※本記事は雑誌『CAR and DRIVER』(2026年2月号)の巻頭コラム「from Editors - カー・アンド・ドライバー編集部の視点」より抜粋したものです
2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤーが決定した。本賞はSUBARUフォレスターで、2位のHondaプレリュードと熾烈なトップ争いを繰り広げた。下馬評としてもこの展開は少し前から囁かれていた。よって両陣営共に対抗意識もあり、賞レースに対する意気込みも強かった。事実、選考委員を意識した取材機会もあった。しかしそれは、純粋に商品理解を促すとともに、実際の体験機会を提供するという広報活動である。
選考委員からすれば、評価をするうえでより正しく理解しておきたい、と思うのは当然である。したがって、試乗会などの取材機会があれば、積極的に参加する。これは必然のことだ。一方で、メーカー側としてもより魅力を感じてもらいたい、あるいは正しく理解してもらいたい、だからこそ広報活動に力を注ぐのも当然のことである。
玉石混淆の情報が溢れかえり、価値観も多様化している現代において、何かの賞を獲ったから売れる、有名になる、とは限らない。しかし作り手、開発者視点でいえば、販売台数というひとつのKPI“だけ”にとらわれず、“価値あるクルマ”として認められたいという思いもある。社内事情でみても、そんなエンジニアたちの声を無視するわけにもいかない。これぞまさに広報部門が担う“パブリック・リレーションズ”の世界であり、自動車メーカーという大企業内における“力学”のひとつでもある。
世間ではいまだにCOTYは接待漬けの出来レースだと揶揄する輩もいるようだが、それは本質を見誤っているどころか、見識が狭い、あるいはシンプルに想像力が足らなさすぎる。60人もの選考委員がいて、ほぼすべての選考委員がほぼすべてのクルマを試乗し、それぞれを評価している。これだけでも大変なことだということは想像に難くないだろう。技術重視の人もいれば、動的性能重視の方もいる。
あるいは生活者視点や、いちクルマ好きの視点の方もいる。これだけ多彩な背景と知見をもつ60名がいて、出来レース化できるわけがない。レースであれば1等賞は獲りたい。獲らなければならない。けれど、それだけがすべてではない。COTYでいえば、10ベストカーに選ばれる。これこそ、価値あるクルマであることの証なのだ。
すでに2026年の賞レースは始まっている。さっそくBYDがPHEVのシーライオン6を発表し、巷でも話題になり始めている。これからTVCM含め、宣伝活動も積極化していくそうだ。さらにはJMS2025で発表された軽BEVも控えている。
国産勢でも2025年に発表されたものの、2026年に発売予定の期待のモデルが多数ある。新たな章の幕はもう上がっている。
紙幅が尽きつつあるのだが、なぜ今月の特集テーマが「ランボルギーニ」であるのかに触れておかねばならない。正直、以前のフェラーリ特集が大変好評だったこともあるのだが、ここ数年ランボルギーニは“気になる存在”だった。私がこの仕事に本格的に関わるまでこのブランドは“怖い存在”だった。しかし、実際に触れられる機会が増えたことで、ある時からその印象は“畏怖”から“畏敬”へと変化した。そう、これは単に私自身が無知でしかなかっただけのことだったのだ。
だからこそ、この特集は絶対にやらねばと思っていた。読者の皆様のため、自らの見識のため、最新のランボルギーニを正しく知り、その魅力について理解し、そして共有したかった。それがようやくできたという満足感をもって、いまこの原稿を書いている。あらためて知る、というアプローチ。これはまだしばらく続くことになりそうだ。
文/山本善隆(CAR and DRIVER / FM STATION 統括編集長)
<プロフィール>やまもとよしたか/1980年東京都生まれ。ITコンサルティング会社、自動車Webメディア企業、広告会社を経て、マーケティング会社にて企業の戦略立案・事業開発支援業務に従事後、2020年に独立。2021年より現職。クルマを運転する時間が一日の中で最も好き。1995年以降は大のF1ファン。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員
▼本誌『CAR and DRIVER』(2026年2月号)の詳細はこちら
https://www.caranddriver.co.jp/book/108573/