環境先進国スウェーデンを代表するボルボが、新型BEVを次々と投入している。
現在、日本で販売しているのはEX30とEX40の2シリーズだが、本国のメディアサイトを見ると、SUVだけで3モデルのほか、クロスオーバー、セダン、ミニバンなどを用意。その数は合計6モデルに上る。ここに新たに追加されたのがミドルクラスSUVのEX60である。
そのプレスリリースでは「航続距離、充電速度、性能、価格のすべてにおいて新たな常識をもたらす」と豪語。EX60に採用した新技術としてメガキャスティング、セル・トゥ・ボディ、コアコンピューティングの3点を挙げている。

新型BEVのニュースに慣れきった身には、取り立てて目新しい発想もテクノロジーもないように思えるが、ボルボにとってEX60は重大な進化を意味する。それは、クルマの基本となるプラットフォームから、エンジン車時代から引き継いできた考え方が、とうとう完全に消え去ったことにある。
たとえば、バッテリーセルをシャシーに直接埋め込む「セル・トゥ・ボディ」技術は、エンジン車のプラットフォームにバッテリーパックを積む従来の手法から完全に脱却したもので、スペース効率の改善やコストの低減に大きく貢献する。
コアコンピューティング・システムは主要なCPUを5つ程度にまで絞り込んでおり、無数ともいえるCPUを組み合わせた従来の電気プラットフォームとはまったくの別物。ソフトウェアの効率的な開発を促すとともに、ネットワーク経由でソフトウェアをアップデートするOTA(オン・ジ・エア)の本格的な運用を可能とし、自動車のSDV化を促進する。
大型のダイキャストパーツを用いることで部品点数の大幅削減や軽量化、コスト抑制などに効果があるメガキャスト自体はエンジン車でも利用可能な技術だが、EX60はメガキャスト前提でプラットフォームを開発することで大幅なコスト低減と軽量化を実現した。これもエンジン車プラットフォームからの脱却が大きく貢献したと見て間違いない。

結果としてEX60は、最大810kmの航続距離、わずか10分で最大340kmの航続距離を上乗せできる高速充電性(400kW急速充電器を用いた場合)などを達成。価格は最も低廉なグレードで1200万円以上(英国の場合)と高額だが、シンプルで質の高いスカンジナビアン・デザイン、それに乗員の体重などによって拘束力を可変させるマルチアダプティブ・シートベルトを初採用するなど、いかにもボルボらしい魅力が詰まったニューモデルに仕上がっている。
一昨年の秋には「完全電動化を実現する時期を後ろ倒しにする」と発表し、ボルボは世間を賑わせた。しかし、EX60のプレゼンテーションに姿を見せたホーカン・サムエルソンCEOは「ボルボの未来はBEVとともにある。エンジン車は一部市場のために残すだけ」と明言した。環境と安全を最優先するボルボの姿勢はEX60に象徴されているといってよさそうだ。
