竹岡圭 K&コンパクトカー【ヒットの真相】ホンダN-ONE RS「手軽に乗れる本格スポーツ」(2026年8月号)

2025年11月のマイナーチェンジで、待望の6MT専用グレードへと進化したホンダ「N-ONE RS」。専用のウルトラスエードシートや、ホワイトのアルミホイールなど、スポーツモデルとしての本気度を一層高めている。日常の乗り心地と走りの楽しさを高次元で両立して支持される理由とは。竹岡圭がそのヒットの真相を読み解く。

 軽自動車のスポーツモデルというと、1980~90年代はスズキ・アルトワークス、ダイハツ・ミラTR-XXアバンツァートといった軽ホットハッチから、マツダ・AZ-1、ホンダ・ビート、スズキ・カプチーノ(頭文字を取って「軽スポーツカーのABC」)というような2シーターモデルなど、たくさんのヤンチャなモデルがあったんですよね。

 でも、しばらくこういった面白い軽スポーツカーがなかったのは寂しい限り。2015年に約15年ぶりにアルトワークスが復活し、その後を追いかけるように2017年にホンダN-ONE RSが登場。ところがアルトワークスはまた姿を消してしまいます。

 N-ONE RSを讃えたいのは、初代のマイナーチェンジで追加された後、2世代目へのフルモデルチェンジでは、CVTに加えて6MTまで登場させたこと。いまの時代、スポーツモデルをやめずに増やすというのは大変な決断ですからね。さらには「N-ONEオーナーズカップ」というワンメイクレースが、2014年から開催され続けているというのもスゴイことだと思います。

 そして昨年冬にマイナーチェンジされたRSが、今回のお題なわけですが、なんと6MT専用グレードとなりました。やはり、走り志向のユーザーが多かったということなのでしょうね。スポーツモデルに完全に振り切るかのように、インパネガーニッシュをカーボン調に変更。フロントシートには、滑りにくく体をしっかりホールドしてくれるウルトラスエードが採用され、ホンダレーシングの雰囲気たっぷりのレッドステッチと、RSの刺繍ロゴが施されました。

 加えて、15㌅のアルミホイールはホワイトカラーとなり、7㌅チTFT液晶メーターはタコメーター/シフトインジケーター/Gメーターも表示される専用仕様なるなどスポーティな雰囲気が満点です。

 ではN-ONE RSは雰囲気だけのクルマなのかというと、確かにカタログから読み取れるのは、他グレード比でフロントロアガーニッシュと大型テールゲートスポイラーが装着されていること。ヒーテッドドアミラーレスなこと。電装系の機能がいくつかカットされていること。それにもかかわらず車両重量が20㎏軽いくらいに留まっていますから、雰囲気だけという指摘もわからなくはないです。でも、乗るとまったくの別物なんです!

 重量が違う点で、足回りのセッティングは若干変えられているのですが、これがまたすごくイイんですよ。N-ONE RSの性格上、日常は街乗りで普通に使うという方が多いと思いますが、そこを踏まえての乗り心地のよさが、少々ヤンチャに走ったときにも絶妙にハマっているんです。たとえばうねり路や凸凹路などでも、しっかりとサスペンションが動いてタイヤが路面を捉え、フィーリングがドライバーにしっかり伝わってくるんですよね。

 そして振動の収まりが早い。軽自動車はディメンション上、どうしても足回りのストロークが長めに取れないのですが、そこを上手にセッティングしたなぁと、感心しちゃうレベルです。

 エンジンの最高出力、最大トルクはプレミアムツアラーと同じですが、そもそもN-ONEのターボエンジンは、最大トルク104Nmが2600rpmで発揮されるセッティング。低回転域からトルクフルで、街乗りにもスポーツドライビングにももってこいなんですよね。

 とくにN-ONE RSは6MTですから、街乗りでのシフトチェンジがせわしなくなくなるため「MTって毎日は面倒かも……」という不安を消し去ってくれます。さらに、ホンダのオープン2シーター軽スポーツカーだったS660譲りのクロースレシオのトランスミショッンが採用されているため、スポーツドライビング時には、余計なシフトチェンジをしたくなるほど楽しめること請け合いです。

 いわゆるインパネシフトとなる6MTシフトの位置が素晴らしく、小柄なのでシートリフターで座面を高めに設定している私にはうれしい限りなのです。小柄な人が視界確保のためのドライビングポジションを取ると「座面位置高い+手が短い=フロアシフトは遠い」となり、シフトチェンジするたびに左側に体を傾ける格好になってしまうんですよね。

 また、N-ONE RSのようなMTスポーツモデルの場合、ペダルフィーリングを考えるとあまりシートを上げたくはないので、街乗り以外のときは、視界と足さばきの両方のバランスを取った位置にしたとしても「高すぎず低すぎず、遠すぎず近すぎず」の絶妙な位置にきます。ちなみに、多くのレーシングカーがこの位置にシフトレバーを設置していたりもするので、大柄な方にもちょうどいいのではないか……と、想像しています。

 N-ONE RSはいくつかの電子制御機能レスになっているということを前述しましたが、それは前後方誤発進抑制機能と急アクセル抑制機能。MTだと単にアクセルペダルを踏んだだけでは急発進できませんからね。そういった安全性の意味とファンの期待に応えて作り続けていること、それがN-ONE RSのヒットの真相なのだと思います。

「エンジンのホンダ世代のユーザー」には間違いなく刺さるスポーツモデルだと思います。

ヒットの真相

1)期待に応え、マイナーチェンジで6MT専用モデルに振り切った。手軽に乗れるスポーツモデルを作り続けるホンダの本気度が共感を呼ぶ

2)日常の街乗りでの快適な乗り心地と、スポーツ走行時の痛快なハンドリングを両立。凸凹路でも路面を捉える、このクルマならではの優れた足回りは◎

3)スポーティな内外装アイテムとS660譲りの6MTを操る楽しさを兼備。「エンジンのホンダ」世代の心に刺さる、真面目なクルマ作り

たけおかけい/各種メディアやリアルイベントで、多方面からクルマとカーライフにアプローチ。その一方で官公庁や道路会社等の委員なども務める。レースやラリーにもドライバーとして長年参戦。日本自動車ジャーナリスト協会・副会長。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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