーゼル」と呼ぶようになった。

岡本 欧州では2005年にEuro4の排出ガス規制が始まり、2008年のEuro5、2014年のEuro6とどんどん厳格化されました。この規制に対応するために、コモンレール式噴射システムやDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)、NOx吸蔵還元触媒などが普及し、ディーゼル車の販売拡大を後押ししていました。

横田 欧州ではディーゼル乗用車の新車販売台数が、過半数を占めているときもありました。2010年代前半の話です。

2015年、ディーゼルゲート騒動でブームが失速

山本 そこまで人気があったディーゼル車ですが、2025年のEUでの新車販売シェアは9%を切っています。電動化の流れもあったかと思いますが、ディーゼル車がシュリンクした原因は何でしょうか。

メルセデス

九島 その一つは2015年に米国で発覚したディーゼルゲート問題だよね。VWが排出ガスの試験のときだけ、窒素酸化物(NOx)の排出量が少なくなるような不正ソフトを使用していた。当時、欧州でも大きなニュースとして、連日報道されていたのが印象的。

岡本 この事件があったとき、VWは当のディーゼル車を日本では販売していなかったので、日本のユーザーにはあまりピンとこないかもしれないですね。実際、そこまで騒がれていなかったと思います。

横田 VWグループ以外のメーカーにも制裁金が科せられたり、疑惑が広がっていきました。その後、欧州勢はディーゼルから一気にバッテリーEVに舵を切ったという流れの背景にもなりました。

アウディ ルマン

マツダ レース

山本 なるほど。ところで、アウディは2006年からル・マンを5.5リッターのV12ディーゼルエンジンを搭載したマシンで3連覇していました。そして2010年には5.5リッターのV10ディーゼルで再びル・マン優勝。そのころプジョーもル・マンをディーゼルで戦っていました。マツダも2013年から米国IMSAシリーズに2.2リッターのSKYACTIV-Dエンジンで参戦していたと聞きます。当時は「ディーゼルなのに…」とかいわれていまsいたが、アウディを筆頭にその有益性や存在感を高めるため、モータースポーツ活動も積極的にやっていた印象があります。

岡本 モータースポーツ関連で少し補足すると、ディーゼルは高回転域を使わないので、補機類への負担が少ないなど開発面でみても好都合な点が多かったと聞きました。

山本 あらためて見返してみると、ここ20年ほどでディーゼルエンジンが急激に進化してきたことは間違いないですね。では、ここでみなさんが最近乗ったディーゼルで印象に残っているモデルを挙げていただけますか。ちなみに私は現行BMW・X1がデビューしたときにその仕上がりに驚きました。エンジン自体は愛車420dと同じなのですが、マイルドハイブリッドと組み合わせられたことで、不満に感じていた点が解消されていたのです。

岡本 最新のBMW・X1は確かに素晴らしいですね。X1や2シリーズ・グランクーペなどがマイルドハイブリッドと組み合わせて搭載されています。これらのモデルのディーゼル仕様は、車内にいるとガソリン車よりも静かに思えるほど。モーターがアシストしてくれるので、発進時のもたつきが気にならない。

X1

山本 まさにそこなんです。特有のレスポンスの遅延を、マイルドハイブリッド機構が上手くカバーしてくれているのがとてもいい。

九島 しかもBMWはオーバーブーストボタンを用意して、ドライバーを楽しませる工夫をしている。それまでのディーゼルエンジンに欠けていたものをいろいろと補って現在のユニットになっているので、音の面でもレスポンスの面でもよくなっている。

横田 アウディのディーゼルモデルも良かったです。ディーゼルはどのモデルも長距離が快適ですが、クワトロとディーゼルの組み合わせは理想的な高速ロングツアラーだと思います。低い回転のままで力が出ているから、長く運転していても疲れにくいのでしょう。

トライトン

岡本 私は三菱トライトンを挙げたいと思います。パワーの出方もいいですし、レスポンスもいい。ディーゼルエンジンの性能は、過給器の特性に大きく左右されると思います。トライトンのターボはかなり凝っている。ドイツ勢のディーゼルは、ほしいと思ったトルクをそのとおりに発揮してくれる魅力があるのが魅力ですね。

九島 わかりやすくいえば、ずっと「ガラガラ」いっていたディーゼルが、いまや「シューン」とすごい速さで走っていく感じだよね。

山本 ひょっとすると、ガソリンエンジンに比べてディーゼルエンジンの進化幅はとても大きいのではないでしょうか。かつてのディーゼルを知っている方が、最新のディーゼル車に乗ってみたら、その技術的な進化に対して、きっと感動するのではないかと思います。

九島 うるさかったガラガラ音はアイドリングストップで解消して、パワー不足はターボで補って、ターボラグのもたつきはマイルドハイブリッドで対応した。これらはすべてアイデアと技術の勝利だね。

岡本 ここまで完成度が高いディーゼルが、今後は本当に消えていってしまうのかな。あまりにも惜しいですよね。もうエンジンは新規開発しないと宣言しているメーカーもありますが、改良を続けていけばどんどんよくなっていく。ディーゼルのともし火を消さないでほしいと思います。

九島 エンジンの開発を続けるかどうかは、メーカーの生い立ちに関係しているよね。「エンジン屋」の自負があるのかどうか。エンジンは他社から購入すればいいと考えるメーカーなのかどうか。

マツダ3

山本 いまディーゼル車を選ぶうえで気にすべきことはありますか。

九島 ガソリン車と比べて車両価格が高いことかな。その価格差を自らの要望に照らし合わせてどう判断するかが大事だと思う。

横田 とはいえ、ハイブリッドと比べると、価格差は小さいです。とくに、マツダはずいぶん戦略的な価格にしていると思います。CX-60の3.3リッターディーゼルは装備内容を見ると、かなりお買い得。デビューから時間がだいぶ経ちましたが、マツダ3のXDドライブセレクションも頑張っていると思います。

山本 マツダ車はずっとそういう価格設定でしたね。だから、日本でもディーゼルが身近になったのでしょう。

九島 マツダ3はデザインが素晴らしくて、後継モデルが開発できないらしい。あのデザインは、いじると劣化してしまうから。これはディーゼルエンジンとは関係ないか。(笑)

山本 最後に、みなさんが欲しいと思うディーゼル車を挙げていただけますか。私はアウディA5アバントTDIモデルが気になります。

アウディ

CX-60

岡本 マツダCX-60。吹き上がりのシャープさとトルク感がいい。スポーツカーのような感触があって、改良も進んでいます。

九島 ランドローバー・ディフェンダーのロングホイールベース仕様の130はいいね。印象深いのはトヨタのランドクルーザー300と70、そして三菱トライトン。でも、買うならランクル300かな。

ディフェンダー

ランクル

シトロエン

横田 ステランティスのディーゼルもいいですよ。フィアット・ドブロやプジョー・リフター、シトロエン・ベルランゴが積んでいる1.5リッターの4気筒エンジン。フィーリングはディーゼルらしい回転感ですが、低回転域からトルクフル。あまり上までは回らないのですが(笑)。あれはマルチパーパスビークル用のエンジンとして、メーカーが意図したチューニングなのだと思います。

九島 あの3兄弟はいい印象しかない。いずれにせよ、最新のディーゼル車はどれもよくなってるから実際に乗ってみてほしいよね。

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