【最新スーパースポーツ試乗】公道走行も可能なサーキット専用マシン、フェラーリSF90XXの1030psパワーをフィオラノで解き放った!

フェラーリSF90XXは公道走行も可能なサーキットマシン。サーキット専用XXモデルの性能をロードカーで表現した特別な「跳ね馬」。パワートレーンは4リッター・V8ツインターボ(797ps/804Nm)と3基のモーター(総合233ps)で構成。システム出力は1030psに達する。生産台数は799台のストラダーレと、599台のスパイダーの限定1398台

フェラーリSF90XXは公道走行も可能なサーキットマシン。サーキット専用XXモデルの性能をロードカーで表現した特別な「跳ね馬」。パワートレーンは4リッター・V8ツインターボ(797ps/804Nm)と3基のモーター(総合233ps)で構成。システム出力は1030psに達する。生産台数は799台のストラダーレと、599台のスパイダーの限定1398台

サーキットを安全に速く走るコツ、それは限界点の把握

 私にとって、サーキット走行は本質的に怖いものである。何しろ、今日のスーパースポーツは、いたって簡単に200km/hを超える。したがって、何かあればタダでは済まない。だからといって無難に済ませてしまえば後悔が残る。そもそもクルマの評価ができない。

 安全かつ確実に、でも限界ギリギリの性能を引き出すにはどうしたらいいのか。そのほとんど唯一の答えが、クルマの限界点をわかりやすく知らせるロードインフォメーションにあると私は信じている。

リア走り

 自分がいま、崖っぷちにどれだけ近づいているのか。もしくは、崖っぷちからどれだけ離れているのか。これさえ正確に認識できれば、奈落の底に落ちる心配はない。サーキット走行もこれと同じである。自分のペースがクルマの限界にどれだけ近づいているのかを正確に理解していれば、スピンしたりコースアウトしたりすることはない。つまり、それだけ安心して「崖っぷち」に近づけるということ。だから私は、ロードインフォメーションの量と質が、スポーツカーにとって重要な性能のひとつであると捉えている。

SF90XXは饒舌かつ圧倒的なパワーでドライバーに語りかける

 システム最高出力1030psを誇るV8ツインターボ+モーターのPHEVスポーツ、フェラーリSF90XXストラダーレの国際試乗会は、ある意味でロードインフォメーションの量と質を試すのに絶好の環境で行われた。試乗会が行われたのは北イタリアが冷たく凍え始める2023年11月初旬。フェラーリのテストコースとしても名高いフィオラーノ・サーキットは、この日、前日からの雨で路面がじっとりと湿っていた。基本的にトラック専用マシンのモンスターと対峙するのに、これほど「おあつらえ向き」なコンディションはそうはない。

 私の不安などお構いなしに、先導車を操るフェラーリのテストドライバーは勢いよくコースインしていった。私に選択の余地はない。彼との距離を1㎝でも縮めるべく、スロットルペダルをフロアまで踏み込んだ。

ドリフト

 想像と違って、そんなときでもSF90XXはタイヤを空転させることもなければテールを左右に振り出す素振りも見せない。まっすぐに、けれども恐ろしい瞬発力(0→100km/h加速データは2.3秒)を発揮しながらメインストレートを加速していった。

 クルマの感触を確認するひまもなく、目の前に1コーナーが迫ってくる。さすがにこのときは丁寧にブレーキングしてステアリングを切り込んだが、先導車はもうS字コーナーを目指して加速を始めている。私は、またしてもスロットルペダルを深々と踏み込んだ。

 その瞬間、目の前に「重力の落とし穴」が現れて、そこにクルマもろとも吸い込まれていくかのような圧倒的な加速を味わった。微低速でフルパワーを発揮すればタイヤが容易にグリップを失うのは当然のこと。そこでスタート時は頭脳明晰なトラクションコントロールが私に気づかれないように介入し、エンジンパワーを絞って最大限の加速度と安定度を確保してくれたのだ。一方で、車速がある程度、乗っていれば、そう簡単にタイヤがグリップを失う恐れはない。そこでSF90XXは、1コーナーの立ち上がりで初めてV8ツインターボと3モーター式PHEVシステムの底力を解放したのである。

スタイル

室内

 SF90XXで本当に素晴らしいのは前述したロードインフォメーションの質の高さ、そして量の豊富さにある。おかげで、1ラップ目のS字コーナーで早くも私はリアタイアが「むずかり始めている」ことに気づいた。そこから左にステアリングを切り込めば、フロントタイヤのグリップが抜けかける様子がステアリングから伝わってくる。しかも、そのどちらもが、実際にタイヤが滑り始めるはるか手前から私に注意を促してくれるのだ。これくらいたっぷりとしたマージンが与えられれば、私でも自信を持ってグリップ限界の直前まで右足を踏み込むことができる。「これならモンスターの正体も暴ける!」 そんな期待に、胸を膨らませていた。

 さらなる驚きは、フィオラノの裏ストレートに設けられた緩いキンクを通過したときにやってきた。高速でクリアするこのセクションではボディが軽く浮き上がるような感触が伝わってきて、これまでであれば強く減速していた。だが、SF90XXは強大なダウンフォースのおかげでタイヤの接地感が薄れない。これほど自信をもってフィオラノの裏ストレートをクリアできたのは、初めてのことだった。

リア

エンジン

 もともと「XX」はサーキット走行専用のフェラーリだけに与えられる特別なモデル名。SF90XXは、XXモデルでありながら公道走行も可能とされた点に最大の特徴があるのだが、いずれにしてもサーキットが本籍地であることに変わりはない。だからこそ、フェラーリはSF90XXに最高レベルのロードインフォメーションを盛り込んだのだ。ここにこそ、モータースポーツを知り尽くしたフェラーリの真骨頂が現れている。世界で最も「いい汗」がかける最高の1台である。
 圧倒的なポテンシャルを存分に引き出すことができるSF90XXの生産台数はストラダーレ(クーペ)799台、スパイダー599台。発表と同時に即座に完売したという。

フェラーリSF90XX主要諸元

カット

モデル=SF90XXストラダーレ
欧州価格=7DCT 79万ユーロ
全長×全幅×全高=4850×2014×1225mm
ホイールベース=2650mm
乾燥重量=1560kg
エンジン=3990cc・V8DOHC32Vツインターボ
エンジン最高出力=586kW(797cv)/7900rpm
エンジン最大トルク=804Nm/6250rpm
モーター最高出力=171kW(233cv)
バッテリー容量 kWh=7.9kWH
EV航続距離 km=25km
サスペンション=前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント:255/35ZRF20/リア:315/25ZRF20
駆動方式=4WD
乗車定員=2名
0→100km/h加速=2.3秒
0→200km/h加速=6.5秒
最高速度=320km/h

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