
ロータス・エミーラ・ターボSE/8DCT 1823万1400円。ターボSEはエミーラの最高性能バージョン。ハイチューンのAMG製2リッター直4ターボ(406ps/480Nm)搭載。トップスピードは291km/h
エミーラは、BEV化を促進するロータスの中にあって、ピュアスポーツの伝統を継承したエンジン車。パワーユニットをキャビン後方に搭載した本格派のMR2シーターである。メーカーは、エリーゼ、エキシージ、エヴォーラら歴代モデルの美点を継承しながら、ロータスの歴史において飛躍的な進化を遂げた存在と説明する。
今回、そのエミーラの3バリエーションを乗り比べる機会を得た。ドライブしたのは、2021年秋にローンチされたV6ファーストエディション(以下、FE/1573万円)と、2022年にラインアップに加わった2.0FE(1661万円)、そして現在の最高性能バージョンとなるターボSE(1823万1400円)である。
この3モデルが選ばれたのは、エミーラならではの走りの世界を実感するとともに、エンジンが異なる3台の個性を体感するため。ちなみにファーストエディションは、名称から導入限定車と認識しがちだが、ロータスの場合、通常生産モデルという位置付け。ディーラーには在庫があり、購入が可能である。
パワートレーンの違いは明確。V6FEはトヨタ製の3.5リッター・V6とスーパーチャージャー(406ps/420Nm)を組み合わせたモデル。試乗車は6速MTだった。2.0FEはメルセデスAMG製の2リッター・直4ターボ(365ps/430Nm)を搭載しトランスミッションは8速DCT。ターボSEは2.0のハイチューン版。同じメルセデスAMG製の2リッターターボながら406psと480Nmを発生。トップスピードは2.0の275km/hに対し291km/hに達する。
試乗報告の前に、ロータスのデザインヘッドであるラッセル・カー氏のコメントを紹介しておこう。彼は「エミーラはこれまでの常識を覆す存在であり、印象的なスタイル、優れた⽇常性&快適性とともに、ロータス特有のダイナミクスを高次元で実現した新時代のロータスです。見た瞬間に心を奪うジュニアスーパーカーとしての存在感、そしてロータスらしいドライビングフィールが最大の魅力です」と説明する。
エミーラで印象的なのは、車体の各所に穴(=エアベント)が開いていることだ。これらは、空気が車体の周囲を流れるだけでなく、車体内部を貫通するように導かれ、ドラッグを低減。ダウンフォースを生み出すようになっている。
インテリアは、シンプルでクリーンな印象。機能最優先でまとめている。乗降性も優秀だ。サイドシルの高さと厚みが適度なため乗り降りしやすい。好感を抱いたのはパッケージング。MRレイアウトながら、ジャケットなどの日常アイテムや旅行用バッグの収納に対応したラゲッジスペースをシート後方と車体後部に確保している。エミーラはGTカーとしてはもちろん、デイリーユースにも対応するリアルスポーツである。ロータスらしくドライバー優先設計であることは確かだが、各部の作りは上質で快適装備も充実している。
まずはV6FEからドライブ。3台を乗り比べると、それぞれの与えられたキャラクターの違いがよくわかる。試乗車は6速MTとの組み合わせだったが、ガシッとした剛性感のあるシフトフィールは本格派の証。操っていいて実に楽しい。過給機にスーパーチャージャーを採用したのは、レスポンスを重視してのことだろう。サウンドも魅力的だ。実際にも速いが、音がドライバーの高揚感を後押しする。魅惑の音が聞きたくて、思いわずアクセルを踏み込んでしまった。まさに刺激と上質さを兼ね備えたピュアスポーツである。
次いでドライブした2.0FEは、現在のエミーラのコアモデル。日常使いに十分に配慮したチューニングながら、右足を深く踏み込むとロータスらしい痛快な走りの世界が堪能できる。エンジンはメルセデスAMG製のM139型だ。型式名を聞いてピンと来た人も大勢いるだろう。AMGの45シリーズに搭載されているヤンチャなユニットである。走りの印象は、V6と比べると荒々しいイメージ。瞬発力もひけをとらない。V6もいいが、この直4もいい。
最後に、パフォーマンスとハンドリングにおけるフラッグシップとなるターボSEのステアリングを握った。SEの最高出力は2.0比で41ps増の406ps。最大トルクは480Nm。最高出力はV6と共通だが、トルクは60Nmも太い。0→100km/hを4秒で駆け抜けるハイパフォーマンスは劇的で、パンチの効いた加速を楽しませてくれた。クルマ自体も全体の動きが一段とスム-ズになっていた。
エミーラに共通する美点は、「軽快さ」と「一体感」だった。ボディサイズは4412×1895×1225㎜。かつてより大柄になったとはいえ「ドライバーが主人公」というロータスの美点は一歩も譲っていない。しかも乗り心地がよく、それでいてコーナリングではほとんどロールせず、限界がはるか彼方にあるような感覚が強い。本当に気持ちよく走れて、いつまでも乗っていたくなるスポーツカーだった。メーカーによると、エミーラはロータス最後の100%エンジン車であるという。エミーラは、ロータスがモーターシーンに刻んできた栄光をドライバーに雄弁に語りかけるまさに名車である。ドライビング好きであるほど魅力を実感するに違いない。
