
ランサーEXターボ・インタークーラーは、三菱のスポーツイメージを牽引するモデルとして1983年11月にデビュー。1981年11月に登場していたターボモデルの進化版で、インタークーラーの装着で従来比25㎰/2㎏mアップの160㎰/22.0㎏mを実現。優れたパフォーマンスに一段と磨きをかけた。各部はWRC(世界ラリー選手権)に参戦していた欧州仕様2000ラリーターボと同様の仕上げ
ランサーEX・GSRターボのベースは、クリーンな3BOXのファミリカーだ。ところが、そのルックスには凄みがあり、誰の目にも「並のクルマではないな」と映る。とくに、インタークーラーへ外気を取り込む大型のオープニングは、WCR(世界ラリー選手権)を戦う“ラリー・ランサー”の雰囲気を見事に伝えている。
ドライビングポジションはいい。クリーンな視界が好ましいし、すべてのコントロール類は、ピタッと決まった位置にある。シートとチルトステアリングを調節すれば、まったく不満のないポジションが決められる。シートがまたいい。マルチジャスト式ではないが、体によくフィットする快適なシートだ。もちろん、ホールド性に優れている。
エンジンは空冷式インタークーラーをドッキングし、過給圧を従来の0.53㎏/㎤から0.66㎏/㎤に高めている。160㎰/5800rpm、22.0㎏m/3500rpmのパワー/トルクを引き出す。インタークーラー未装備車と比べると、パワーで25㎰、トルクは2㎏mのアップだ。
ギアボックスは5速MT。ギア比とファイナル比は、従来モデルと共通である。となると、当然だが、かなり強烈な加速ぶりだ。加速感は、豪快などというレベルを超え、荒々しいという表現がピッタリくる。
ハードなスタートにトライすると、リアアクスルが暴れ出し、まともにスタートしてくれない。ダッシュを決めたければ、丁寧なクラッチミートを心がける必要がある。後輪を暴れさせないようにスタートしてしまえば、こちらのもの。ただしギアリングはかなり低いので。シフトアップの忙しさは覚悟しておくことだ。
最高回転は5800rpm、レッドゾーンは6000rpmだ。以前のランサー・ターボは、レッドゾーンが6000rpmでも5400rpmあたりで、ぐっとパワーカーブが下降した。新しいエンジンは6000rpmプラスまで、有効パワーが持続する。したがって、シフトポイントは、タコメーターの指示どおりでOKだ。
100㎞/hは5速で3000rpm弱だが、ここからアクセルを踏み込めば、並のクルマの3速程度の加速を見せる。が、燃料をかなり食う。ターボをフルに利かせた山岳路では、6㎞/ℓを割ってしまった。
足回りの実力のほどを見よう。GSRにパワーステアリングを標準装備したのは正解だ。が、せっかくのパワーステアリングだが、切り始めのフィーリングが少々あいまいで、ロードフィールの伝達もいまひとつ。慣れが解決する範囲だが、残念である。
サス・セッティングはハード傾向だが、乗り心地は、平均的な舗装路ならとくに悪くはない。ステアリング特性は基本的には強めのアンダーステアだ。しかし、余裕のある駆動力のおかげで、ちょっとキッカケを与えてやればリアをアウトに振り出すことができる。テクニックがあれば、アンダーステアの強さはそう負担にはならないだろう。
問題なのが、荒れた路面での挙動である。きつい凹凸のあるコーナーを高速でパスすると、ステアリングが取られがちだし、リアが跳ねる。挙動が乱れるのである。平滑な路面の場合は、テールの流れはスムーズだ。いっこうに怖くないし、コントロールもしやすい。ただしリア側のロール剛性はできれば、少し高めてほしい感じがする。
インタークーラーを装着したランサーEXターボには、ハードサスペンション仕様が設定されている。フロントスプリングを少し硬くし、ダンパーを相当に強化したチューニングだ。このサスペンションと、欧州輸出仕様の2000ターボ用のクイックなステアリング・ギアボックスを組み合わせたクルマで、筑波サーキットを走った。サーキットを攻め込むと、ノーマル仕様よりずっと安定した走りを見せた。しかもファン・トゥ・ドライブだ。タイトコーナーへのアプローチで顔を出す強いアンダーステアを、ちょっとしたテクニックを使って消すのは難しくない。何よりもパワーオーバーステアのテクニックが自然に使えるのがうれしい。一方、ステアリングの重さはかなりのものだし、乗り心地はノーマル以上にハードだ。ノーマルサスのほうがトータル的にはバランスが上だった。
※CD誌1984年1月26日号掲載
【プロフィール】
おかざき こうじ/モータージャーナリスト、1940年、東京都生まれ。日本大学芸術学部在学中から国内ラリーに参戦し、卒業後、雑誌編集者を経てフリーランスに。本誌では創刊時からメインライターとして活躍。その的確な評価とドライビングスキルには定評がある。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)名誉会員
