※本記事は雑誌『CAR and DRIVER』(2026年5月号)の巻頭コラム「from Editors - カー・アンド・ドライバー編集部の視点」より抜粋したものです
LOVEという言葉を聞いて、何を連想するだろうか。日本語でかつ漢字で示す「愛」という言葉と、英語としての「LOVE」、そして再び日本語かつカタカナ表記の「ラブ」はそれぞれ同じようで微妙に違うように思う。ざっくりいえば、元の言語でもある「LOVE」はオールマイティであって、漢字の「愛」とカタカナの「ラブ」は重さ、あるいは深さが異なる表現、とでもいえるだろうか。今号の特集テーマは「LOVEなクルマたち」だが、ニュアンスとしては「愛」も「ラブ」も全部ひっくるめて「LOVE」としている。
そして、これはあと付けだが、1983年にTBS系列の金曜ドラマ枠で放送されていた『ふぞろいの林檎たち』という作品があった。ここで使われている“たち”が、まさに今回のテーマで使われている拡張表現のニュアンスに近いと思う。
要するに、LOVE≒好き(広い意味で)だとすると、その対象はただの複数だけでなく、多様な広がりがある、ということを意味しているのだ。
大変幸せなことに、自動車メディアでの仕事をしていると、本当にさまざまなクルマとの出会い、クルマに関わる人々との出会いがある。現在のカー・アンド・ドライバーの編集方針として、その誌名が示すように「人とクルマ」に関わるストーリーを届けることで、読者の方々に少しでも幸せな気分を感じていただきたい。そういった想いを持って誌面づくりに取り組んでいる。
いってみれば、クルマのある人生をウェルビーイングにすること、かもしれない。しかし、雑誌を通じてできることには限界がある。せいぜい、何かのきっかけの材料にしていただくことくらいだろう。でも、少しでも役に立つとか、楽しむとか感じていただけて、ちょっとした幸せを感じてもらえるのであれば、うれしいことこの上ない。
雑誌の役割は情報を伝えること、そしてその情報が未来永劫に国レベルで保管され、記録されること。いずれも機能的価値だが、今回チャレンジしたかったのは、情緒的価値を届けることだった。2026年3月号の特集「人とクルマの物語」を読んでくださった方から届いた言葉がひとつのきっかけでもある。それは「面白い」というシンプルな言葉。13人のクルマ好きの人たちを集めて、ただただ話をお聞きし、それをまとめた内容だった特集。これを「面白かった」といってくれた。
そして、ご出演いただいた方々からも、楽しかった、うれしかった、との言葉をいただくことができた。とてもうれしかった。だから、今回はもっと多くの人に、もっと素直に「クルマが好き」といってもらえるように、その入り口のハードルがなるべく低く感じられるようなテーマを用いたコンテンツを作りたかった。これが、今回の特集企画を作った背景である。
話し変わるが、2026年3月14日、銀座(有楽町)のど真ん中で開催された“LUFT TOKYO”はすごかった。詳しくは本誌で九島辰也さんがレポートしてくれているのでそちらをご覧いただくとして、イベントの企画趣旨たるやまさに『Crazy in Love』である。頭の中でビヨンセ feat.ジェイZのあの曲が流れてくるような、まさに「ノリノリ、アゲアゲ」な企画に思えた。が、現場はまったくそんな雰囲気ではなく、もっと大人の社交場のような、落ち着いた雰囲気であったことはお伝えしておきたい。
でも、参加者の多くの胸の中は、きっと、ジーンとするような、あるいはポカポカするような、春先の太陽の温もりに近い感情で満たされていたに違いない。
文/山本善隆(CAR and DRIVER / FM STATION 統括編集長)
<プロフィール>やまもとよしたか/1980年東京都生まれ。ITコンサルティング会社、自動車Webメディア企業、広告会社を経て、マーケティング会社にて企業の戦略立案・事業開発支援業務に従事後、2020年に独立。2021年より現職。クルマを運転する時間が一日の中で最も好き。1995年以降は大のF1ファン。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員
▼本誌『CAR and DRIVER』(2026年5月号)の詳細はこちら
https://www.caranddriver.co.jp/book/114305/
