森永卓郎のミニカーコラム「ミクロペットのマツダR360クーペ」

ミクロペット・シリーズの位置付け

 

ミクロペットのマツダR360クーペ

ミクロペットのマツダR360クーペ サイドまで回り込んだリアウィンドウなど細部まで丁寧に再現している

 ミニカーには、コレクターを意識したミニチュアカーと子供向けの玩具の境界域に存在するものがある。その代表選手が、3年前に本欄で紹介したゼンマイ仕掛けのシュコー・マイクロレーサーだ。
 そもそもミニカーコレクションが文化としてきちんと成立する前は、より子供を重視せざるを得ないので、どうしても玩具の要素が強まってしまう。日本でも同様のモデルがある。フリクション・モーターを内蔵した大盛屋のミクロペット・シリーズだ。

森永卓郎さん似顔絵

もりながたくろう/1957年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。個人のコレクションを展示する"博物館(B宝館)"を、埼玉県・新所沢で一般公開中(毎月第1土曜日)

モーター走行をアピール

 1959年に日本初の大量生産ミニカー、モデルペットが発売されてから2年後の1961年にミクロペットは発売された。先行するモデルペットに対抗するために、子供にアピールできる特徴を持たせようと思ったのだろう。当時のミクロペットの売りは、ひと押しで「15mも走る」というものだった。
 ただ、フリクション・モーターを内蔵させた影響で、車内のシートやダッシュボードは省略されてしまい、16車種を展開したものの、コレクターからは、あまり相手にされなかった。
 写真は、ミクロペットのマツダR360クーペだが、これをみればおわかりのように、ボディの造形は極めて優れている。R360は、モデルペットも発売しているが、ボクはミクロペットのモデルのほうが好きだ。
 造形の優秀さに大盛屋も気づいたのだろう。ミクロペットからフリクション・モーターを外し、シートとダッシュボードを取り付けたチェリカフェニックスを後継モデルとして発売した。
 このチェリカフェニックス・シリーズの金型は、その後ダイヤペットに引き継がれることになる。つまり、ミクロペット・シリーズは、日本の標準スケールミニカーの源流のひとつとなったのだ。

ミクロペット第1号モデル、スバル360は高プレミアム価格

 ちなみにミクロペット・シリーズの第一号は、スバル360なのだが、なぜかこのモデルだけが、別格の扱いを受けていて、ずいぶん安くなってきたとはいえ、いまだに30万円くらいのプレミアム価格がついている。そのため、ボクはまだ入手できずにいる。
「子供のころに買っておけばよかったな」とは思うのだが、スバル360のモデルが発売されたとき、ボクはまだ2歳だったから、さすがにそんな判断はできなかっただろう。ただ、あきらめるつもりはない。いまの5分の1くらいの値段まで下がったら、スバル360をこのR360の隣に並べるつもりだ。

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