※本記事は雑誌『CAR and DRIVER』(2025年2月号)の巻頭コラム「from Editors - カー・アンド・ドライバー編集部の視点」より抜粋したものです
イタリア車、略してイタ車に抱くイメージはどんなものだろう。オシャレ、美しい、情緒的、官能的、でも壊れる……。といっても、私は実際にイタ車を所有したことがないので、あくまでも勝手なイメージだ。最近のクルマについてはそうではないだろう(と信じたい)。いずれにせよ、魅力的な存在であるということは誰もが認めることだろうし、個人的にはもいつかは……と思っている。
そして、今月号(2025年2月号)の巻頭企画は「素晴らしき哉、イタリアン!」。2023年9月号に行ったテーマと同じながら、今回は切り口を全面刷新した。近年、私たちはカー・アンド・ドライバーというその名のとおり、カー(クルマ)だけでなく、ドライバー(人)にもよりフォーカスした企画をお届けしてきている。
前回はクルマ(イタ車)の紹介に終始していたが、今回こだわったのは「(イタリアに魅せられた)人」のストーリーを盛り込むことだった。
巻頭インタビューは、2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員長であり、株式会社カーグラフィックの代表取締役社長の加藤哲也さん。いまから2年前となる2023年、加藤さんが2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下、COTY)の実行委員長となり、まさかの同・副実行委員長への就任を打診されたそのときから、自動車文化の発展を目指したCOTY運営を一緒になって走り抜けてきた、おこがましいながらも同志であり、いわば恩人でもある。
雑誌『カーグラフィック』の誉れについて語る必要はないと思う。私にとっても少年時代にカー・アンド・ドライバーと共に愛読していた雑誌のひとつであり、そしてその名を冠したテレビ番組『カーグラフィックTV』は毎週録画して何度も見ていた。
その中で、最も印象的だったのが、加藤さんがフェラーリ412T2、12気筒エンジンを積んだF1マシンをドライブしていた姿だった。それを観た当時17歳だった自分にとって、これは強烈だった。なんの根拠もなく、いつか自分もF1マシンをドライブしたい、なぜかそんな夢を感じさせるものだった。
今回も特集企画のナビゲーターは九島辰也さん。加藤さんと九島さんは旧知の仲である。そして共通項は、根っからの「イタリア好き」であること。ふたりともイタ車オーナーであり、イタリアのさまざまな文化にも精通している。
誌面での対談はクルマの話に終始していただいたものの、取材中はもちろん、そもそも普段この方々と雑談するときの話題は彩り豊かである。決して知識をひけらかすようなことではなく、会話の随所に「使える」豆知識を散りばめてくれる。素直にありがたいし、そんなところがカッコいい大人だなと思う。
話は逸れたが、多くの人々がイタリアに魅せられるのはなぜだろうか。こと日本とイタリアには共通点が多いそう。南北に細い地形、四季がはっきりしていて、魚や野菜をよく食べる食文化の豊かさ、そして職人気質など、枚挙にいとまがない。逆にイタリア人の視点、在日イタリア商工会議所のダヴィデさんから見れば、日本にはまだまだ世界に発信されていない魅力にあふれた国だという。
共通点が多くあるがゆえ、無意識な親近感と共に、ポジティブな異質感と羨望感が織り混ざる、不思議な関係。もしかすると、これが多くの日本人がイタリアが作るモノに魅力を感じざるを得ない理由の根源なのかもしれない。
文/山本善隆(CAR and DRIVER / FM STATION 統括編集長)
<プロフィール>やまもとよしたか/東京都生まれ。株式会社カー・アンド・ドライバー 代表取締役CEO。ITコンサルティング会社、自動車Webメディア、広告制作会社を経て、マーケティング会社でさまざまな大手企業のマーケティング戦略の立案・推進、新規事業開発などのコンサルティング業務に従事。2020年に独立、2021年より現職。クルマを運転している時間が一日の中で最も好き。1995年以降は大のF1ファン。2022年より日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員
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