【最新フラッグシップ研究】街を走り始めた先進モデル、クラウン・クロスオーバーの気になる完成度

クラウン・クロスオーバー 価格▷435万〜640万円 試乗記

トヨタ・クラウン・クロスオーバー2.5ℓハイブリッドGアドバンスド 価格:THS 510万円 16代目となる新型は、クロスオーバー/クーペ/セダン/エステートの4種を設定。クロスオーバーはセダンにSUVの発想をプラス

トヨタ・クラウン・クロスオーバー2.5ℓハイブリッドGアドバンスト 価格:THS 510万円 16代目となる新型は、クロスオーバー/クーペ/セダン/エステートの4種を設定。クロスオーバーはセダンにSUVの発想をプラス

16代目は章男社長の強い危機感から誕生。すべてが新しい!

 クラウン本来のDNAは「革新と挑戦」である。だが世の中の印象は「保守と伝統」だったと思う。16代目となる新型は豊田章男社長の「このままではクラウンは終わる……」という強い危機感から生まれた。発表会では4種のモデルバリエーションが披露されたが、その先陣を切るのがセダン+SUVの発想で生まれた「クロスオーバー」である。
 エクステリアは従来の「ザ・セダン」から脱却、クーペシルエットとリフトアップを融合した斬新な造形を採用。従来とは異なるため賛否はあるが、「威圧」、「圧倒」とは異なる新時代の高級車の提案は高く評価したい。

 インテリアは水平基調のクリーンなデザイン。旧型をよりシンプルにした印象だ。メーターはフル液晶化され、さまざまな情報が同時表示できるようになった。これは大きな進化だ。その一方でソフトパッドとハード樹脂との質感の差や、それを目立たせてしまうシボの使い方、重厚感がないドアの開閉音、煩雑なレイアウトと金属加飾に見えないプラスチッキーなセンターコンソール回りといった細部のツメは、要改善だろう。

 歴代クラウンの伝統装備だった助手席肩口パワーシートスイッチと前席シートバックに装着されるアシストグリップは一部グレードに継承されるが、運転席ドアのトランクオープナーや空調のスイング機能は廃止された。歴代ユーザーが「あぁ、これこれ!!」と感じるアイテムは残すべきだったのでは、と思う。

 パッケージングは優秀。運転席に座ると旧型とは明らかに異なる視線の高さが新鮮だ。着座姿勢やコクピット感覚などはクロスオーバーではなくセダン。運転に集中できる環境が整えられている。一方、助手席に座ると開放感があり心地よく移動を楽しめる空間に仕上がっていた。リアシートは2850mmのホイールベースが生む余裕と大きなリアドアガラス、そしてラウンジのようなシートが印象的。優れた居住性を持ち、フォーマルユースにも活用できるだろう。

スタイリングはクーペシルエットと車高を高めたリフトアップ処理がクロスオーバーの車名にふさわしい個性を主張。タイヤは大径サイズを装着。19インチ(写真)と21インチサイズがメインで、opで18インチを設定する。新型はエンジン横置きの4WDレイアウト。全車ハイブリッド

スタイリングはクーペシルエットと車高を高めたリフトアップ処理がクロスオーバーの車名にふさわしい個性を主張。タイヤは大径サイズを装着。19インチ(写真)と21インチサイズがメインで、opで18インチを設定する。新型はエンジン横置きの4WDレイアウト。全車ハイブリッド

インパネはすっきりとしたイメージでまとめられている。フル液晶メーターと12.3インチセンターディスプレイを組み合わせた構成。運転席は旧型とは明らかに違う視線の高さが新鮮。すっきりと軽い操舵フィールのステアリングをはじめドライビング感覚は滑らか

インパネはすっきりとしたイメージでまとめられている。フル液晶メーターと12.3インチセンターディスプレイを組み合わせた構成。運転席は旧型とは明らかに違う視線の高さが新鮮。すっきりと軽い操舵フィールのステアリングをはじめドライビング感覚は滑らか

クラウンらしいフットワークに感銘。ときに優しく、ときに頼もしい。まさにトヨタの代表

 試乗車は2.5リッターエンジン+THS2(シリーズパラレルハイブリッド)のみ。システムは旧型と同じだが、エンジンは縦置きから横置きに、E-Four(電気式4WDシステム)の採用、バイポーラ型ニッケル水素バッテリー搭載と内容は異なる。
 走らせると、パフォーマンス的には十分以上。だが、体感的に「余裕」を感じない点が残念。その原因のひとつが「音」だ。絶対的な音量は低いのだが、高効率エンジン特有の「濁音」の多い音質がアクセルワーク以上にエンジンが回っているように感じてしまう。また、THS2の課題である回転と加速のズレがまだ残っている。長年の進化・熟成で確実に改善されているが、ライバルと比べて差がある。このあたりは2.4リッターターボ+デュアルブーストハイブリッドに期待だ。とはいえ、THS2もイノベーションが必要な時期に来ている。個人的には4ATを組み合わせたマルチステージハイブリッドの横置き版がほしい。

 フットワークはどうか? 印象としては、「これはクラウンだ!!」といえる走りだった。ステアリング系は歴代クラウンと同様に軽めの設定。初期応答のよさ、滑らかな操舵感、路面からの情報の豊かさ(=直結感)など、扱いやすく信頼度は高い。
 ハンドリングは日常域では駆動方式の概念が変わる。そのひとつが「コーナリング時の旋回姿勢」である。横置きFFのようにフロントを中心にではなく、前後重量配分が整った縦置きFRのように曲がる。旋回軸がドライバーの近くにあるようなイメージだ。このあたりは4輪操舵やアクティブコーナリングアシストなど、最新の制御技術に加えて、ステアリング舵角入力に応じたリアモーターの駆動力アップなどの相乗効果だろう。
 コーナリングの一連の流れには連続性があり、滑らかでスムーズなクルマの動きを実現。「気負いなく高性能を味わえる」走りだ。そういう意味では、トヨタ車共通の味「Confident(安心) & Natural(自然)」の完成形といってもいいだろう。

 乗り心地は「このクルマ、フワフワしないけど快適だよね」という印象。路面からの入力の優しさに加えて、ショックをシュッと素早く吸収するのではなく、少しだけ時間をかけてジワーッと吸収させるような「間」が効いている。ただし、大きな入力だと大径タイヤの弊害が出るシーンも……。個人的には見た目とのバランスを考えて21インチがベストだが、乗り心地を気にするなら19インチ、もしくはopの18インチがいいかもしれない。

 新型は「クラウンらしさ」がしっかり継承されていた。クラウンらしさとは? それは時に優しく、時に頼もしい、そしてどこかホッとする「お母さん」のような存在だと思っている。新型はさまざまな意味でトヨタを牽引する存在といっていい。

イメージ

エンブレムクラウン・クロスオーバー主要諸元

真正面

グレード=Gアドバンスト
価格=THS 510万円
全長×全幅×全高=4930×1840×1540mm
ホイールベース=2850mm
トレッド=フロント:1600/リア:1605mm
車重=1770kg
エンジン=2487cc直4DOHC16V(レギュラー仕様) 
最高出力=137kW(186ps)/6000rpm
最大トルク=221Nm(22.5kgm)/3600~5200rpm
モーター最高出力=フロント:88k W(119.6ps)/フロント:40kw(54.4ps)
モーター最大トルク=フロント:202Nm(20.6kgm)/リア121Nm(12.3kgm)
WLTCモード燃費=22.4km/リッター(燃料タンク容量55リッター)
(市街地/郊外/高速道路=21.2/23.8/22.1km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リアマルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=225/55R19+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m

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