【Z世代の視点】「ホンダ・シビックe:HEV RS」は電動車なのにエンジンを感じる。S+シフトは「クルマ好き」を増やす、素晴らしい技術と実感!

シビックe:HEV/価格 466万円(編集部調べ) RSとは“ロードセーリング”の意味。1970年代の初代シビックにも設定されていた伝統のグレードだそうです。ターゲットユーザーは「操る喜び・実用性を両立したいスポーティ意向層」と教えてもらいました

シビックe:HEV/価格 466万円(編集部調べ) RSとは“ロードセーリング”の意味。1970年代の初代シビックにも設定されていた伝統のグレードだそうです。ターゲットユーザーは「操る喜び・実用性を両立したいスポーティ意向層」と教えてもらいました

S+シフトのRSに触れて、改めて考えたスポーティカーの理想像

 父の愛車はホンダ・シビックでした。子どもの頃、後部座席から眺めていた父の背中は、いつもどこか楽しそうで印象的でした。アクセルに対して素直に反応する軽さ、街なかでもキビキビと動くあのリズム感。クルマと対話しているような、そんな印象を子ども心に感じていました。それが私にとって、「クルマって楽しいものなんだ」と最初に気づかせてくれた原体験です。

リア

 そうした記憶があるからこそ、今回シビック e:HEV RSの試乗会に呼んでいただいたときは、少し特別な気持ちがありました。父が乗っていたあのシビックのハンドルを握ることはありませんでしたが、その血を受け継ぐ最新シビックに乗れる。自分にとっての原点を、いまのクルマで確かめられる機会だと感じたのです。

試乗前夜——ロードスターが教えてくれたMTの本質

 試乗会の数日前、私は「Mazda Spirit Racing Roadster 12R」を走らせていました。2,200台限定の6速MT車。都内から千葉方面へ向かう道中、自らギアを選び、クラッチを繋ぎ、エンジンの回転に合わせて操作を重ねていく。振動、音、そして加速の手応え。それらがダイレクトに身体へと伝わってくる感覚は、まさに「自らの手で動かしている」という実感そのものです。身体とクルマが溶け合い、意思疎通、あるいは「心を通わせている」とさえ思えるその一体感には、何ものにも代えがたい価値を感じました。

走り01

 でも、都内の道でMTはなかなか手強いです。ロードスターには坂道でブレーキペダルから足を離した後、約2秒間、自動的にブレーキ状態を保持してくれる「ヒル・ローンチ・アシスト(HLA)」が備わっていますが、それでも渋滞時の詰まった車間距離での坂道発進に、何度か「MTって、やっぱり大変だな」と感じる場面がありました。このジレンマは、MTを愛する人なら一度は感じたことがあるのではないでしょうか。そんな鮮烈なMT体験を引きずったまま、私はシビックe:HEV RSの試乗会へ向かいました。

S+シフトに感激——「リアル」という第一印象

 試乗コースは伊豆・修善寺のサイクルスポーツセンター。SPORTモードでS+シフトをオンにし、実際に乗り込んだとき、思わず口をついて出た言葉は——「これ、MTみたいだ!」。それが、シビックe:HEV RSに乗った最初の言葉でした。

華音さん01

セレクター

 とくに衝撃的だったのがダウンシフト時です。ブレーキを踏み込む瞬間、エンジン回転数がキュッと鋭く上昇する、ブリッピングの演出。そこに音と振動が重なり、「自分がギアを落とした」という確かな手応えが全身に届きます。数日前にロードスターで何度もやった、まさにあの感覚です。「アクセルをもっと踏みたい。」「コーナーをもっと攻めたい!」本能が反応しているような高揚感に包まれました。

 S+シフトは、e:HEVのハイブリッドシステム内に「仮想の有段トランスミッション」を構築するという大胆な発想から生まれています。シビックには8速の仮想ギアが設定されており、パドルシフトで任意に操作できます。さらにインパネ上の「S+ボタン」を一押しするだけで、瞬時にSPORTモードへ切り替えられるのは、シビック独自の機能です。通常のハイブリッド車が陥りがちな、エンジン回転だけ上がって加速感が追いつかない「ラバーバンドフィール」を解決するために、段階的な回転数変化を生む「ステップシフト制御」と、走行状況を読み取りコーナー手前でのギアホールド等を行う「スポーツアダプティブ制御」が導入されています。さらにアクティブサウンドコントロールが緻密なエンジンサウンドを届け、視覚・聴覚・触覚を同時に動かす。だから「リアル」だと感じたのです。

MT免許を持たない世代への「入口」と「教科書」

 AT限定免許が主流の今、変速という操作を自分の手でやったことがない世代が増えています。私自身もまだまだ練習が必要で、MT車を所有していなければ練習の機会もない——「上手くなりたくても、上手くなれない」というループに陥ってしまいます。

走り02

インパネ

 そんな私に、シビックe:HEV RSは思わぬ発見をもたらしてくれました。S+シフトをオンにして走っていると、システムが自動で変速する「タイミング」が、音と振動で身体に届いてきます。どの速度で変速するのが「正解」なのか——それが、走りながら自然と身体に染み込んでいくのです。頭で理解するより先に、体が覚える。私は年に一度、茂木サーキットでカートレースに参加していますが、この感覚はサーキットでも確実に活きると感じました。S+シフトは単なる「入口」ではなく、乗り続けるほどに運転が上手くなる「教科書」でもあるのです。

「いいとこ取り」こそが、新しいスポーティカーの形

 今回の試乗を終えて、私の中にある「スポーティカーの理想像」が、鮮明に見えてきました。私にとっての楽しさとは、思うがままに動いてくれること。自分の意思をそのまま表現させてくれるパートナーであることです。シビックe:HEV RSは、その感覚を驚くほど自然に引き出してくれる一台でした。

in Car

真横

 特筆すべきは、まさに「いいとこ取り」である点です。ハイブリッドでありながらMTのようなダイレクトな操作感を楽しめ、それでいて坂道発進のような特有の“クセ”に神経を磨り減らす必要もありません。運転の「苦労」だけを取り除き、純粋な「喜び」だけを濃縮して残した、「この時代の回答」だと感じました。

 さらに、このクルマは「誰にでも開かれている」という間口の広さがあります。優れた燃費と速さはそのままに、走りの楽しさだけが劇的に進化している。週末にワインディングを攻めたい人も、家族を乗せる人も、誰もがそれぞれの形でハンドルを握る楽しさを分かち合える。こうした「全方位に応えるスポーツ」は、ありそうでなかった新しい形です。  電動化の時代に「操る喜び」が消えるのではないかと危惧していた人たちへ、ホンダははっきりと可能性を提示してくれました。スポーティカーの理想像は、もはや一つではないのです。

 テクノロジーが進化しても、私が大切にしたい本質は、このクルマの中に確かに息づいていました。ハンドルを握りながら、あのとき見ていた父の背中に、少しだけ近づけた気がしています。

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イメージ

諸元

【プロフィール】
井口華音(いぐちかのん)/1993年生まれ。石川県出身。動画クリエイター。高校生の時にニュージーランドへ留学、高校卒業後アメリカの大学に進学。その後イギリスを拠点に海外情報や英語学習のノウハウを発言するYouTubeを開設。37万人近いチャンネル登録者数を誇る人気YouTuber。もともとクルマ好きであることから自動車のYouTubeチャンネルも併設し、英語も通訳もできる「喋れる」自動車ジャーナリストを目指して活動中

 

 

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