激戦区の軽スーパーハイトワゴン市場において、三菱デリカミニは独自の異彩を放っている。名門「デリカ」の伝統を色濃く感じさせるタフな外観と愛嬌たっぷりのキャラクターを、高次元で融合させた唯一無二のクルマである。異例ともいえる大ヒットを記録し続けるその圧倒的な魅力と隠された実力を、竹岡圭が深く解き明かす。
「デリカミニ」と「デリ丸。」の相乗効果は間違いなくあったとは思いますが、初代デリカミニ旋風はスゴかったですよね。カテゴリーを超えて指名買いされる1台だったと思います。
だからこそ「もうフルモデルチェンジ?」という気持ちがあったのも確かですが、あえてイメージを変えずに進化させた今回のやり方は大成功。「ヒット作の後のモデルは非常に難しい」と、どんな業界でも言われますが、とても上手く進化させたな!というのが個人的な正直な感想です。クルマ全体として、より愛着が湧くようになりましたからね。
デザイン的には、間違い探し?なんて揶揄されたりもしますが、並べてみると明らかに違います。やはり新型の方がタフさと可愛さが増している印象。横から見るとわかりやすいのですが、Aピラーが前に出され、角度が立てられたことによる存在感でタフさを、ライト=目の絶妙なカタチの変化で可愛さが生み出されているのでしょうね。
可愛さと言えば、ウェルカムアニメーションがこれまたカワイイ。デリ丸。がキョロキョロと迎えてくれて、愛車=ペット感が高まるようになりました。逆に上を見上げれば、AピラーとAピラーをつなぐ天井が、デリカD:5の恐竜の肋骨とも称されるリブボーンフレームを彷彿とさせてくれて、頼もしさと力強さが増しているのを感じます。実際に室内長も+115㎜広くなりましたからね。このタフさと可愛さという相反するデザインを、本当に上手くミックスさせているバランスが実にお見事なんです。
そして、何といっても運動性能の高さもさらに進化。初代も「デリカの名前を冠するならば、中途半端なものは出せない」ということで開発陣が譲らずに、発売2か月前まで足回りのチューニングをしていたと聞いていましたが、今回はなんと軽自動車初ダイヤル式のドライブモードセレクターを搭載してきました。アウトランダーPHEVに代表されるドライブモード、今では本家のデリカD:5にもマイナーチェンジで搭載されましたが、実はタイミング的にはデリカミニの方が先だったんですよね(笑)。
エンジン制御やASCの制御を巧みに組み合わせ、パワー、エコ、ノーマルという出力系のネーミングがつけられたものが3種類と、グラベル、スノーといった路面に合わせたものが2種類となりますが、この「グラベル」=未舗装路というモードを作るところが、実に三菱らしい。
これに加えて、悪路で空転してしまっているタイヤをブレーキで制御し、グリップしている駆動輪の駆動力を確保して抜け出すことができるグリップコントロールや、軽スーパーハイトワゴン唯一のヒルディセントコントロールも装備。ちなみにグリップコントロールは、ドロドロの悪路に行く機会がなくても、たとえば駐車場の前の雪の吹き溜まりを越えれば、幹線道路は除雪が行き届いているなんていう時に、この出だしの吹き溜まりを乗り越えさせてくれるなんていう芸当もやってのけます。一般的なクルマだと、吹き溜まりに差し掛かった時点で、エンジンの出力低減制御が入り、乗り越えることはできませんからね。
またヒルディセントコントロールも軽自動車の主戦場である、街中の急坂などでも使えるようになっているので、冬の朝の住宅街の凍結坂なども安心して使うことができます。
こういった本格的な悪路走破機能を、日常でも使える性能にもしっかりと盛り込んできたところが、デリカの名を冠するとか、オフロードにも強い三菱らしさ、ということになるのでしょう。格別の安心感になりますからね。
クルマ全体のフィーリングとしても、より誰もが乗りやすくなったように感じられました。初代はクルマの動き方が、どちらかというとオフローダーっぽい乗り味に仕上げられていました。それはそれで味わいがあってよかったのですが、これまでそういったクルマに乗ったことのない人からすると、ちょっと違和感があったようで、2代目は動き方をいわゆる普通のスーパーハイトワゴン方向にシフトしたという感じ。全体的に収まりがよくなったように感じられました。
ユニークなのは、カメラを使った「フロントアンダーフロアビュー」でしょうか。いわゆるクルマの下側が透けて画面に映し出されるモードで、もちろん真下にカメラが仕込まれていて映し出されているわけではなく、クルマを真上から見た映像を映し出すアラウンドビューモニターのように、合成して作られた映像ではあるのですが、木の根っこなどが張り出したキャンプ場などで、意外なほど大活躍してくれるのはもちろん、セルフ洗車場にクルマを入れる時や、前方が見えないほどの急坂を上るときなども、安心感抜群なんですよね。
悪路や悪天候に強い機能で、日常生活の安心感もサポートする、カワイイけれど中身は本物というところがデリカミニのヒットの真相なのだと思います。
たけおかけい/各種メディアやリアルイベントで、多方面からクルマとカーライフにアプローチ。その一方で官公庁や道路会社等の委員なども務める。レースやラリーにもドライバーとして長年参戦。日本自動車ジャーナリスト協会・副会長。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
