【最新フラッグシップ研究】ラグジュアリーの頂点。ベントレー・ベンテイガの示す英国の伝統様式に惚れた

ベントレー・ベンテイガ 価格▷2340万〜3018万円 試乗記

ベントレー・ベンテイガEWB 価格:8SAT 2675万円 EWBは標準ベンテイガのホイールベースを120延長し、後席居住性を高めた上級モデル。4ℓ・V8ツインターボ(550ps)を搭載。トップスピードは290km/hに達する

ベントレー・ベンテイガEWB 価格:8SAT 2675万円 EWBは標準ベンテイガのホイールベースを120延長し、後席居住性を高めた上級モデル。4ℓ・V8ツインターボ(550ps)を搭載。トップスピードは290km/hに達する

ベンテイガはハイエンドSUVの出発点。今やベントレーの中心

 レンジローバーが「ラグジュアリーSUVの元祖」だとすれば、ベントレー・ベンテイガは、現在に続く「ラグジュアリーSUVブームの火付け役」である。
 この分析は、衆目の一致するところだ。
 2015年のフランクフルトショーでベンテイガの姿が公開されると、これを追うようにしてランボルギーニ・ウルスが誕生。さらにロールスロイス・カリナンとアストンマーティンDBXが続き、ついにはフェラーリ・プロサングエが発表されたことはご存じのとおり。もっとも、フェラーリはプロサングエのことを「4人の大人が快適に移動できる4ドア/4シーターの4WDスポーツカー」と説明していて、SUVとは認めていない。話を戻して、ここでの主役はベンテイガである。

 ベンテイガは発表翌年の2016年に5586台を販売。ベントレー全体に占める比率はこの年、47.3%に達した。それ以降も毎年4000〜5000台を売り上げ、「ベントレーで最も人気のあるモデル」の地位を守り続けている。

 ベンテイガの魅力とは何か? 端的に説明するなら、「優れたグランドツアラー性と快適性、さらには豪華な内外装といったベントレーならではの特色をすべて備えたSUV」となるだろう。
 発売当初はベントレー自慢の6リッター・W12ターボエンジンを搭載。その後、4リッター・V8ターボや3リッター・V6ターボ+PHVといったパワープラントを追加した。いずれの心臓も低回転域から力強いトルクを生み出すベントレーらしいキャラクターを大切にしており、足回りはしなやかでありながら、大きな荷重がかかったときにはボディをしっかりと支える「コシの強さ」を備えている。高速クルージングだけでなくワインディングロードでも軽快な走りを披露する実力には脱帽する。もちろん、キャビンの贅沢さは目を見張るばかり。とりわけレザーとウッドに囲まれたインテリアの作り込みはベントレーの真骨頂だ。定番の組み合わせだけでなく、カーボンやアルミといったハイテク素材なども選択できる幅広さもベントレーの魅力である。

 2020年に初のマイナーチェンジが実施されると、今度は主力エンジンをV8にスイッチ。その脇を固める形でW12やV6+PHVも用意している。さらにはスポーティな雰囲気が漂うベンテイガS、ラグジュアリーなイメージのベンテイガ・アズールなどを追加し、ラインアップの強化を図ってきた。

ベンテイガは「ラグジュアリーSUVブームの火付け役」。2015年のデビュー以来、多くの追従車が誕生した。駆動方式は電子制御4WD。パフォーマンスはダイナミック。0〜100km/h加速は4.6秒でクリア。4WS機構の搭載で高速時の安定性と低速域の小回り性も両立している

ベンテイガは「ラグジュアリーSUVブームの火付け役」。2015年のデビュー以来、多くの追従車が誕生した。駆動方式は電子制御4WD。パフォーマンスはダイナミック。0〜100km/h加速は4.6秒でクリア。4WS機構の搭載で高速時の安定性と低速域の小回り性も両立している

ベントレーは一貫して「世界最良のドライバーズカー」を追求。ベンテイガもその伝統を継承している。正確でレスポンス良好なハンドリングは超一級品。EWBもステアリングを握るのが実に楽しい

ベントレーは一貫して「世界最良のドライバーズカー」を追求。ベンテイガもその伝統を継承している。正確でレスポンス良好なハンドリングは超一級品。EWBもステアリングを握るのが実に楽しい

EWBは後席重視のロングホイールベース版。ドライバーズカーの資質はそのままキープ

 新たに加わったベンテイガEWBは、ベンテイガのロングホイール版。要は後席の居住性を一段と強化したモデルといえる。ちなみにEWBはエクステンデッド・ホイール・ベース、つまり「ホイールベースを延長した」の意味で、イギリスの高級車でよく使われる表現である。
 現状ではEWBのパワートレーンはV8エンジンのみ。ホイールベースを標準仕様比で180mm延長するとともに、オプションでエアライン・スペシフィケーションと呼ばれるリアシートを設定。これはワンタッチでゆったりとくつろげる体勢を作り出したり、各種センサーにより温度調整や着座姿勢を自動設定する機能などが装備された快適パッケージだ。

 EWBは、ロングホイールベース版にふさわしい装備や仕様を備えていながら、ホイールベース延長に伴うデメリットをほとんど感じさせない。これは大きな特徴だ。
 たとえば、ハンドリングは標準仕様のベンテイガと比べてまったく引けを取らない。まさに正確でレスポンスも良好。このあたりは、サスペンションのセットアップを見直すとともに、アクティブアンチロールバーの標準装備化、さらにはベンテイガとして初めて4WSを搭載したことの恩恵である。

 もちろん、ロングホイールベース版らしい「穏やかな乗り心地」を満喫できるのも、EWBの特徴。とりわけ後席の快適性が大幅に向上したことは目を見張るばかり。標準モデルではゴツゴツとした感触がはっきりと伝わってくるスポーツモードでも、EWBの後席であればまったく気にならない。しかも、EWBは遮音対策も入念に行ったようで、荒れた路面を走っていてもゴーッというロードノイズがほとんど耳に届かなかったことにも驚かされた。快適性はいうまでもなく最高である。

 一般的にいって、ロングホイールベース版はエクステリアデザインがどこか間延びしているケースが少なくない。しかしベンテイガEWBはこの点でも標準モデルと大きく変わらず、ある種の緊張感を保ったスタイリングに仕上がっている。つまり、後席のスペースや快適性をプラスしたうえで、EWBは標準モデルが持つ全ての価値を備えている。スペシャルにして伝統の魅力をすべて継承した逸材、それがベンテイガEWBである。

延長されたホイールベースの恩恵で後席スペースは一段と豊か。足回りの再設定で標準モデル以上に静粛で快適なクルージングが楽しめる

延長されたホイールベースの恩恵で後席スペースは一段と豊か。足回りの再設定で標準モデル以上に静粛で快適なクルージングが楽しめる

リアイメージベントレー・ベンテイガ主要諸元

真正面

グレード=EWB
価格=8SAT 2675万円
全長×全幅×全高=5305×1998×1739mm
ホイールベース=3175mm
トレッド=フロント:1689/リア:1707mm
車重=2514kg
エンジン=3996cc・V8DOHC32Vツインターボ       
最高出力=404kW(550ps)/6000rpm
最大トルク=770Nm/2000~4500rpm
WLTCモード燃費=未公表(燃料タンク容量90リッター)
(WLTC市街地/郊外/高速道路=未公表)
サスペンション=フロント:4リンク/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=285/40R22+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.9m
※価格を除き、スペックは欧州仕様

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