【注目モデル詳報】モデルライフ最大の改良。新開発LSDで「人馬一体」が徹底された最新マツダ・ロードスターのマニアックポイント

新型は「新たな安全法規に適合しながらロードスターらしい「人馬一体」の走りを追求した進化バージョン」。セーフティ&コネクティッド機能を充実させながら走りの機能もブラッシュアップ。価格帯は289万8500〜430万8700円

新型は「新たな安全法規に適合しながらロードスターらしい「人馬一体」の走りを追求した進化バージョン」。セーフティ&コネクティッド機能を充実させながら走りの機能もブラッシュアップ。価格帯は289万8500〜430万8700円

ND型がデビュー8年目でさらにリファイン

 日本車のビンテージイヤーと呼ばれた1989年、世界に追い付け追い越せ……とハイパワー&ハイスペックのモデルが続々と登場する中、1台のFRライトウェイトオープンスポーツが登場した。それが「ロードスター」である。

 1960〜70年代に人気を博した、安価でコンパクトなFRオープンスポーツモデルは、誰もが復活を望みながらも、ビジネスとしては非常に厳しい……といわれ続けてきた。でも、マツダは見事に造り上げた。

ハイアングルリア

 

 当時、ライバルメーカーは「こんなクルマ、売れるわけがない」と冷ややかだった。だが瞬く間に世界中で大ヒット。欧州の主要メーカーは慌てて似たようなモデルを開発する事態に。その後、そんなライバルたちは販売不振で生産終了、もしくはライトウェイトからプレミアムスポーツへと大型化&大排気量化の流れとなった。だがロードスターは当初のコンセプト「ライトウェイトFRスポーツ」を一切ブラさず進化を遂げてきた。

 現行モデルとなる4代目は2015年に登場。ライトウェイトFRスポーツの醍醐味をより明確化するため、スカイアクティブテクノロジーとモノ作り革新をフル活用。最新モデルとして必要な安全性能を備えながら、サイズダウン/低重心化/軽量化が行なわれた。さらに登場後も爽快なオープンエアとクローズドの美しさを両立させたリトラクタブルファストバックのRFや、さまざまな個性を備えた特別仕様車を送り出してきた。そして2023年10月、8年目にして初の大幅改良が行われた。

最新モデルはロードスターの理想を追求! すべてをスープアップ

 開発テーマについてマツダ自身は「現代に求められる新たな安全法規に適合しながら、ロードスターらしい進化によって『人馬一体』の走りの楽しさをさらに高めた」と語っている。改良内容は大きく3点だ。

走りLSD

 

 1つ目はロードスターの要となる「走りの進化」である。サスペンションやタイヤに変更はないが、Sグレードを除くMTモデルにアシンメトリックLSDを新採用した。加速・減速時でそれぞれ最適な差動制限力を実現するカム機構を追加することで、安定性と旋回性をレベルアップ。これに合わせて電動パワーステアリングにも手が加えられた。ステアリングラックの摩擦低減、制御ロジックの緻密化で、よりスッキリ、よりスムーズ、よりリニアな旋回特性を実現したという。

 さらにDSC制御に新たにDSC-TRACKを追加。これはドライバーの運転操作を最大限に尊重し、危険なスピン挙動時のみ制御が介入するモード。サーキット走行などでのリスクを減少する安心機能だ。

 パワートレーンにも手が入った。ソフトトップの1.5リッターエンジンは国内ハイオクガソリンに合わせた専用セットアップにより、出力を3kW向上。さらに1.5リッター/2リッター共に最新の駆動力制御ロジックが導入され、アクセル操作時のレスポンスを改善した。その結果、一段とドライバーの意に沿った駆動が可能となっている。

レーダー室内

 

 2つ目は「先進安全機能の進化」だ。マツダ・レーダークルーズコントロール(MRCC)、スマートブレーキサポート(SBS-RC)と進化したマツダコネクト(モニターは7インチから8.8インチに)を採用。「ロードスターには無駄な装備は不要」という意見もあるが、筆者はスポーツカーだからこそ安全は重要だと考えている。これらのアイテム装着による重量増はごくわずか。従来との性能面での差はほぼないと考えていいだろう。

 3つ目は「デザインの進化」だ。基本的なデザインは不変ながらも、「More Roadster」をキーワードに各部をバランス良くアップデート。エクステリアはヘッドライト/テールランプ、ターンランプの意匠変更&LED化と、ホイールデザインの変更(16インチと17インチの明確化)を実施。さらにボディカラーにロードスターをよりクールに彩る新色、エアログレーメタリックが追加された。一方、インテリアは新デザインのメーター(よりシンプルでシャープな印象に)、センターコンソールサイドパッド追加、フレームレスのルームミラーにより機能性と質感を向上させている。

ライトVセレクション

 

 今回の改良に合わせてグレード体系も見直された。注目はベージュのソフトトップ&タンレザー内装を持つSレザーパッケージ・Vセレクションの追加である。Vセレクションは、初代モデルのVスペシャルを彷彿とさせるコーディネート。おじさん世代には「懐かしさ」、若い世代には「新たなロードスターの魅力」が感じられるだろう。

 その一方で「軽さ」を活かした特別仕様車、990Sがモデル落ちしてしまったのは残念だ。主査の齋藤茂樹氏に聞くと、「特別仕様車としての希少性も考え、今回は設定しなかった」と語る一方、「要望が多ければ、新たな提案をしていきたい」と教えてくれた。各グレードのメーカーopの適正化も行われている。このあたりは各グレードの世界観、個性をより明確化させるための選択と集中だ。個人的にはBOSEサウンドシステムがSスペシャルパッケージで選択できなくなったのが残念。スポーツカーにとって音楽は大切な要素、個人的には残してほしかった。

 最新ロードスターは、全方位にわたるアップデートが行われている。「数値よりも官能」、そして「バランス」を大事にするロードスターらしい進化といえる。ステアリングを握るのが楽しみだ。

Sスペシャルパッケージ/価格:6MT 308万7700円/6SAT 320万3200円。1.5リッターユニットは従来比3kWパワーアップ。MRCCはセットop(11万円)、16インチアルミは新形状

Sスペシャルパッケージ/価格:6MT 308万7700円/6SAT 320万3200円。1.5リッターユニットは従来比3kWパワーアップ。MRCCはセットop(11万円)、16インチアルミは新形状

SレザーパッケージVセレクション/価格:6MT 355万3000円/6SAT 366万8500円。新設定のVセレクションはスポーツタン内装とベージュ幌を採用

SレザーパッケージVセレクション/価格:6MT 355万3000円/6SAT 366万8500円。新設定のVセレクションはスポーツタン内装とベージュ幌を採用

RF・VS/価格:6MT 415万4700円/6SAT 418万2200円。RFは2リッターユニット搭載。アルミは17インチの新形状

RF・VS/価格:6MT 415万4700円/6SAT 418万2200円。RFは2リッターユニット搭載。アルミは17インチの新形状

RF・RS/価格:6MT 430万8700円。RSはビルシュタイン製ダンパー&レカロシート標準。アルミはブラックカラー。ルーフもブラック仕上げ

RF・RS/価格:6MT 430万8700円。RSはビルシュタイン製ダンパー&レカロシート標準。アルミはブラックカラー。ルーフもブラック仕上げ

リア

SNSでフォローする