「オートモビルカウンシル」は時代を超えた名車の祭典。今年は名匠ピニンファリーナとレストモッドをフィーチャー

11回目を迎える今年は「ピニンファリーナ」の作品をテーマゾーンに展示。写真の1957年フィアット・アバルト750Record Enduroピニンファリーナ(速度記録車)は72時間/1万2000kmを平均165.37km/hで走行。見事に新記録を樹立

11回目を迎える今年は「ピニンファリーナ」の作品をテーマゾーンに展示。写真の1957年フィアット・アバルト750Record Enduroピニンファリーナ(速度記録車)は72時間/1万2000kmを平均165.37km/hで走行。見事に新記録を樹立

日本のクルマ文化の成熟を実感。多様な名車が集結

 今年のオートモビル・カウンシルで、主催者はテーマのひとつに「ピニンファリーナ」を選んだ。1930年にバティスタ・ファリーナがトリノに創業した名門カロッツェリアだ。テーマ展示ゾーンには5台のピニンファリーナ作品が並んだが、そのなかで少し異質だったのが、アバルト750の速度記録車である。

 1940年代からスケールモデル風洞を持っていたピニンファリーナは、地元のトリノ工科大学の協力を得て空気抵抗を最小化するデザインを追求。1960年9月にモンツァ・サーキットで数々の記録を打ち立てた。この経験を経てピニンファリーナは1966年から実車風洞の検討を始め、1972年にそれを完成。空力研究は現在でも同社の大事なビジネスだが、その初期のマイルストーンを記すのがこのアバルト750の速度記録車というわけだ。

フェラーリ01

フェラーリ02

フェラーリ03

 テーマ展示はさらに、250GT SWB、330GTC、288GTOというフェラーリ好きには垂涎の3台と、ランチア・ベータ・モンテカルロというラインナップ。3台のフェラーリのうち250GT SWBのボディ製作は、ピニンファリーナではなく、1950年代半ばからフェラーリのレースカーのボディを手掛けるようになったスカリエッティが担当した。ピニンファリーナのスケッチをベースに、スカリエッティが仕上げたデザインだと伝えられている。

 会期初日にトークショーを行ったデザイナーの中村史郎氏(日本クラシックカークラブ会長)は、「330GTCやランチア・ベータ・モンテカルロに見るエレガンスこそ、ピニンファリーナらしさではないか。スカリエッティ製ボディのフェラーリはそこが少し薄い」と語っていた。

 今回のもうひとつの主催者テーマが「レストモッド」だ。オリジナルに戻すレストアを超え、モディファイを加えて現代のクルマとして価値を高めるのがレストモッド。クラシックカーの世界の新潮流だ。そのテーマ展示には2台のランチア・デルタ・インテグラーレ、そしてポルシェ911、スバル・インプレッサが並んだ。

シンガー

 なかでも注目されたのがシンガーだ。テーマ展示の隣に自社ブースを構え、もう1台のモデルも出品していた。数年後まで売約済みと言われる、超人気のレストモッド・ブランドだ。

 シンガーはカーデザイナーからロック歌手になったロブ・ディキンソンが、2009年に米カリフォルニアに創業。大好きな964系の911を中心にレストアを始めたが、それだけでは満足できず、ボディやエンジンはもちろん、シート、メーターに至るまで、モダンにアップグレードしたモデルに仕上げるようになった。空冷911を現代基準の性能と質感で乗りたいというエンスージアストの望みに、元デザイナーとしての細やかなセンスで応えたことが、シンガーの人気を高めているのだろう。

デルタ01

デルタ02

スバル

 2台のデルタうち、デルタEVOはかつてデルタでWRC(世界ラリー選手権)を制覇したドライバー、ミキ・ビアシオンが主導して製作したもの。もうひとつのデルタ・インテグラーレ・フトゥリスタは、2016年にイタリアで創業したアウトモビリ・アモスというレストモッド・ビルダーの作品だ。どちらもデルタがWRCで活躍した往時を今に伝える。

 インプレッサは英国プロドライブが2022年に発表したもので、正式名称はプロドライブP25。97年WRCを制覇したインプレッサのWRカーを、それを開発したプロドライブがインプレッサの2ドアクーペをベースに再現したレストモッドだ。1997年のWRカーと同じく、ロータスやマクラーレンで活躍したピーター・スティーブンスがデザインを手掛けた。

 レストアとレストモッドの境界線は微妙だ。トヨタが出展したS800(通称ヨタハチ)のプロトタイプ、パブリカスポーツは、実車が現存しないので白紙から製作されたレプリカ。レストアとレプリカに境界線を引くのも難しいが、それも含めて、クラシックカーの世界が多様で豊かになりつつあることを実感できたのは、今回の大きな収穫だった。

看板

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