【世界基準対決】ともにクラスの牽引車。トヨタ・プリウスとVWゴルフの完成度を改めて比較した

トヨタ・プリウスZ 370万円/VWゴルフTDIアクティブ・アドバンス 416万2000円 試乗記

トヨタ・プリウスZ(2リッター/FF)。5代目となる新型は1.8リッター/2リッター・HVと2リッター・PHEVでラインアップを構成。1.8リッターはKINTO専用モデル。駆動方式はFFと後輪をモーターで駆動するE-Four

トヨタ・プリウスZ(2リッター/FF)。5代目となる新型は1.8リッター/2リッター・HVと2リッター・PHEVでラインアップを構成。1.8リッターはKINTO専用モデル。駆動方式はFFと後輪をモーターで駆動するE-Four

ともにCセグメントの実力車。クラスを牽引するキャラクター

VWゴルフTDIアクティブ・アドバンス。8代目ゴルフは1リッター&1.5リッターマイルドHV(e-TSI)/2リッターターボ(GTI&R)/2リッターディーゼル(TDI)など多彩なパワーユニット設定する

VWゴルフTDIアクティブ・アドバンス。8代目ゴルフは1リッター&1.5リッターマイルドHV(e-TSI)/2リッターターボ(GTI&R)/2リッターディーゼル(TDI)など多彩なパワーユニット設定する

 HVの世界代表であるトヨタ・プリウスと、いわゆるCセグメントの世界標準のVWゴルフ。2台は、それぞれカテゴリーを牽引する存在である。直接的なライバル関係にはないように感じるが、販売現場ではかなり引き合いに出されるという。サイズと価格が近く、両車とも+αの付加価値を求めるユーザーに訴えるものがあるからだ。

 新型プリウスはスタイリッシュさとスポーティさを本気で追求した。歴代モデルとは明確に異なるクルマに仕上がっている。走りの完成度はかなり高いレベルにあり、しかも燃費性能は相変わらず抜群。売れ行きはかなり好調と伝えられる。

 対するゴルフは8代目。新型は2021年の春に日本上陸。まず1リッターと1.5リッターの48VマイルドHV仕様が発売され、その後、2リッターディーゼルのTDI、2リッターターボのGTIとRなどラインアップが充実。ボディタイプは5ドアHBとヴァリアントを名乗るワゴンから選べる。

 スタイリングを含めゴルフのイメージはキープコンセプト。ただし新型はフロント回りが低くワイドな印象になり、BEVのID.シリーズに似たデザインになった。とはいえ、老若男女問わず万人受けするオーソドックスなキャラクターはもちろん、使い勝手に優れる万能パッケージング、優れた走行性能はそのまま。時代のニーズに合わせて進化したうえで、大切にしてきた持ち味を継承している。だからこそ、このクラスの「ベンチマーク」なのである。

 ゴルフは、いち早くダウンサイジング直噴ターボやDCTなど、斬新なパワートレーンを採用しクラスを革新してきた。8代目のポイントは電動化とデジタル化、そして運転支援強化だという。中でも最新版の48VマイルドHVが示した高い完成度はさすが。かつて自身が大問題を起こしたディーゼルも新世代に移行している。

 今回のメイン対決グレードは、プリウスが2リッター・HVのZ、ゴルフはディーゼルを積むTDIのアクティブアドバンス。ボディタイプはともに5ドアHB、ベース価格はプリウスが370万円、ゴルフは416万2000円である。

プリウスリア

ゴルフリア

ドライバーズHVに大変身したプリウス。ゴルフは、やはりクラスのベンチマーク

 プリウスのシリーズパラレルHVは、過去にはラバーバンドフィールをはじめドライバビリティ面の課題を指摘されることが多かった。「Hybrid Reborn」を掲げる最新版は、それらがかなり払拭されている。

 第5世代を迎えたHVシステムは、新設定の2リッターがなかなか美味だ。1.8リッター仕様(KINTO限定販売)でも大きな不満はないが、全域で走りの余裕を実感する。俊敏なレスポンスを実現しているとともに伸びやかに加速し、アクセルを踏み増しても頭打ちにならない。排気量から想像するよりも差はずっと大きい。

 ゴルフTDIのドライブフィールも逞しい。ひと世代前は、ディーゼルの美点であるトルクフルな走りを味わえたものの、音や振動は大きめ。DSGとの相性も若干ギクシャク感があった。現行型は、車内にいるとディーゼルかどうかわからないほど静かで振動も気にならない。DSGとの相性も上々である。

 ドライバビリティは、大きく改善された。レスポンスが大幅に向上し、低い回転域から最大トルクと最高出力を引き出すチューニングが心地いい。欧州では「ディーゼルはもう過去の技術」扱いになったと思っていた。しかし、こうして完成度の高い最新モデルに触れると、まだまだ可能性があると感じる。

 優れたシャシー性能もさすがゴルフ。どんなシチュエーションでも乗りやすく快適で操縦安定性にも優れている。申し分ない。

プリウスインパネ

ゴルフインパネ

 対するプリウスは、ぐっとポテンシャルが高まったことに驚いた。TNGAを初導入した旧型も走りはよかったが、そこからまさにジャンプアップしている。低重心化とワイドトレッド化、ホディとステアリング系の剛性向上により、快適な乗り心地を維持したまま、気持ちのいい走りを実現。とくに操舵応答性のよさは印象的である。

 E-Fourの仕上がりにも大いに感心した。ゴルフは別格的なRグレードでないと4WDの設定がないが、プリウスには旧型から4WDがラインアップされている。

 新型はリアに一段と強力なモーターを配したことで、瞬発力のある発進加速を実現。それをハンドリングにも活用している。従来は滑ったときに限って後輪がアシストしていたが、新型は旋回時にも積極的に後輪を駆動するという。

 走ってみると、2WDとのハンドリングの違いは明確。小さな舵角で旋回できて、リアが遅れなくしっかりと追従する。より意のままに走ることができる。

 降雪地のユーザー以外でも、プリウスを選ぶなら「走りの気持ちよさ」という点でE-Four(価格はFF比22万円高)を推奨したいと思ったくらいだ。

 ベンチマークであるゴルフの場合、世代ごとに極端にコンセプトを変えることはなかなか難しい。だがプリウスなら、それができる。5代目は、いろいろな方向性を考えたうえで、「ユーザーに愛されること」を積極的に目指した。その選択を、大いに歓迎したい。

プリウス前

ゴルフ前トヨタ・プリウス主要諸元

プリウス正面

グレード=Z(FF)
価格=THS 370万円
全長×全幅×全高=4600×1780×1430mm
ホイールベース=2750mm
トレッド=フロント:1560/リア:1570mm
車重=1420kg
エンジン=1986cc直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=112kW(152ps)/6000rpm
最大トルク=188Nm(19.2kgm)/4400〜5200rpm
モーター最高出力=83kW(113ps)
モーター最大トルク=206Nm(21.0kgm)
WLTCモード燃費=28.6km/リッター(燃料タンク容量43リッター)
(市街地/郊外/高速道:26.0/31.1/28.2 km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=195/50R19+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m

VWゴルフ主要諸元

ゴルフ正面

グレード=TDIアクティブ・アドバンス
価格=7DCT 416万2000円
全長×全幅×全高=4295×1790×1475mm
ホイールベース=2620mm
トレッド=フロント:1535/リア:1505mm
車重=1460kg
エンジン=1986cc直4DOHC16Vディーゼルターボ(軽油仕様)
最高出力=110kW(150ps)/3000〜4200rpm
最大トルク=360Nm(36.7kgm)/1600〜2750rpm
WLTCモード燃費=20.1km/リッター(燃料タンク容量51リッター)
(市街地/郊外/高速道路=14.9/20.4/23.6 km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:4リンク
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=225/45R17+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.1m

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