※本記事は雑誌『CAR and DRIVER』(2026年6月号)の巻頭コラム「from Editors - カー・アンド・ドライバー編集部の視点」より抜粋したものです

鈴鹿サーキット内にある[Honda RACING Gallery]に集う人々をみると、とにかく年代のバリエーションが広いことがわかる。少なくとも特定の世代に偏っているようには見えなかった。つまり…である
今月号の特集テーマは「いまこそディーゼル!」となかなかに渋い。トルクがあってパワフル、とかその時点で玄人好み。もちろん、経済性コンシャスな方にも燃料費が比較的安い軽油を燃料とするディーゼルエンジンは、ぜひオススメしたい選択肢であることには違いない。いずれにせよ、地味、である。
しかし、今回はそれをあえて選択した。自身もディーゼル車を所有して、約4年経つのでそれなりに経験を積んだつもりだ。メリットを挙げると、月並みだが「燃費」がいい。そして、とにかく長距離ドライブで「疲れない」。この実用性、くわえてエンジン車ならではの可用性の高さはピカイチである。
一方で、ドライバビリティだけみれば、電動車のほうが明らかにいいと思っているのも事実。だが、現時点で総合的に見れば、マイルドハイブリッドシステムを搭載したディーゼル車を選ぶことは最高の選択肢だと思っている。
そして、拙速なBEV推進が陰りを見せ、電動化トレンドが踊り場にさしかかったいまだからこそ、ディーゼルのよさと魅力を見つめ直しておくべきだと考えた。これが今回の特集を決めた背景である。
さて、当コラムの本題に入ろう。2026年に入って、あらためて確信したことがある。それはなにかというと、若者は「クルマ離れ」などしていない、ということだ。もともと持論として、クルマ「離れ」という、クルマに「興味を持つのは当たり前」という前提が感じられる表現は好きではなかった。
クルマのサブスクサービスを展開するKINTOが3月に発表した調査レポート[【2026年版】Z世代のクルマに対する意識比較調査]によると、「Z世代の『クルマ離れ』、都内在住の67.6%、地方在住47.6%が自覚あり、地方は2022年比で2倍超に拡大」というヘッドラインがあった。これだけ見れば、ほらクルマ離れが進んでいるじゃないか、と捉えられると思うが、それは本質的ではない。これはあくまでも現時点での若者たちの生活実態として見たときの「買える・買えない」という判断の結果でしかない。
一方でこのようなデータがある。「都内の6割以上、地方の7割以上が『将来的にクルマがほしい』と回答」というデータだ。実に矛盾しているではないか。要するに、「いまはほしいけど買えないし、家族のクルマがあるから我慢できる。けれど、いつかは自分のクルマがほしい!」ということではないか。つまり、「離れ」ているのではなく、「近づけていない」というように捉えることこそが、現象事実の本質ではないだろうか。
今年1月、東京オートサロン会場には若者が溢れていた。もちろん、若者だけが圧倒的な数だったとはいえないが、相当数いたと思う。そして、F1日本グランプリが開催された鈴鹿サーキットでも、若者、そして子どもの姿が多く見られた。
そもそも、この時代において、年代で区切って語るのもどうかと思う。何歳だって新鮮な気持ちを持って新しいことはしたいし、逆に生まれた年月以前のことを懐かしむことだってすればいい。何歳だろうと、好きなものが好き。それでいいじゃないか、と。男だから、女だから、というジェンダー論がNGとされる現代。それをいうなら、若いんだから、いい年なんだから、というのもNGとなるはずだ。
あらためて言い切っておこう。「若者のクルマ離れ」など存在しない。スマホの台頭、価値観の多様化、物価上昇と経済の停滞……。「売れない言い訳」には枚挙にいとまがない。要は単純に時代の価値観の変化でしかないのだ。そして現在の若者たちの中に、クルマが好きな人が大勢いるのも紛れもない事実であるのだから。
文/山本善隆(CAR and DRIVER / FM STATION 統括編集長)
<プロフィール>やまもとよしたか/1980年東京都生まれ。ITコンサルティング会社、自動車Webメディア企業、広告会社を経て、マーケティング会社にて企業の戦略立案・事業開発支援業務に従事後、2020年に独立。2021年より現職。クルマを運転する時間が一日の中で最も好き。1995年以降は大のF1ファン。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員
▼本誌『CAR and DRIVER』(2026年6月号)の詳細はこちら
https://www.caranddriver.co.jp/book/115925/
