【エース級SUV対決】ニューカマーのホンダZR-Vと定番のマツダCX-5。その乗るべき価値を検証

ホンダZR-V e:HEV・Z 価格:389万9500円/マツダCX-5・XDスポーツアピアランス(FF) 価格:386万9600円 試乗記

ホンダZR-V・e:HEV・Z(FF)。ZR-Vはシビックのコンポーネントを活用したクロスオーバーSUV。新世代のe:HEV(ハイブリッド)と1.5リッターターボを設定。駆動方式はFFと4WD

ホンダZR-V・e:HEV・Z(FF)。ZR-Vはシビックのコンポーネントを活用したクロスオーバーSUV。新世代のe:HEV(ハイブリッド)と1.5リッターターボを設定。駆動方式はFFと4WD

2台はそれぞれのブランドのアイデンティティを凝縮した存在

マツダCX-5・XDスポーツアピアランス(FF)。CX-5はマツダ・グローバル販売の約3分の1を占める基幹車種。スポーツアピアランスは「スポーツカー好きを魅了するSUV」をテーマに開発

マツダCX-5・XDスポーツアピアランス(FF)。CX-5はマツダ・グローバル販売の約3分の1を占める基幹車種。スポーツアピアランスは「スポーツカー好きを魅了するSUV」をテーマに開発

 ホンダZR-VとマツダCX-5は、どちらも両メーカーのSUVラインアップの主力だ。厳密にはガチンコのライバルといえない面もあるが、魅力たっぷりなのは間違いない。両車の共通点は「そのメーカーのエース級」であること。今回はその視点で比べてみたい。

 CX-5はマツダのスカイアクティブ商品第1弾として2012年に初代が登場。現行モデルは2017年登場の2代目だ。登場から6年が経過するものの、マツダの世界販売台数の約3分の1、国内販売台数の5分の1を占める最量販車種である。それゆえに、実質的な後継車といわれるCX-60の登場以降も併売中となっている。

CX-5リア

 ZR-Vは激戦区といわれるコンパクト・クロスオーバーSUV市場に投入されたフレッシュモデル。昨年秋に発表したものの、発売は2023年4月に延期されている。基本コンポーネントをシビックと共有し、今後エースになることが約束されている1台である。

 内外装はどうか? CX-5は見慣れた感はあるもの、魂動デザインは古さをあまり感じない。2021年の大幅改良でフレッシュさ、新たな魅力がプラスされている。インテリアも完成度が高い。デザインや質感は最新モデルと比べて決して負けていない。ただしメーター周辺やインフォテイメント系はそろそろリニューアルが必要だろう。

 ZR-Vは最新モデルらしく魅力たっぷり。奇をてらうことのない直球勝負が印象的だ。エクステリアは、弟分のヴェゼルより元気でスポーティな印象。「ホンダのSUV」を感じやすい。インテリアはシビックと共通する部分もあるが、エクステリアとマッチしており、シビック以上に似合っている気がする。

ZR-Vリア

 どちらもユーティリティ性能はハイレベル。後席/ラゲッジを含めボディサイズに見合ったスペースが確保されており、ファミリーカーとしての実力はハイレベル。作りのよさも印象的だ。

走りは両車スポーティ。4WD性能はCX-5、安全機能はZR-Vに軍配

 パワートレーンはどちらも複数の選択肢を用意する。CX-5はディーゼル、ZR-Vはハイブリッド(e:HEV)がお勧めだ。CX-5の2.2リッターディーゼルターボ(200ps/450Nm)は絶品。デビューから時が経つものの、実力はいまでもトップレベルと感じる。実用域のトルクと扱いやすさはいうまでもないが、スポーティさも印象的。吹き上がりのよさはCX-60用の直6・3.3リッターディーゼルに負けていない。6速ATとの組み合わせでも不満はない。

 ZR-Vのハイブリッドは2モーターのe:HEV。シビックから採用される2リッターエンジン+最新制御の新世代だ。このユニットのよさはモーター駆動を活かした力強さだけではない。エンジンと駆動系に機械的な繋がりがないにも関わらず、まるで繋がっているかのような「直結感」が気持ちいい。雑味のないエンジンサウンドを含め、ドライバーを魅了するハイブリッドである。

CX-5スタイル

ZR-Vスタイル

 フットワークはどうか? CX-5は2021年の大幅改良で最新の技術と考えを水平展開。従来モデルで足りないと感じていた部分がほぼ解消した。ハンドリングは骨太でワクワク感、快適性はシャキッとしているのに柔らかさがプラスされた。総合力はCX-60より高いレベルだ。

 ZR-Vはズバリ「視線の高いシビック」である。印象的なのはボディやステアリング系の剛性の高さ。SUVとは思えないほどカッチリしている。サスペンションはロール/ピッチともに抑えたスポーティな味付け。フロントの回頭性の高さと絶大な安定感を持つリアとのバランスは絶妙だ。乗り心地はやや硬めの味付けだが、しなやかな足の動きなので快適である。

 走りは、どちらもマツダとホンダの代表らしい完成度が印象的。楽しく、快適なだけでなく、メーカーの個性がうまく表現されている。

CX-5インパネ

ZR-Vインパネ

 どちらも駆動方式はFF/4WDを用意する。オンロード/オフロードを問わない「総合力」は、最低地上高210mmのCX-5が一枚上手。ZR-Vは、どちらかといえばオンロード寄りのキャラクターである。

 運転支援デバイスはどちらも充実した内容を用意。実際に使ったときの制御の滑らかさ/正確性は、登場タイミングが新しく最新スペックでまとめられたZR-Vに軍配が上がる。

 2台はガチンコライバルではないものの、「エース」に恥じない実力を持ったモデルである。どちらも安心してお勧めできる。価格はCX-5のほうがサイズを考えるとお買い得。ZR-Vも装備が充実し、納得の設定といえる。

 心配なのは両車のもう1台のライバルたちだ。CX-5の本来の競合車はCR-Vだろう。しかし、現行モデルは日本で販売終了。北米仕様は新型が発表済みだが、日本導入時期は未定。一方、ZR-VのガチンコはCX-30かもしれない。こちらは2019年登場とCX-5より新しく、メカニズムもスカイアクティブXを含めて最新スペック。ただし、販売は苦戦している。

 今後はマツダもホンダも「単一車種」で勝負するのではなく、「群」での戦略を考えたほうがいいのかもしれない。

CX-5インパネ

ZR-Vインパネ

ホンダZR-V主要諸元

ZR-V正面

グレード=e:HEV・Z(FF)
価格=389万9500円
全長×全幅×全高=4570×1840×1620mm
ホイールベース=2655mm
トレッド=フロント:1590/リア:1605mm
最低地上高=190mm
車重=1580kg
エンジン=1993cc直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=104kW(141ps)/6000rpm
最大トルク=182Nm(18.6kgm)/4500rpm
モーター最高出力=135kW(184ps)/5000〜6000rpm
モーター最大トルク=315Nm(32.1kgm)/0〜2000rpm
WLTCモード燃費=22.0km/リッター(燃料タンク容量57リッター)
(市街地/郊外/高速道路=19.4/24.7/21.7 km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=225/55R18+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.5m

マツダCX-5主要諸元

CX-5正面

グレード=XDスポーツアピアランス(FF)
価格=366万9600円
全長×全幅×全高=4575×1845×1690mm
ホイールベース=2700mm
トレッド=フロント:1595/リア:15905mm
最低地上高=210mm
車重=1650kg
エンジン=2188cc直4DOHC16Vディーゼルターボ(軽油仕様)
最高出力=147kW(200ps)/4000rpm
最大トルク=450Nm(45.9kgm)/2000rpm
WLTCモード燃費=17.4km/リッター(燃料タンク容量56リッター)
(市街地/郊外/高速道路=13.9/17.4/19.5 km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=225/55R19+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.5m

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