【ボクらの時代録】2008年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。トヨタiQ (KGJ10/NGJ10型)の小さな新世界

iQメイン都市空間を彩るマイクロコンパクトという新発想

 2007年のフランクフルト・ショーでデザインスタディを見たときから、ボクはiQファンになった。理由は単純で、「カッコいい」からだ。日本車を見て、あれほど気持ちがときめいたのはいつ以来か、ちょっと思い出せない。

 iQのスリーサイズは2985×1680×1500mmで、ホイールベースは2000mm。ヴィッツの高さと幅はそのままに、長さを820mm縮めた……そんなサイズだ。小さい。だが存在感は半端ではない。今回の試乗では、多くの視線を集めた。欧州車と日本車を同列に並べておしゃれ度を考えるとか、評価するとか……そんなケースは少ないが、iQは例外だ。ボクが街乗り用のコンパクトを買うとしたら、MINI、スマート、iQは候補として横一線に並ぶ。
 3mを切る全長で、4名の大人が乗れる空間を確保した手品のようなパッケージングは見事だし、それを可能にしたエンジニアリングは立派だ。それにプラスして、このデザインである。ボクは大きな拍手を送りたい。

前黒最小回転半径

 パワートレーンは1リッター・3気筒エンジンとCVTの組み合わせ。CVTのプログラムは、当然ながら燃費を強く意識した方向で、街中を坦々と流す、といった状況下では、1000rpmプラスのエンジン回転数で走る場合も珍しくない。アイドル振動は「気にすれば気になる」レベル。アクセルペダルに伝わる振動だけは、もう少し抑えてほしい。小回り性はもう驚くばかりだ。

 iQはKカーからの乗り換えは少ないだろう。だが、上級モデルからの乗り換え、高級車ユーザーの買い足しのケースは、大いに考えられる。都市型で、おしゃれ感度の高いユーザーに支持されるに違いない。
(岡崎宏司/2008年12月26日号)

カラーインパネトヨタiQのプロフィール

 iQは混雑する都市空間に最適なマイクロコンパクトカー。2007年9月のフランクフルト・ショーで「iQコンセプト」を公開。日本では2008年10月にデビューした。デザインや開発は、トヨタの欧州デザインスタジオED2が主導したという。iQは全長×全幅×全高2985×1680×1500mmの超コンパクトサイズに、4シーター(実質的には大人3名+荷物)の室内空間を実現。さらにクラストップ級の安全性と優れた走りの性能を盛り込む。メルセデス・グループが送り出すスマートが2シーターに割り切ったのに対し、クルマとしての機能性にこだわった点が個性だった。

説明01説明02

 カタログでは「凝縮された技術。従来の概念を覆すパッケージ」と説明。最小回転半径は3.9mだった。日本仕様は当初1リッター直3+CVT仕様のみのラインアップだったが、2009年8月には1.3リッター直4+CVTが追加された。iQは各部の完成度が高く、上級車から乗り換えても満足感の高いモデルだった。それを証明するエピソードが、アストンマーティン・シグネットの存在。iQの出来のよさに感銘を受けたアストンマーティンが、自社の顧客のセカンドカーとして企画。iQをカスタマイズしたモデルを自社ブランドで販売したのだった。

2008年の時代録/日本の4博士がノーベル賞受賞

【出来事】ノーベル賞で日本人研究者の4人、南部陽一郎、増川敏英、小林誠が物理学賞、下村修が化学賞を受賞/iPhoneの販売をスタート/北京オリンピック、北島康介が100m平泳ぎで2連覇達成。女子ソフトボールも金メダル獲得【音楽】オリコンシングル年間1位嵐『truth/風の向こうへ』/安室奈美恵が10代・20代・30代と続けてミリオンを達成【映画】邦画配給収入1位『崖の上のポニョ』洋画興行成績1位『インデイ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』

2008年トヨタiQ主要諸元

グレード=iQ・100Gレザーパッケージ
新車時価格=CVT 160万円
全長×全幅×全高=2985×1680×1500mm
車重=890kg
エンジン=996cc直3DOHC12V(68ps/9.2kgm)
サスペンション=前ストラット/後トーションビーム

表紙

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