シトロエンは1919年フランス・パリで創業した名門。企業理念としてCaring/Clever/Creativeという3つのCを掲げている。
Caringは快適性、安心感、Cleverは日常の使いやすさ、Creativeは斬新な発想、個性的なデザインを意味する。これはシトロエンが目指している「乗る人を優しく包み込み(Caring)、日常を賢くサポートし(Clever)、個性的なデザインで生活を彩る(Creative)クルマ作り」を象徴するキーワードだ。
2CVやDS、BXやエグザンティアに代表されるシトロエンは、コンフォートな乗り味、ライバルに先駆けてFFを採用した先進性、そしてユニークなデザインで知られている。それらは単に個性を追求した結果ではない。先に述べた企業理念の発露に他ならない。なかでも快適性のこだわりは、シトロエンならではの持ち味となっている。
最新のC5エアクロスは、シトロエンのフラッグシップ。「シトロエン史上でもっと広く快適で、ハイテクなSUVを作る」というコンセプトから誕生した。ひと足先にデビューした欧州市場での評価は上々で、「2026欧州カー・オブ・ザ・イヤー」の7ベストカーに選出され、販売も順調という。
日本仕様のラインアップは、快適装備を充実させた[MAX]と、ベーシックモデルの[PLUS]が35万円の価格差で選べる。MAXは最上級仕様のアドバンストコンフォートシート、LEDマトリックスヘッドライト、ブラックルーフ、アレルゲン除去フィルター付きエアコン、ヘッドアップディスプレイ、ステアリングヒーター、グリップコントロールとオールシーズンタイヤをすべて標準装備。メカニズム面でグレード間の差はないが、やはりMAXを選びたくなる。
実車を目にすると堂々としたプロポーションに圧倒された。ボディサイズは4655×1905×1710mm。先代モデルと比べて全長は155mm、全幅は55mm、ホイールベースは60mmも拡大している。ボディサイドを貫くシャープなラインが伸びやかさを強調。フロントマスクやボディサイドパネルの造形もSUVらしくタフさだ。一方でなだらかに弧を描くルーフラインや、リアを適度に絞り込んだキャビン造形など、仔細に観察すると繊細なスタイリングだと気づく。さすがシトロエンである。
具体的なCd値は公表していないが、エアロダイナミクス性能はハイレベル。新型の注目ポイントである「Citroën Light Wings」と呼ばれるウイング形状のリアランプは、デザインの面白さだけでなく、空気を整流し空力性能の向上にも貢献するアイテムと聞いた。
インテリアはのコンセプトは、「C-Zen Lounge」。企業理念に掲げる「乗る人すべてを柔らかく包み込む快適性」をテーマに、先進的な造形と、持ち味である良質なシートで仕立てている。
室内はリビングルームのような心地よさを追求し、やわらかい素材を用いるとともに、間接照明を意識した8色から選択可能なアンビエントライトが配されている。直線基調のインパネ中央には、ステランティス・グループ最大の13インチ縦型ディスプレイ「ウォーターフォールスクリーン」を配置。最新モデルらしくナビゲーション、メディア、車両設定、空調操作などの操作系が集約されている。最初は少し戸惑ったが、慣れると非常に使いやすく、視線移動も少ない。縦型なので地図の進行方向を長く表示できるのもありがたい。
シートはプレミアム感覚。試乗車のMAXは、前述のようにシトロエンが誇る「アドバンストコンフォート仕様」の最上級版だ。背もたれやサイドサポートに厚さ15mmものパッドを採用したシートの座り心地は最高。適度にソフトでしかも体をしっかりと支えてくれる。
フロントシートにはヒーター、ベンチレーション、マッサージ機能を備え、季節や走行シーンに応じたリラックス体験を実現している点が素晴らしい配慮だと感じた。
リアシートはちょっと高めの着座ポジションだが、頭上空間には余裕がありくつろげる。3分割でリクライニングが可能となっており、前倒しすると広いラゲッジスペースが出現。荷室はけっこうフラットで奥行きもあるので、車中泊にも使えそうだ。
メカニズムはステランティス・グループの最先端である。電動化に配慮したSTLA-Mediumプラットフォームが採用されており、独自のプログレッシブ・ハイドローリック・クッションを備えた足回りと組み合わせている。パワートレーンは1.2リッター直3ターボとモーターで構成する48VマイルドHV。システム出力は145㎰でWLTCモード燃費は19.4km/リッターをマークする。
走りは、生粋シトロエン・フィール。同様のメカを持つプジョー5008とは味わいがはっきりと違う。全体にシャープな印象の5008に対してC5はいい意味でおっとりとした性格である。足回りはきわめてしなやかでたっぷりとしたストローク感が印象的。リアサスペンションがビーム式とは思えない快適な乗り味だ。乗り心地のよさはクラストップ。シトロエンに対する期待を裏切らない。どこまでも走っていきたくなる。
パフォーマンスは実用十分。車重は1630kgだが加速力は頼もしく、もたつくことはない。アクセルをワイドオープンするとなかなかの速さを披露する。高速時の安定性も模範的。C5エアクロスはハイウェイクルーザーとしての適性も高い。
静粛性もハイレベル。市街地では頻繁にエンジンが停止しモーター走行するが、いつ止まって再始動したのかわからないほどだ。ただしオールシーズンタイヤの影響か、路面によってはややロードノイズが耳につくシーンもあった。
新型C5エアクロスは外見もなかなか見映えするし、ソファのようなインテリアの居心地もよく、走りの仕上がりも上々だった。この内容で価格が600万円を切るなら、なかなかお買い得ではと思えた。
