マカン・エレクトリックは2024年7月に発表され予約注文をスタートしたBEV。当初はスタンダードのマカン/マカン4/マカン4S/マカン・ターボの4グレード展開だった。昨年10月に5つ目の選択肢としてマカンGTSが追加されている。パフォーマンスの違いと広い価格レンジでマーケットニーズに応える戦略は万全。出力の幅は360psから639ps (ローンチコントロール時)、価格は1038万円から1541万円となる。
内燃機関を持たない純BEVとして誕生したこのクルマのユニークポイントはデフォルトとなる駆動用モーターをリアアクスルに取り付けていることだろう。2WDではそれを動かし、4WDでは+フロントモーターというレイアウトで駆動力を発揮する。要するにFRスポーツ的な挙動をドライバーに楽しんでもらおうという意図がある。
このパッケージングをどちらのブランドがリードしたかは知らないが、アウディとこのプラットフォームが共有されるのも見逃せない。先だって試乗したアウディQ6がそれで、なんとマカンと同じく2WD仕様はリア駆動方式にしている。長年FWDをベースにしてきたアウディにとっては180度方向転換したイメージだ。
トップグレードのマカン・ターボに乗ったのでその印象をお届けしよう。特徴はやはり強力な動力源となる。最高出力はシリーズトップの639psで、最大トルクは1130Nmを発生する。この車格からして4桁のトルクは恐ろしい。最高速度は260km/h、0→100km/h加速は3.3秒というデータだ。スーパーカーレベルの4桁のトルクを誇るわりに最高速度がそこまで高くないのはBEVらしいといっていいだろう。モーターの特性がそのまま数値につながっている。
とはいえ、静止状態からの動き出しやアクセルを踏み直しての中間加速は想像以上に速い。アクセルオンで体がシートに強く押し付けられる。内燃機関であれば過給器がないと起きない現象をモーターはいとも簡単に起こすので注意が必要だ。それでいて、街中での走行では細かいアクセル操作に見合った速度調整をしてくれるので扱いやすさもハイレベル。ドライブモードをノーマルにしておけばピーキーな走りにはならない。
逆にいえばスポーツプラスで走ればかなりアグレッシブに楽しめる。アクセルの踏み方しだいでは周囲のクルマが止まっているように見えるだろう。他車を横目に異次元の走りを体感できるかもしれない。でも、マカン・ターボが速さだけが売りではないことをきちんと強調しておきたい。というのも、シャシーの安定感が抜群だからだ。加速時の沈み込むような姿勢やコーナーでのフラットライドはまさに最新のポルシェ。挙動を乱さない動きは、まんまスポーツカーである。そこはポルシェ・ブランドとしての一日の長があるのだろう。背が高くなっても、動力源が電池とモーターにスイッチしても、ポルシェらしさはそのまま。さらにいえば制動力もそう。このブレーキ性能があるからこそアクセルが踏めるのだ。その絶妙な動的バランスに、ポルシェの懐の深さが感じ取れる。
試乗インプレッションを掲載したマカン・エレクトリック・ターボの販売比率は約15 %で、エレクトリックSとほぼ同じ。エレクトリックが40%、エレクトリック4が30%である。後輪駆動はエレクトリックだけという事情を考えると、駆動方式に注目して選択しているユーザーが多いといえそうだ。人気のボディカラーはアイスグレーメタリックで約21%、ホワイトとジェットブラックメタリックがそれぞれ約18%で並んでいる。現在、納期は約半年。ポルシェは高電圧バッテリーに手厚い保証を設定し、ユーザーの期待に応えている。長期間にわたってBEVライフを送ろうと考えているなら、半年待ちは短いかもしれない。
