※本記事は雑誌『CAR and DRIVER』(2025年7月号)の巻頭コラム「from Editors - カー・アンド・ドライバー編集部の視点」より抜粋したものです
究極のパフォーマンスの追求とは何か。それは与えられた資源と時間の中で、最大限を引き出すということであり、この本質はスポーツやゲーム、そしてビジネスの世界でも同様である。クルマづくりもまた同じであるが、中でもモータースポーツはその象徴であり、勝利という目標をクリアするために、あらゆる努力がなされている。そして、そこで得られたノウハウや結果を、次なるクルマづくりへとフィードバックされ続けている。
今月号の巻頭企画「メルセデスAMG&BMW Mを知る」は、私たち恒例の「あらためて知る」という大テーマのもとに考え出されたものだ。モータースポーツ活動に積極的であり、ハイパフォーマンスモデルの代名詞ともいえる2大ブランドを取り上げ、各々の現在地と今後について掘り下げた。
筆者は、メルセデスAMGについては2019年式C63を所有していた時期がある。この業界に戻る前のことである。W205型のメルセデスAMG C63は、最も優秀な実用車の1台といえるメルセデス・ベンツCクラスのボディに、超高性能な4ℓ・V8ツインターボエンジンを載せ、暴力的ともいえる最高出力476㎰、最大トルク650Nmものパワーを発揮するクルマだった。
が、日常使いでは実に快適で、19㌅のタイヤ&ホイールによって乗り心地こそやや硬いものの、小さめなボディサイズもあって、取り回しに困るシーンは皆無。先進安全装備やADASも優秀で、渋滞時にも疲れしらずだった。思い返しても大変使い勝手のいい、満足いく1台だった。
BMWについてはこれまで5台所有してきたが、そのうち3台はMスポーツ、のこり2台はXラインとラグジュアリーいうグレードであって、いわゆるMモデルについては、試乗した経験はあったが、1台も所有したことはない。個人的には、BMWはどのモデルに乗っても「BMW」である、と感じている。SUVだろうが、FFだろうが、4WD(xDrive)だろうが、どれに乗っても「BMWらしさ」の共通項は他ブランドに比べても、とても明確に感じられるのだ。
なので、現行型M3を購入検討した時期もあったが、「普段乗るにあたってここまでは要らない」だった。ちなみにこれは、C63を手放した最終的な理由も同じであったことを付け足しておく。
しかし、ごく一部のスペシャルモデルを除いて、メルセデスAMGにはいかにハイパフォーマンスであろうが、それによって日常使いに支障をきたすことはほぼない。むしろ、その本物のパフォーマンスをラグジュアリー感の演出のひとつとして活用しているようにもみえる。一方、Mモデルについては、ストイックさを感じるほどハードな存在である。
ラグジュアリー感もあるが、あくまでも本拠地はレーストラックだ、とも感じられるのが、Mモデルの特徴であると思う。どちらを優劣として語るものではないが、これが筆者による両ブランドのクルマに対する印象だ。
そして、ここで少し横に目を向け、注目してほしいのはALPINAの存在だ。メルセデスAMGが日常もレーストラックも万能にこなす存在だとすれば、BMWのMとALPINAはその役割を分けているようだ。ことALPINAの日常使いにおける快適性は、誰もが口を揃えて「感動」の一言を発するほど、確立された存在だ。そんなALPINAも2025年末をもってひとつの区切りを迎えることになった。
究極のパフォーマンスのもうひとつの形、というにふさわしいユニークな存在だった現・ALPINAのラストイヤー。これぞ、歴史的な一幕である。
文/山本善隆(CAR and DRIVER / FM STATION 統括編集長)
<プロフィール>やまもとよしたか/1980年東京都生まれ。ITコンサルティング会社、自動車Webメディア企業、広告会社を経て、マーケティング会社にて企業の戦略立案・事業開発支援業務に従事後、2020年に独立。2021年より現職。クルマを運転する時間が一日の中で最も好き。1995年以降は大のF1ファン。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員
▼本誌『CAR and DRIVER』(2025年7月号)の詳細はこちら
https://www.caranddriver.co.jp/book/95337/
