【日本車黄金時代】「1994 トヨタRAV4(SXA10G型)」は気の合う仲間やパートナーと楽しむ4WDの新たな世界を提唱した

初代トヨタRAV4(1994年5月デビュー)は、FFプラットフォームを基本にしたクロスカントリー4WD(現在のクロスオーバーSUV)の先駆。車名のRAV4は、Recreational Active 4wheel driveの略だった。当初は2ドアのモノグレードで販売ディーラー別にL(カローラ店用)とJ(オート店用)を設定していた

初代トヨタRAV4(1994年5月デビュー)は、FFプラットフォームを基本にしたクロスカントリー4WD(現在のクロスオーバーSUV)の先駆。車名のRAV4は、Recreational Active 4wheel driveの略だった。当初は2ドアのモノグレードで販売ディーラー別にL(カローラ店用)とJ(オート店用)を設定していた

楽しいことを堪能するフレキシブルビークルの誕生

「スーパー4WDって少しヘビーすぎて、どこに行くにもワークブーツを履いているようでちょっとね」
「1BOXはちょっとオジンくさい。もっと年をとってからつきあえばいいんじゃない?」
「ステーションワゴン? いいんだけど、オレ、まだそれほど落ち着いたふりをしなくてもいい年齢だし、もっとパッと気分を外に向けて付き合えるクルマがいい」
「もちろんスポーツカーも悪くない。でも中古のポルシェを無理して買うのなんかいやだし、ロードスターもいいけど、楽しみの守備範囲が狭くなっちゃう気がする……。それにスポーツカーって、年をとってからも乗れるし、ポルシェなんかそのほうがカッコいいよね」
「若いときにしかできないことはいろいろある。クルマもそんな基準で選びたい」

 想像で勝手に書いたセリフだが、こんなセリフに同感してうなずいてくれる若者は少なくないと思う。若いときって、なんでもやってみたいものだ。ひとりでも、ガールフレンドと2人でも、あるいは友人たちと一緒に……いろいろな楽しみをいつも追いかけていたい。ボクだってそうだった。

フロント

リア

 そんなことに思いを巡らせていると、RAV4というクルマがだんだん側に近づいてくる。そう、RAV4は肩から力を抜いて、でもいまを思い切り楽しみたいと思っている若者たちが求めるクルマのかたちを、かなりうまく具体化している、とボクには思えるのだ。

 RAV4は、タフなクロスカントリーをこなす走破力を持つ4WDでありながら、若い人たちにとって大切な楽しみのひとつであるファッションとの相性がいい。ソフトスーツなら難なくマッチするし、ディナージャケットで乗っても、若々しくカジュアルに装えば不釣り合いなことはない。RAV4は、そんな幅広いキャラクターを持っている。

 ちょっとファニーで、ちょっと優しげな表情のRAV4は、不必要な威圧感と不快感を周囲に抱かせない。それでいて、「特別なクルマ」というアピールは十分にある。いろいろな意味で、人と社会に優しくなじむクルマを求める声が強くなるいま、その流れの中でRAV4の表情の柔らかさとアピール度のバランスは巧みだと思う。

 サイズは、全長×全幅×全高3695×1695×1655mm。立体駐車場には入らないが、このコンパクトなサイズは使いやすい。短いオーバーハングと5mの最小回転半径の組み合わせがもたらす取り回しのよさも魅力だ。

 RAV4は、最近のクルマとしてはフロントスクリーンの角度が立ちぎみである。正面から見たときのグリーンハウスの絞り込みは少ない。全高も高めだ。これは見た目のカッコよさよりも、乗ったときの居心地のよさを狙った結果だろう。スタイリッシュな若い人たちの夢を乗せて走るRAV4であれば、もうひと息、スタイリング重視のデザインでもよかったのでは、という気がしないでもない。しかし、あえて機能面にプライオリティをおいたこのデザインが、時代に沿った新しい意識を密かに刺激し、RAV4に斬新なイメージを付与しているようにも感じる。

インパネ

室内

 キャビンはなかなか快適だ。後席のスペースはそう大きなゆとりはないが、それでも165㎝程度の乗員が4名なら長距離も十分にこなせる。前席は頭の周囲のゆとりもたっぷりあるし、乗降性のよさもうれしい。4WD車というと、フロアが高くて乗降性はよくないというイメージが頭をかすめる。だが、RAV4にはその心配は不要だ。シート高は無理のない設定で、ほとんど乗用車感覚で乗り降りできる。いや、深いサイドシルに低いシートの乗用車より、むしろ自然体で乗り降りできるといってもいい。

 シートはいろいろなアレンジが可能だ。ただし4名乗ったときの荷物スペースはごく小さい。とくに前後2枚のデタッチャブルサンルーフを外してリアゲートのハンガーに掛けると、狭い荷物スペースがさらに圧迫され、まともな空間は残らない。

 ところでこのツインサンルーフだが、外すと確かに気持ちがいい。しかし、着脱作業がけっこう面倒くさい。これはちょっと問題だろう。これからのRVには日差しや風との触れ合い、つまりオープン感覚への要求度はいっそう強まっていくに違いない。あくまでも簡単に、気分に応じですぐオープン/クローズの使い分けができるような装備をユーザーは望んでいるように思う。

RAV4は軽量設計。幅広いシーンに似合う4WDを目指している

 RAV4のウェイトは、MT仕様で1150kgしかない。これはミドルクラスのFFモデルとほぼ同じだ。モノコックボディを採用したことが軽量化できたいちばんの理由だろう。RAV4の4WD化は、あくまでも遊びの行動半径を広げるという意味合いの4WD化である。性格的には、オンロード4WD車とオフロード4WD車の中間的な位置づけと考えればいい。酷使に耐える頑健なフレーム式より、軽量なモノコック式のほうが正解だとボクは思う。

 トヨタはRAV4を「フレキシブルビークル」と呼んでいる。もちろん幅広いシーンに適応できるキャラクターを指してのことだ。ボクは、その走りにフレキシブルなキャラクターをいちばん感じた。

メカニズム

 エンジンは2リッター4気筒の3S-FE型で、135ps/6000rpmの最高出力と、18.5kgm/4400rpmの最大トルクを発生する。試乗車はこれに5MTを組み合わせていた(もちろんATもある)。走りの感覚も乗り味も、ほとんど乗用車的だ、

 エンジンの出力は必要にして十分であり、走りは活発である。とくに4000rpm以上の高回転域での走りにはスポーティな切れ味も感じられる、4000rpm以上になると、エンジンは吠えはじめるが、それと同時にパワーカープはステップ的に上昇し、力強い引っ張りを見せる。これはオンロードでの走りの感覚を一面的には楽しいものにしているし、砂利道をラリーライクに高速で飛ばすような状況でも同じようなことがいえる。しかし、低速トルクに厚みがないのは弱点である。この種のクルマのエンジンには、やはり低速トルクに厚みがあることが必要条件だ。高回転域のパワーの伸びはもちろん気持ちがいいが、それはあくまでも低回転域の性能を十分に確保してからのものであってほしい。

メカニズム02

 RAV4の軽量化は燃費のよさにも結びついているが、実用域の性能をもっと徹底して追っていれば、いっそう印象的な好燃費を獲得できただろう。RVモデルにしても、時代の流れに沿うことは必要だ。燃費はその中でも、重要項目のひとつである。RAV4はこの種のクルマとしては非常に軽量であり、Cd値にしても0.386と最高レベルにまとめている。つまり優れた基本性能を持っている。

 一般路での乗り味は実にいい。へたな乗用車よりゆったりとしている。そして不整路での乗り心地、走破性もいい。よほどハードでラフな走りを強要しない限り、足は滑らかに路面を追従し、バランスよく凹凸を乗り越えていく。悪路を飛ばしてサスペンションがフルストロークしたときの、とくにリア側からの突き上げ感というかショックの伝わり方は少し直接的ではあるが、RAV4のキャラクターを考えれば、これは許されるだろう。

オプション

サンルーフ

 なお、試乗車にはリアにオプションのトルセン式LSDを組み込んでいたが。多くの場面で有効だった。と同時に、サバイバル的な性能のよしあしはさておいて、RAV4は常識的に遭遇し得る悪路や低μ路に対して、十分な走破性を持っているとも報告しておく。

 ハンドリングとクルマの挙動がまた、乗用車的である。初めてこの種のクルマに乗る人でも、短時間でなじむことができるだろう。RAV4は街からハイウェイ、ハイウェイからワインディングロード、ワインディングロードからオフロードへと、走るシチュエーションが変わっても、ごく自然にその変化についていく。突出した性能は持たないが、どんな場面に出会っても無難にそれをこなしてしまう。

 トヨタはRAV4をフレキシブルビークルと称している。活動的な若い人たちにとっては、確かに「なんでも、どこへでも、それも気負いなくつきあってくれるクルマ」だといえる。新しい価値観で作られたクルマに触れるのは楽しい。RAV4は、世界中で新鮮なムーブメントを巻き起こすに違いない。
※CD誌/1994年7月10日号掲載

表紙

諸元

 

SNSでフォローする