ランボルギーニの年間生産台数はおよそ1万台。だから「すべてのランボルギーニは希少性が高い」といっても間違いではない。その中でもとりわけ貴重なのがフューオフモデルである。なにしろ、生産台数は最大でも1モデルあたり30台程度。人気モデルともなると、モデルライフ中に1万台以上が生産される車種も登場するようになったランボルギーニ・ラインアップの中で、フューオフモデルはまさにケタ違いの希少性を誇っている。
昨年発表され、29台が瞬く間に完売となった「フェノメノ」も、そうしたフューオフモデルの代表といえる。カーボン製モノコック、それに自然吸気V12エンジンに3モーター方式のPHEVシステムを組み合わせたパワートレーンなどは、フラッグシップモデルのレヴエルト用をさらに磨き上げた専用品。そのシステム出力はレヴエルトを65㎰上回る1080㎰(!)で、スペックシートには0→100㎞/h加速2.4秒、トップスピード350㎞/h以上といった数値が並ぶ。
先ごろ発表された「フェノメノ・ロードスター」は、このフェノメノをオープントップ化したフューオフモデルの最新作。生産台数は15台とフェノメノよりもさらに少ない。価格はフェノメノのおよそ300万ユーロ(約5億5000万円)から500万ユーロ(約9億2000万円)へと跳ね上がる。希少性の点でも価格の点でも、現代の自動車産業界のトップに君臨する1台といって間違いない。
「それほど高価なクルマ、本当に売れるのだろうか?」と心配になった読者諸氏のために付け加えると、フェノメノ・ロードスターはフェノメノ同様、発表の段階ですでに完売。それも「ようやく15台を売り切った」というより「激しい争奪戦の末に15名の幸運な顧客が選ばれた」と表現したほうが正しい状況だったという。
なぜ、フューオフモデルはそれほどまでに人気なのか?
いくら「すべてのランボルギーニは希少性が高い」とはいえ、通算で数千台から1万台以上が生産されるとなれば、そこにある程度の普遍性というか一般性が考慮されるのは当然のこと。しかし、どんな顧客が購入し、どんな使われ方をされるかがあらかじめ想定できるフューオフモデルであれば、かなり思い切ったコンセプトを採り入れることもできる。
フェノメノ・ロードスターの場合がまさにその好例だ。いざというときのための簡易ルーフさえいっさい用意されず、いわば晴天専用モデルとされている。ただし、考えてみれば10億円に迫る貴重なモデルをわざわざ雨の日に走らせるとは思えない。それより「晴天専用モデル」とすることでしか得られないデザイン上の特徴を盛り込んだほうが、フューオフモデルを購入する顧客にとっては満足度が高いというものだ。
たとえば、スリークなエンジンカバー周りは、折りたたんだルーフを格納する必要がないオープントップ専用モデルだからこそ実現できたもの。ウィンドウスクリーンを取り囲むフレーム上部にデタッチャブル式ルーフを固定するための武骨な金具が見当たらないのも、その恩恵といっていい。
さらにいえば、サイドウィンドウの上部にはL字型の切り欠きが設けられている。この大胆なデザインも“晴天専用モデル”と割り切ったからこそ採り入れることができた。実は、これまでオープントップが用意されたランボルギーニのフューオフモデルのうち、たとえ簡易的でもルーフが取り付けられたのは初作のレヴェントンのみ。それ以降のヴェネーノ、チェンテナリオ、シアンの3モデルはいずれも“晴天専用モデル”とされ、サイドウィンドウはフェノメノ・ロードスターと同じL字型に切り欠いたデザインを採用している。つまり、このサイドウィンドウはランボルギーニ製フューオフオープンのトレードマークといっていい特徴なのだ。
フェノメノ・ロードスターのパワートレーンは実質的にフェノメノと共通である。1080㎰のシステム出力、0→100㎞/h加速タイムが2.4秒のスペックにも変わりはない。ただし、最高速度は「340㎞/h以上」に見直された。だがこの性能に不満を抱くオーナーがいるとは考えにくい。
それでも、たとえ超高速ドライブに臨んでもキャビンへの風の巻き込みを最小限に抑えるため、ウィンドウスクリーン上部のフレームが後方に向けて延長されたほか、フェノメノ・ロードスターの専用装備となるロールオーバーバーやエンジンカバーのデザインも、オープントップのエアロダイナミクスに最適化した形状とされている。
さらにいえば、フェノメノ・ロードスターは、モノコックから前後に伸びるサブフレームまで新設計したとされる。ちなみに、幸運な日本人オーナーのひとりがフェノメノ・ロードスターを購入したというから、その美しい姿を目の当たりにする日がいつかやってくるかもしれない。
