※本記事は雑誌『CAR and DRIVER』(2025年9月号)の巻頭コラム「from Editors - カー・アンド・ドライバー編集部の視点」より抜粋したものです
自動車の販売価格は上がり続けている。政府統計によると、2004年の軽自動車の販売価格平均は101万3250円。20年後の2024年は163万0292円となり、約1.6倍もの増加となっている。売れている車種の違いはあるとはいえ、小売物価統計調査としての全国平均であるから、支払う金額としての金額が上がっていることには違いない。
普通自動車を過去10年でみると、2024年が357万1903円だったのに対し、2014年は283万9463円だったので、約1.26倍の増加。そう、かつて200万円台がクルマ選びの中心価格帯だったのが、たった10年でそれが300万円台に跳ね上がっているのが数字でも示されている。
そこで、「300万円台のクルマ選び」を今月号の特集テーマとして、カー・アンド・ドライバー編集部と世代の異なる3人の自動車ジャーナリストを交えて、ワイガヤ会議を実施することにした。そこでの会話の内容とともに、独断と偏見ながらもそこでピックアップしたモデルをまとめて紹介することにした。
300万円台ともなると、その選択肢は一気に広がってくる。価格帯だけでみれば、国産車中心となってくるのは必然、でもそれではつまらない。少しオーバーする価格帯もあるものの、個性的なチョイスに輸入車は欠かせないからこそ、真っ先に会話が盛り上がる。
輸入車で最近気になったのは、アルファロメオ・ジュニアである。グレードは「コア」は420万円と少々予算オーバーになるが、それを許したくなるほど、シンプルにカッコいい。発表後すぐにディーラーに赴いたものの、コアは秋以降のデリバリーとのこと。すぐ手に入るならと思ったのだが、少し残念。
一方、国産車で再注目しているのが、マツダ3。マイルドハイブリッドのガソリンか、ディーゼルか。いずれも約280万円程度であり、個性的かつ流麗なデザイン、そしてワンランク上の質感が手に入る。少し浮いたお金で何をするか、カスタムするもよし、旅行に行くもよし、クルマのある人生の楽しみ方は、人それぞれである。
そして、忘れてはならないのはBEV。とくに輸入車BEVのバリエーションは豊富だ。補助金ありきにはなるが、300万円台ないし200万円台で手に入るモデルがでてきた。BYDやヒョンデの低価格モデルが話題になる一方で、粛々と販売実績を伸ばし続けているのがテスラだ。
今年に入ってからテスラのキャンペーン攻勢が凄まじい。在庫車において5年ないし3年間の充電無料(現在は終了)を打ち出したかとおもえば、春からは大幅な価格調整(モデル3)、そして7月からは金利ゼロ(モデル3、モデルY)も加わった。モデル3については、東京都であれば300万円台で購入できる計算となるわけで、これは大いに気になる選択肢となる。
ランキング上位の「売れているクルマ」から見ていくのもよいが、やはり注目すべきはあくまでも「魅力的なクルマ」である。ただ、私たちも気をつけているのは、売れているクルマだからと目をそらしてしまうことは避けたい(事実、いま私自身が最も気になっているクルマは、トヨタ・カローラクロスGR SPORTである)。
しかし、売れているがゆえに手に入りにくい、というジレンマもある。だからこそ、「いま売れている」ではない候補をあげる癖が染み付いてしまったことは否めない。
あらためて、クルマ選びは本当に難しい、そして悩ましい。けれど、きっと永遠にやめられない、これはクルマ好きにとって最高に楽しいひとときである。
文/山本善隆(CAR and DRIVER / FM STATION 統括編集長)
<プロフィール>やまもとよしたか/1980年東京都生まれ。ITコンサルティング会社、自動車Webメディア企業、広告会社を経て、マーケティング会社にて企業の戦略立案・事業開発支援業務に従事後、2020年に独立。2021年より現職。クルマを運転する時間が一日の中で最も好き。1995年以降は大のF1ファン。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員
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