【竹岡圭 K&コンパクトカー ヒットの真相】トヨタ・シエンタ「デザイン性と高いユーティリティ性が同居」

「ここにUSB端子があれば便利なのに」。マイカーとして時間をともにしていると、小さなカイゼン点に気づくもの。新型シエンタは、ユーザーの「気づき」に注目して、細部まで徹底的に煮詰めた1台。旧型と同様に街を走っているときに、ひと目でわかる存在感を発揮するスタイリングにも注目です。

ガソリンとハイブリッドを設定。デザイン性が高く、使いやすい配慮がうれしい

シエンタは3列シートの7人乗りと2列シートの5人乗りを設定

 スライドドア&3列シートミニバンの中の小型サイズ、通称プチバンのパイオニアがトヨタ・シエンタです。初代は「まぁるいお目目」が可愛くて、ママ&お子様カーと見られていましたが、2世代目はトヨタのキーンルックの先駆けの隈取フェイスで登場。

 何を隠そうジャパンタクシーのベースにもなっていたりして、運動性能とパッケージングのバランスが見事なモデルでした。ところがそのぶん、少々可愛らしさの部分が薄れてしまった感じもありましたよね。

ルーフにサーキュレーターを設置。室内温度の調節に役立つ配慮

 そして今回の3代目です。まず、大きくしなかったことが素晴らしい。シエンタは、「このサイズだからこそ!」という点でもユーザーが評価していることをよくわかっていらっしゃる。デザインも、くどくない程度に可愛らしさが盛り込まれ、キーンルックと丸目初代との融合とでもいえばいいでしょうか。加えて、サイドバンパーなどもあしらわれて、欧州の香りさえ漂うオシャレさ……。

 実はこれ、最近ニーズの高いアウトドアにキャンプ、車中泊という使われ方をすることも心得ていることの証。そういう場所は、ちょっとした擦り傷がつきやすいシチュエーションでもありますからね。

 室内も巧妙にポケットエリアが設けられているのですが、とにかく「少しでも広い空間を確保する」という目標に、デザインと機能性を上手にまとめたという感じ。その代表選手が、前席のドアノブや、スライドドアのグリップだと思うんです。

ドアのグリップ形状は開閉操作がしやすいように配慮した大型デザイン

 一見わからないくらい出しゃばらずに、できるだけ広い面積(サイズ)を確保することで体格を問わず誰もが便利に使えて、しっかり滑り止めを裏側に仕込んでいるなど、使い勝手の面もきちんと考慮されています。

 そうして生まれたスペースは、とくにニーズの高かった2列目シートの足元の広さに使われ、スーパーマーケットの買い物カゴがポンとそのまま置けたり、また開口部も広がったので、頭を低くすることなく、スマートに乗り降りできるようになりました。これで意外と3列目も使い勝手よく座れちゃうのですから、本当にバランス感覚がいいのでしょうね。

Zグレードのメーターはオプティトロンタイプ。7㌅TFTカラーマルチインフォメーションディスプレイ付き。インパネは低めにデザインされていて視界は良好

 また、この空間をもっと自由に使いたいという方には2列シートの5人乗り仕様もチョイス可能。パワートレーンはハイブリッドとガソリンの2本立てと自由度高しです。

 新型の登場に合わせて新しく設定されたハイブリッドの4WDモデルは、最近のアウトドアニーズにもマッチングが高いこと間違いナシ。悪路走破性、電気製品の使用、長距離走行ゆえの好燃費と、一見オーソドックスに見えるモデルですが、しっかり時代を読んでいるのです。

 一方、ガソリンモデルは軽快で、ボディと足回りのバランスのよさを生かし、ワインディングロードもなんのその。攻めるレベルで走れてしまうポテンシャルの高さを秘めています。

 つまりシエンタは、買った後にプラスの発見が期待できるミニバン。ワクワクを感じさせるからこそのロングセラーなのでしょう。

シエンタ「ヒットの真相」

1)ガソリンとハイブリッド、2列シートと3列シート、FFと4WDと車種バリエーションが豊富。自分に使いやすい1台が選べる

2)高いデザイン性と使いやすいユーティリティ性がさりげなく同居。5ナンバーボディをキープしている点も評価を集める

3)HVは100V電源が使える。人気のキャンプライフを楽しむパートナーとしても高い実力を発揮。購入後の夢が広がる

■主要諸元

グレード=ハイブリッドZ(7人乗り、FF) 価格=291万円
全長×全幅×全高=4260×1695×1695mm
ホイールベース=2750mm
トレッド=フロント:1490×リア:1480mm
車重=1370kg
エンジン=1490cc直3DOHC12V(レギュラー仕様)
型式=M15A-FXE
燃料タンク容量=40リッター
最高出力=67kW(91ps)/5500rpm
最大トルク=120Nm(12.2kgm)/3800〜4800rpm
モーター最高出力=89kW(80ps)
モーター最大トルク=141Nm(14.4kgm)
WLTCモード燃費=28.2km/リッター (WLTC市街地/郊外/高速道路=27.1/29.8/27.6)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トーションビーム
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=185/65R15+フルキャップ
駆動方式=FF
乗車定員=7名
最小回転半径=5.0m

●Zグレードはバイビーム式LEDヘッドランプを標準で装備し、フロントグリルのモールが金属調塗装仕上げになる。スライドドアにワンタッチスイッチ付きハンズフリー機構が付く点も他グレードと異なる。撮影車が装備している切削光輝+ブラック塗装アルミは5万5000円のメーカーop。スカーレットメタリックのボディカラーは3万3000円のop。オーディオレスが標準で、メーカーopのディスプレイオーディオ(コネクティッドナビ対応)は3万3000〜8万9100円である。

2〜3列目をたたむとフラットでスクエアなラゲッジスペースが広がる

たけおかけい/各種メディアやリアルイベントで、多方面からクルマとカーライフにアプローチ。その一方で官公庁や道路会社等の委員なども務める。レースやラリーにもドライバーとして長年参戦。日本自動車ジャーナリスト協会・副会長。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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