【オトナの嗜み_クルマ道楽のすゝめ】クルマの美しさを再認識すべし/世界的CARイベントで名車と出逢う体験を

コンコルソ・デレがンツァJAPANは古今東西の名車が集う日本を代表する名車コンテスト。東京で始まり、京都の二条城を経て、2025年からは世界遺産の奈良・薬師寺で開催されている。コンテストは戦前/戦後、そして20世紀のスーパーカーなど年代やキャラクター別に10のクラスを設定、その美を競う

コンコルソ・デレがンツァJAPANは古今東西の名車が集う日本を代表する名車コンテスト。東京で始まり、京都の二条城を経て、2025年からは世界遺産の奈良・薬師寺で開催されている。コンテストは戦前/戦後、そして20世紀のスーパーカーなど年代やキャラクター別に10のクラスを設定、その美を競う

エレガントさを競うクルマの“ビューティーコンテスト”は華やかな晴れ舞台

 以前、とある著名なカーデザイナーから興味深い話を聞いた。自動車のデザインは1970年代まででほぼやり尽くした、という、現代のデザイナーが聞けば「そんな身もふたもないことを」と思わずいってしまいそうな見解だった。

 確かにカーデザインは1980年代くらいから、空力やレギュレーションといったさまざまな縛りが増えたように思う。加えてとくにラグジュアリー分野ではヘリテージが重要となり、ブランドごとのデザイン言語もかなり厳しく定められるようになった。デザイナーが鉛筆一本で美しいフォルムを描いて勝負(なんて時代があったかどうかはともかく)という時代は遠くになりにけり。さらにいえばチームワークがより重要視されるようになってもはやレジェンドデザイナーの誕生も期待できない。

ディーノ

ランチア

 裏を返せば、“かっこいい”といった主観的な評価の基準もまた変わりつつあるのだろう。若い世代はいま、1990年代や2000年代の、ちょっとロボメカティックな空力デザイン、たとえばフェラーリF50やエンツォ・フェラーリを好む。けれどもそれが“美しい”か、と問われたら、ちょっと違うと思う。美しいカーデザインは(依然、主観的ではあるけれど)もっと普遍的であるはずだ、というのが、冒頭のデザイナーとの会話の結論であった。

 そう考えると、現在、世界中で開催されるようになったコンクール系のギャザリングイベントへの注目度が年々増し、自動車メーカーも精力的に参加するようになったことも理解できる。見た目のエレガントさを競うクルマの“ビューティコンテスト”は、自動車コレクターにとっていまや最も華やかな晴れ舞台である。そしてデザイナーの表現力が100%命であった時代だからこそ、誰が見ても美しいデザインが成立した。それはシンプルに美しいクルマを作ること、作れたとしても売れるかどうかわからないという現代へのアンチテーゼかもしれない。

世界の名車コンクールで“美”を実感する感動。それは素晴らしい嗜みである

 クルマを愛する者として世界のコンクールの現場を見てみようではないか。最も有名なイベントは8月にアメリカの西海岸、ペブルビーチで開催されるコンクール・デレガンスだろう。実は今年で75回目を迎えるが、そう聞いて不思議に思った方は鋭い。そう、ペブルビーチやイタリアのヴィラ・デステといった有名コンクールの歴史は実はけっこう古いのだ。つまりクラシックカーイベントとして始まったわけではなかった。当初はコーチビルダーなどが作り出すコンセプトカーや最新モデルが美を競いあっていた。シンプルにクルマの“ビューティコンテスト”だったのだ。

ペブルビーチ

 ペブルビーチでの主役は主に戦前(プレウォー)の大型モデルである。デューセンバーグやパッカードといったアメリカンドリームはもちろん、ロールス・ロイスやブガッティ、メルセデス・ベンツ、ホルヒ、イスパノ・スイーザ、ドラージュといったプレウォー超高級ブランドがベストショーの常連だ。もちろん、1950年代のフェラーリも強い。

 要するにカロッツェリア(カロッセリエ、コーチビルダー)が力を持っていた時代のモデルが“美しい”とされている。それはそうだろう、世界のお金持ちが予算など考えずに贅を尽くしたモデルをオーダーしていた時代なのだから。個人的にはホルヒやメルセデスの大型ロードスターは本当に美しいと思う。

ヴィラデステ

 ヴィラ・デステや日本のコンコルソ・デレガンツァ・ジャパンでは、もう少しスポーティなモデル、つまりは欧州勢の活躍が目立つ。とくにアルファロメオやフェラーリ、マセラティ、ランチア、アストンマーティン、ポルシェといったブランドの1950から60年代モデルが美のしのぎを削る。

グッドウッド01

グッドウッド02

 一方で、走る姿の美しさも忘れてはならない。“速いクルマは美しい”といわれるが、ミッレミリアやル・マンといった歴史あるモータースポーツイベントで速さを披露していた1960年代までのレーシングカーは確かに美しい。クラシックモデル用にアレンジして現在も開催されるミッレミリアやル・マン・クラシックはもちろん、ラグナセカのモータースポーツリユニオンやグッドウッドのフェスティバル・オブ・スピードとリバイバルもマニアを虜にするイベントだ。ポルシェ917やフェラーリP330といった純粋に速さを競い合った時代のレーシングカーには心を奪われる。クルマの美しさを改めて確認するためにイベントに出かけるのは、素晴らしい“オトナの嗜み”である。

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