【最新モデル試乗】BMWのクルマづくりが新たなステージに突入。最新BEV[iX3]は圧倒的な航続距離と変化するキャラクターで「駆け抜ける歓び」を提案

BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ/価格:1034万円。iX3は標準仕様(982万円)とMスポーツの2グレード構成。標準仕様の一充電航続距離はクラス最長の906kmを実現。Mスポーツも835kmと長い

BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ/価格:1034万円。iX3は標準仕様(982万円)とMスポーツの2グレード構成。標準仕様の一充電航続距離はクラス最長の906kmを実現。Mスポーツも835kmと長い

BMWを革新・再定義する存在。それがiX3。すべてが新鮮

 新型iX3はBMWのSAV(スポーツアクティビティビークル)、X3のラインアップに加わった、BMWが提唱する次世代コンセプト「ノイエ・クラッセ」の第1弾モデルとなるBEVだ。ドイツ語で「新しいクラス」を意味するノイエ・クラッセ(Neue Klasse)は、もともとは1960年代初頭にBMWが投入した革新的なモデル群を指す言葉。それは現在のBMWブランドの礎を築いた名車だった。

正面

初代ノイエ

50 Years of BMW New Class, BMW 1500 (03/2011)

 当時のBMWは、高級車と小型車の間を埋める主力商品を欠き、経営危機に直面していた。打開したのがノイエ・クラッセ。1961 年のフランクフルトショーで初めて発表された4ドアセダンのノイエ・クラッセ=BMW1500(現在の5シリーズの元祖)を皮切りに、1966年には3シリーズの礎を築いた2ドアモデル(後の02シリーズ)が誕生。BMWらしい軽快な走行性能と実用性を兼ね備えたスポーティなセダンという新たな市場を切り開く。ノイエ・クラッセにより、BMWのブランドイメージは大きく向上。経営危機を見事に脱し、現在に通じる成長基盤を確立した。往年のノイエ・クラッセは、現在の「駆け抜ける歓び」の原点であり、BMW成功の出発点として位置付けられている。

最新のノイエ・クラッセは先進技術で圧倒的な航続距離を実現

 最新のノイエ・クラッセも、往年モデル同様の意欲作だ。iX3は、今後のBMWの新たな時代を象徴する存在である。
 新型iX3のアピールポイントはたくさんあるが、ハイライトはWLTCモードで906km(試乗したiX3 50 xDrive Mスポーツは835km)に達する一充電での航続距離だ。もはや「BEVとしては」という注釈のいらないロングクルーザーに仕上げられている。これだけ走れば充電の心配をせずに行動半径を広げられる。

スタイル

 圧倒的な航続距離を実現した要因は、ジェネレーション6と呼ばれる最新の「BMW eDrive」。中でも「新設計の高電圧バッテリー」、「800Vアーキテクチャー」、「進化した電動駆動ユニット」がキーになる。 新型iX3に搭載される高電圧バッテリーは、「セル・トゥ・パック」設計による革新的な電池である。従来、高電圧バッテリーは、個々のバッテリーセルをモジュール化し、モジュールを組み合わせたパックを車両に搭載していた。セル・トゥ・パック設計は、バッテリーセルを直接パックに組み込むことで、空間効率の向上、重量の削減、冷却効率の向上などを実現している。バッテリーセルは、直径46mm、高さ95mm の円筒形。それをパックし車両床面に敷き詰めている。これにより、バッテリー容量109.1kW/h を確保し、最大で906kmもの一充電走行距離を実現したわけだ。

 800VアーキテクチャによりBMWグループのBEVとして初めて最大320kW充電に対応した。外気温25℃で最大出力240kWの急速充電器を使用した場合、15分で約395km走行に相当する電力量を充電できる。10%から80%までの充電は26分で完了するという。

充電

 進化した電動駆動ユニットも印象的だ。BMWグループの電気自動車として初採用となる「誘導モーター」を前輪に、後輪には「巻き線界磁式同期モーター」を採用。圧倒的な効率と性能向上を実現している。前輪に採用した誘導モーターは、構造が単純で頑丈な非同期式電動機。4輪駆動モデルの前輪用として理想的な補助駆動ユニットといえる。iX3の場合、前輪の駆動が必要なときだけ駆動することで、効率を最大化している。

タイヤ

フランク

 一方、後輪に採用の巻き線界磁式同期モーターは、ローターに永久磁石ではなく電磁石(界磁巻線)を使用している。界磁電流を調整して磁力を可変できることにより、正確な出力制御、高効率で航続距離を延長させることが可能となっている。

デザインはモダンで未来的。走りは超一流のドライバーズカー

 iX3は内外装も斬新。とくにインテリアは革新的だ。初採用となるBMWパノラミックiDriveは、43.3インチのBMWパノラミックビジョンと17.9インチのセンターディスプレイにより構成。パノラミックビジョンはフロントウィンドの端から端まで約1.1mをディスプレイゾーンとしており、ドライバーの好みに応じてカスタマイズが可能。スピードメーター、シフトポジション、充電状態、走行可能距離、外気温や時間などを表示させることができる。従来のメーターパネルが廃止された室内は、すっきりとモダンな印象。見た目だけでなく運転中のドライバーの視線移動が最小限になるので安全にも貢献する。

リア

インパネ

 ダッシュボード中央のセンター・ディスプレイは、ドライバー側に17.5度傾けられており、操作しやすく、タッチ操作で車両のほぼすべての機能を操作できる。細かなコントロールには慣れが必要だが、さほど難しくない。音声でも操作可能だ。BMW初採用の3Dヘッドアップ・ディスプレイも先進装備。カーナビのルート案内では、実際の道路をトレースしているかのような表示である。

 エクステリアも攻めた印象。個人的には小型化されたキドニーグリルに好感を抱いた。最近の超大型化していたデザイン処理と比較すると上質でさりげない。往年のBMWイメージも踏襲している。新しいのに、ちょっと懐かしさを感じさせる造形処理は見事である。

 ドライブフィールは、全長が4780mm、車両重量が2330㎏あるとは思えないほど俊敏。まさに「駆け抜ける歓び」が存分に楽しめた。走り味は、まるでひと回り小さくて身軽な印象。それゆえか足回りは意外とハードで路面状況をダイレクトに伝えてくるが、それほど不快ではない。試乗車はグリップ指向のADVAN Sport V107を装着。ハンドリングの切れ味はシャープで、BMWらしいスポーティな走りを目指したことが理解できた。

リア走り

 価格は、これほどの内容のクルマとしては控えめである。試乗車の50xDrive Mスポーツのプライスは1034万円。絶対的には高価だが、3リッターターボを搭載したM50 XDrive(1021万円)と同等。ハイスペックBEVの中ではリーズナブルな部類に入る。細かく見ると装備が簡略化されている部分もあるが、実際に乗ると十分にラグジュアリーかつ上質。本革スポーツシートが標準となるなど満足度は高い。

 iX3ほど長い航続距離と速い充電速度を実現したBEVはない。ストレスなくロングドライブに出かけられるBEVの筆頭。まさしく現代のノイエ・クラッセの価値はそこにあると思う。iX3はBEVのスムーズな速さが存分に味わえ、すべてが新しい。まさに行動の自由を約束する新世代BMWである。

エンブレム

諸元

ラインアップ

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