ハイブリッド専用のコンパクトカーとして誕生したアクア。初代の圧倒的な燃費性能はそのままに、2代目へと進化したいま、その魅力はどこにあるのか。今回は2025年9月にフロントマスクを一新したマイナーチェンジ後の最新モデルに試乗し、居住性や静粛性、そして最新技術がもたらす走りの進化などヒットの真相を探る。
私の中でアクアといえば、とにかく燃費がイイクルマという印象があります。初代はヴィッツ系Bプラットフォームにプリウス譲りのハイブリッドシステムを搭載し、コンパクトな5ナンバーサイズのストロングハイブリッド車という立ち位置でデビューしました。そんな背景もあって、女性ユーザーをターゲットにした、ボディカラーやユニーク機能なども盛り込まれていましたね。
いちばん印象に残っているのは、どれくらい燃費がよかったか? ということを、家計簿のように表示する機能。メカメカしいことは苦手な方が多い女性に向けて、面白いこと考えるなぁ~と、感心したのを覚えています。
実は初代アクアは、私がレギュラー出演していた『なかなか日本高速道路女子旅』と『なかなか日本高速道路DRIVE1バン旅』というドライブ番組で、メインの劇用車として使っていました。なので、テレビ映りのいいオレンジ色のアクアで、東京から名古屋付近まで、毎月往復ドライブしていたんですよね。
そのときに気になったのが、後席の狭さと、外から入ってくる音。後席の足元がとくに狭かったので、体の大きなディレクターさんは難儀していたのを覚えています。
もうひとつ、音のほうはロードノイズが車内撮影のマイクが拾ってしまうくらい、とにかく入ってきたので、静粛性の高いタイヤに変えてみたりしたこともあったくらいでして……。
とはいえ、燃費が驚くほどよかったので、「経費的には大助かり、その分美味しいものでも食べよう」と、プロデューサーさんは、よくいっていました(笑)。
さて2代目となり、私の中でのネガティブ要素がどうなったのか気になっていたのですが、まず後席はだいぶ広くなりました。TNGA-Bプラットフォームという、シエンタなどに使われたユニットが採用されたため、ホイールベースが長くなったんですよね。その分で後席の足元と、加えて荷室も広がりました。先代は機内持ち込み用のスーツケースがギリギリという感じでしたが、余裕があるという感じになりましたね。
そして、もうひとつの懸念事項の音ですが、ロードノイズは先代に比べるとかなりよくなりました。これならば、車内マイクが音を拾ってしまってウルサイ……ということはないと思います。逆に気になってしまったのがエンジン音。4気筒から3気筒に変更したために、エンジンが掛かったときと掛かっていないときの違いが大きいんですよね。それに加えてロードノイズが静かになったがゆえに、今度はエンジン音が気になるようになってしまった……という感じなんです。
これは、昨今いわれるEVの風切り音と同じで、それまで大きめの音を出していたものがなくなると、次に大きな音が気になってくるというもので、ある程度はイタチごっこなのかもしれません。
そして、絶賛されていた燃費。今回は残念ながら計測はできなかったのですが、より素早く頻繁に電気の出し入れができるようになった、バイポーラ型ニッケル水素電池に進化したので、間違いなくよくなっているはずです。回生力アップと効率の向上で、少なくとも実燃費としては間違いなく上がっていると思います。
パワフル感は体感できるほどアップしているので、いままで一生懸命アクセルを踏んでいたようなところでの余裕が非常に変わりました。これだけゆとりがあると、高速道路での疲労度もかなり違いますね。
そんな感じで、進化は感じられていたものの、誤解を恐れずにいいますと、2代目のマイナーチェンジ前のモデルは、乗り心地があまり好みではなかったんです。フワついた落ち着きのなさが、“なんでいま、ここでこの動きで?”という感じでシックリこなくて、なんともバタバタしているように感じられてしまったんですよね。
ところが、今回マイナーチェンジ後のモデルに乗って、そのあたりがグッと変わっているのに驚きました。ドライバーの予想とそぐわない動きは消えて、自然な感じにまとまっていたんです。ナチュラルにフィットしてくれるように進化していたので、かなり好感触でした。
オマケにデザインもガラリと変わって、高級感が出てきましたよね。フロントマスクはクラウンやプリウスに通じる、いわゆるハンマーヘッド系になったことで、目を引くようになりましたし、全体的な質感も上がりました。これまでの女性ターゲットのクルマという立ち位置から、老若男女問わず選びやすいものに……「変身!」というくらいのインパクトを受けました。
実際、免許取りたての方もそうですが、年齢を重ねると大きなクルマは億劫で……という声もよく聞きますので、アクアという選択がジャストサイズに感じる方も多いのではないでしょうか。質感も燃費も走りも、多くの方にいろんな意味でちょうどイイ。そこがアクアのヒットの真相なんだと思います。
1)ハイブリッド専用車としての高い信頼性に、クラスを超えた上質感をプラス。幅広い層が満足できる、全方位に隙のない高い完成度
2)TNGAの採用で、先代の弱点だった後席の居住性と静粛性を大幅に改善。ゆとりある室内空間と荷室スペースを確保し、実用的な価値を引き上げた
3)圧倒的な燃費性能を維持しつつ、バイポーラ型電池の採用などで、リニアな走りを実現。単なる移動手段を超え、運転本来の楽しさを提供
たけおかけい/各種メディアやリアルイベントで、多方面からクルマとカーライフにアプローチ。その一方で官公庁や道路会社等の委員なども務める。レースやラリーにもドライバーとして長年参戦。日本自動車ジャーナリスト協会・副会長。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
