
ホンダ・シビックe:HEV RS/価格:465万9600円。シビックはFF世界最速のタイプRや、1.5ℓターボ+6速MTのRSを設定するホンダを代表するスポーティHB。e:HEV RSはプレリュードで話題の“S+シフト”を搭載したハイブリッド車。価格はガソリンRS比で約17万円高い。
2021年に登場した現行シビックe:HEVを初めてドライブしたとき、「これでマニュアルシフトができたらさぞかし楽しいだろう」と感じた。そして2024年にRSのガソリンMTが出たときには「このスポーティな走りを2ペダルで味わえたら、より間口が広がりそうだ」と思った。その欲張りな願いを叶えたのが、今回のe:HEVのRSである。
11代目シビックは、2022年にFF世界最速のタイプRを送り出したのを皮切りに、前述のガソリン車のRSなど、走りを磨いたモデルの積極投入によって、支持を伸ばしてきた。2025年の総販売台数は約1万6000台。タイプRとRSが人気を牽引している半面、ハイブリッドのe:HEVの販売伸び悩みが課題となっていたという。
e:HEVのRSはスポーティな走りと2ペダルのイージードライブ、そしてハイブリッドならではの燃費と環境適合性を高次元でバランスさせたグレード。シビックに注目するユーザーの潜在的なニーズに応えたニューモデルである。販売サイドでは、「e:HEVのRSは今後のセールスの主力。販売比率はシビック全体の55%を見込んでいる」と説明してくれた。
ポイントは、プレリュードに次いで採用された[ホンダS+シフト]である。2リッター e:HEVシステムによるリニアで力強い加速性能と、RSならではのスポーティな内外装、そして走りの実力を一段と進化させたうえで、新たな価値を提供するS+シフトをプラスすることで、楽しさと操る歓びを際立たせた。
S+シフトの制御やエンジン音はシビック専用にチューニングされており、プレリュードと比べても、よりエンジンの存在感を高める演出がなされていることは、ステアリングを握ってすぐに実感した。
スタイリングは基本的にガソリンMTのRSと共通。マットブラック仕上げの専用18インチアルミが存在感を主張する。車内は随所に赤のアクセントが配されたスポーティ仕様。こだわりはステアリングホイールだ。プレリュードと共通のDシェイプの小径タイプを採用。握り心地は格別。パドルシフトはメタル製で、乗り比べた標準のe:HEVの樹脂製よりも操作感がカチッとしていた。
ちなみにS+シフトは、仮想の8速トランスミッションを組み合わせたホンダならではのスポーツ技術。ドライバーの操作とクルマの応答がシンクロし、五感で感じる“意のままの走り”を最大化する。コンソール部のボタンを操作で起動し、どの走行モードを選んでいてもスポーツとS+シフトのコンビに切り替わる。
パワートレーンの制御には、ドライバーとシンクロするスポーツアダプティブ制御を採用。これは、さまざまなセンサーによりクルマの走行状況を推測し、コーナーが迫っているときには最適な仮想ギア段へダウンシフトするアーリーダウン制御とともに、コーナリング中にはギアをホールドする仕組みだ。また、エンジンと発電用モーターの緻密な連携により、アップシフトの際には瞬間的にトルクをダウンし、ダウンシフトの際には高める制御を実施。運転中は前後Gの鋭い変化が実感でき、完成度の高いDCTのようなキレのある回転数変化を実現している。
変速レスポンスについてはハイブリッドの特性を活かし、「高価なスーパースポーツ勢をもしのぐ応答時間の短さを実現している」というからたいしたもの。もちろん加速時にはステップ変速制御を行い、減速時にはレブマッチダウンを行うことで、人とクルマがシンクロする操る喜びを味わうことができる。
アクティブサウンドコントロールの調律も絶妙だった。マルチスピーカー化とともにシビック専用の音色とされている。ドライブモードに合わせて音量が変わり、S+にするとボリュームは最大になり、ドライバーに高揚感を与えてくれるという演出もある。
伊豆のサイクルスポーツセンターでのドライビングは心が浮き立った。期待どおりの楽しさだ。自ら積極的にパドルを操作してシフトチェンジしても、クルマにまかせてスポーティアダプティブ制御による走りを味わうのも、どちらも楽しい。ダウンシフトも気持ちいいが、アップシフトも小気味よく決まる。非常に自然で違和感はまったくない。クルマとの対話が存分に楽しめた。
足回りもまた絶品だった。専用のサスペンションとステアリングシステムが与えられており、軽快でダイレクトな操舵と挙動の一体感を実現している。具体的には、サスペンションダンパーの応答性、スプリングおよびスタビライザーの剛性の向上が図られた。
前後のコンプライアンスブッシュは液封からソリッドラバー化された専用仕様を装備しているし、タイヤもまた専用品である。ステアリングのトーションバーレートは、60%も引き上げられている。
これらの最適化やチューニングの効果で、ステアリングの切り始めから応答遅れがなく、思いどおりに操れるハンドリングと、高い接地感と安定感を実現していた。まさにイメージしたラインを正確にトレースしていける。
乗り比べた標準のe:HEVもなかなかの実力だったが、RSはさらに爽快で楽しく走ることができた。これなら多くの人がe:HEVのRSを選ぶに違いない。今後シビックの販売の主力モデルになっていくというのも十分に納得できる。
電動化とスポーツが見事に融合した、乗る人誰もがワクワクするクルマが誕生した。
