【メデ耐2026】完走わずか9台の超乱戦!あと200ccあれば……牛乳瓶1本分の燃料に泣いた「PTC CAR and DRIVER Racing」激闘の記録

本記事は本誌『CAR and DRIVER(2026年12月号)』との連動記事となります。ぜひ本誌と合わせてお楽しみください。

速さだけでは勝てない。燃費と作戦がものをいう伝統の「メデ耐」とは

チームのメンバー全員で記念撮影。

「メディア対抗ロードスター耐久レース」、略して「メデ耐(めでたい)」は、自動車メディアの編集者やジャーナリスト、ライター、カメラマンなどがチームを組み、マツダ・ロードスターで速さと燃費を競う伝統のレースだ。初代ロードスターが誕生した1989年に筑波サーキットで産声を上げ、長く「メディア4耐」の名で親しまれてきた(注:筑波サーキットでは4時間の耐久レースとして開催されていた)。昨年からは舞台を富士スピードウェイに移し、3時間の耐久レースとして生まれ変わっている。第37回となる今年は、10月3日(土)に予選、4日(日)に決勝が行われた。

マツダ・ロードスターのワンメイクで自動車メディアが競う「メディア対抗ロードスター耐久レース」。昨年、わずか8秒差で表彰台を逃した我が「PTC CAR and DRIVER Racing」(以下、CD号)は、「今年こそ表彰台!」という目標を立て、決戦の地である富士スピードウェイへと乗り込んだ。事前の特訓と緻密な作戦のもと、チームはどう戦ったのか。大人が本気で挑んだモータースポーツの熱狂と絆と涙の物語をお届けする。

まずは、主役であるロードスターというクルマそのものについてあらためて触れておきたい。ロードスターはフロントにエンジンを積んで後輪を駆動するFRの2人乗りオープンスポーツカーだ。最大の持ち味は軽さにある。大パワーに頼らず、軽い車体と素直なハンドリングでクルマを操る楽しさを味わわせてくれる。マツダが掲げる「人馬一体」を、もっとも純粋なかたちで体現したクルマといっていい。

4代目となるNDロードスターがベース

初代からの累計生産は2016年には100万台を超え、2人乗りオープンスポーツカーの生産台数でギネス世界記録にも認定されている。また、ギネスで言えば、2024年の第35回大会では、「最も長く続いている自動車のワンメイクレースシリーズ」としてギネス世界記録を達成したことも記憶に新しい。

レースで使うのは、ロードスター・パーティレースⅢの車両規則に沿った「ロードスターNR-A」だ。1.5Lエンジンの市販車にロールケージやレーシングシートなどの安全装備を加えた仕様で、タイヤの空気圧以外は一切の改造と調整が禁じられている。全車がイコールコンディションだから、勝敗を分けるのはドライバーの腕とチームの作戦ということになる。

今年からタイヤはブリヂストンの「POTENZA Adrenalin RE005」、ブレーキパッドはエンドレスの「MFE1」、バケットシートはブリッド社製、フルハーネスはキャロッセ社製を使用。

その作戦を大きく左右するのが燃料だ。スタート前に満タンにした40Lの低炭素ガソリン「ENEOS EARTH ONE(E20)」だけで3時間を走りきらなければならず、レース中の給油はできない。全開で走り続ければ途中でガス欠するし、燃料を残しすぎれば周回数で負ける。ドライバー交代時には1回につき1分以上の停止が義務づけられ、過去の成績によってはハンデキャップとして追加のピットストップも課される。そして、ガス欠でチェッカーフラッグを受けられなければ、順位は認定されない。

マツダとENEOSが低炭素燃料の理解促進と普及拡大で連携。メデ耐のロードスターにエタノール20%混合ガソリン「ENEOS EARTH ONE(E20)」を使用する。

我がCD号は、このルールの厳しさを身をもって知っている。一昨年の筑波では、ファイナルラップで燃料が半周分足りずにガス欠ストップ。昨年は3位とわずか8秒差の4位で表彰台を逃した。だから今年は全員が富士スピードウェイのサーキットライセンスを取得して練習走行を重ね、さらにシミュレーターで本番の走りを体に染み込ませてきた。昨年の成績から1分のハンデキャップが課されるが、目標はあくまで表彰台だ。

富士スピードウェイのスポーツ走行で、データをもとに自分の走りをチェックするなど、ドライバーは事前に練習を積み重ねてきた。

予選:山本が昨年ミスの汚名を返上!チーム史上最高の3番グリッドをもぎ取る

1周のラップタイムの速さを競う予選に挑んだのは、我らが統括編集長である山本だ。彼の瞳には、並々ならぬ闘志が宿っていた。というのも、昨年の予選で山本は雨によって刻々と変わる路面コンディションに翻弄されただけでなく、ピットレーン出口での速度違反という痛恨のミスを犯してしまい、プラス1秒のペナルティを受けて13位に沈んでしまったからだ。その雪辱を果たすべく、彼はこの1年間、ロードスターNR-Aによるワンメイクレース「パーティレース」や、スーパー耐久シリーズのエントリーカテゴリである「S耐チャレンジ」に自ら所有するロードスターで参戦するなど、入念に準備を進めてきた。

予選アタッカーを自ら志願。気合いを入れて臨む山本。

予選当日の富士は、昨年の雨がうそのような秋晴れ。路面は完全なドライだ。各メディアの代表として予選に出走するのは、プロ顔負けの腕前を持つエース級のドライバーばかりである。コンマ数秒の中に何台もがひしめき合う熾烈なタイムアタックの中、山本はこれまでの特訓の成果を爆発させた。

ピットのモニターに映し出された順位は、なんと3番手!!

ハンデを背負う我々にとって、前方のクリアな視界からレースをスタートできるこのポジションは、まさに千金に値する素晴らしい結果だった。山本がピットに帰還した瞬間、チーム全体に「今年はやれる」という確信が広がっていった。

チーフメカニックの濱口(リアルテック)と予選3番手の喜びを爆発させる。

第1スティント・山本(本誌):トップ争いをしながら燃費&速さをバランス

決勝のドライバーは山本(本誌統括編集長・右)→西坂(ファッション誌『UOMO』から招聘・左から2番目)→大谷(モータージャーナリスト・真ん中)→佐藤(マツダチャレンジプログラム第3期生・準助っ人・左)→加藤(筆者・ライター・右から2番目)の5人で臨む。

今回のレース戦略を立てたのは筆者。今年、ロードスターでレースに参戦している山本と佐藤をなるべく長く走らせ、残る3人はシミュレーター練習の結果をもとに、西坂、大谷、加藤の順で周回数を減らしていく。つまり筆者は、自分をいちばん短い出番に置いた。1年ぶりのレースでもあり、今回は脇役に徹することにしたのである。

10月4日(日) AM9:35、決勝も秋晴れのもとでスタートした。3番グリッドの山本は、マシンが殺到する1コーナーを冷静にクリア。その後はトップ争いを演じつつ、燃費をきっちりマネジメントしながら落ち着いてペースを刻んでいく。

参加台数は22台。各車、作戦が違うためかペースはバラバラだが、3時間後のチェッカーフラッグを目指す。

ここまでは想定内。ただ、ドライ路面での燃料の減り方は、雨だった昨年とはまったく違うため、ピットではドライバーから報告される平均燃費をもとに、監督の平石と作戦参謀の丸山がガソリンの使い方を細かく計算していく。

スタートから25分が経過したところで、CD号は1分のハンデを消化するためにピットインした。1分間の停止は、順位にとって決して小さくないロスだ。いったんは順位を大きく下げたものの、その後も山本はペースを崩さず、燃料を浪費することもなくしっかり自分のスティントを走りきった。

ピットに戻ってきた山本にチームのみんながすかさず駆け寄り、固い握手を交わす。予選も決勝も、文句のつけようのない仕事ぶりだった。

第2スティント・西坂(UOMO):初参戦の“ダートラ使い”が期待以上の走りを披露

バトンを受けたのは、ファッション誌『UOMO』から招聘した西坂だ。メデ耐は今回が初参戦だが、ふだんはトヨタ86でダートトライアル競技に参戦しているツワモノである。とはいえ、未舗装路でクルマを振り回すダートラと、燃費を気にしながら淡々とラップを重ねる耐久レースとでは、求められる走りがまるで違う。ピットには、期待と同じくらいの不安もあった。

第2走者はファッション誌『UOMO』の西坂

ドライバー交代には1分間の停止が義務づけられている。その間に濱口、中沢、石川のピットクルーがマシンに駆け寄り、シートベルトの装着を手伝い、トランスポンダーを交換していく。こうした裏方の働きがあるからこそ、ドライバーは走りに集中できる。準備が整うと、西坂は落ち着いた様子でピットロードを後にした。

ピットの心配は杞憂に終わった。西坂は練習で詰めてきたラインを正確にトレースし、安定したラップタイムを並べていく。燃費もチームの想定どおりで、初めての大舞台とは思えないクレバーな走りを見せる。電話でドライバーとやりとりする平石も、指示を出す必要がほとんどないほどだった。西坂はアグレッシブかつ安定した走りで次のドライバーへ完璧な状態でバトンをつないだ。

第3スティント・大谷:雨の雪辱を果たした“燃費の達人”

第3スティントは、キャリア30年を超えるモータージャーナリストの大谷だ。昨年は初めて経験する雨の富士で路面に慣れるのに時間がかかり、思うような結果を出せなかった。悔しさをにじませながらヘルメットを脱いだ大谷の顔を、チームの誰もが覚えている。だから今年の大谷は、シミュレーターと練習走行で富士を走り込んできた。

第3走者はモータージャーナリストの大谷

ドライの富士に出ていった大谷は、狙いどおりのタイムでラップを刻み始めた。しかもピットを驚かせたのは燃費だ。報告される数字は、チームの計画を上回る抜群のものだった。速さを保ったまま燃料を残すという、耐久レースでいちばん難しい仕事を、大谷は淡々とこなしていく。

このとき大谷が稼いだ燃料の余裕は、後に続く佐藤の追い上げにとって大きな武器になる。ピットでは丸山が計算をやり直し、「これなら佐藤はかなり攻められるぞ」と声を弾ませた。ピットに戻った大谷の表情にも、確かな手応えが浮かんでいた。本人としては1年越しの雪辱を果たしたのである。

第4スティント・佐藤:20番手から2番手へ。若きエースが怒涛の追い上げ

レース後半、ステアリングを託されたのは準助っ人ドライバーの佐藤だ。マツダチャレンジプログラムの第3期生で、ふだんは某・自動車メーカーに勤務しながら、山本のロードスターを借りてロードスター・パーティレースのジャパンツアーシリーズに参戦している。CD号が誇る若きエースである。

第4走者はマツダチャレンジプログラムの第3期生で準助っ人ドライバーとなる佐藤

佐藤がコースに出た時点で、CD号の順位は20番手(下から3番目)。各チームのピットインやハンデ消化のタイミングが入り乱れ、見かけの順位が大きく動く時間帯ではあった。とはいえ、モニターに並ぶ「20位」という数字に、ピットの誰もが少しだけ不安を覚えたのも事実だ。

ところが、この若者はそんな空気をあっという間に吹き飛ばした。1周目から明らかにペースが違う。燃費を守りながら速く走らせるコツを知り尽くした走りで、前を行くマシンを1台、また1台と仕留めていく。大谷が残してくれた燃料の余裕も、ここで生きた。モニター上の順位がひとつ上がるたびに、ピットから歓声が上がる。

そして佐藤は、ついに2番手までポジションを押し上げた。20番手から2番手へ。今年のCD号で、もっとも順位が動いた瞬間だ。「これ、表彰台どころか、上位勢がガス欠で止まれば、優勝まであるんじゃないか……」。山本の口からそんな言葉がこぼれる。ピットクルーも総立ちで、佐藤の帰りを待った。残るは最終スティント、加藤が走るのはわずか数周だけである。

第5スティント・加藤:残り1周、100Rで訪れた“あのニガイ感覚”

「あとは頼みます!」

笑顔で戻ってきた佐藤とすれ違いながら、加藤はマシンに乗り込む。かつてメカニックの濱口とともにRX-8パーティレースに参戦し、3度の優勝を経験した身ではあるが、レースは1年ぶり。それでも、ここから数周を無事に走りきれば、チームの1年間の努力は報われるはずだった。

最終第5走者はこの原稿の筆者でありライターの加藤

ピットの平石から指示が飛ぶ。「ややエコラン寄りでいこう」。事前に作戦を立てたのは自分だ。出番が短いことも、燃料がギリギリなことも、誰よりわかっている。久しぶりのレースの緊張を抑えながら、慎重にアクセルを踏んでいく。

そして迎えた残り1周。コカ・コーラコーナー(Aコーナー)を抜け、100Rへとさしかかったところで、エンジンの吹け上がりが途切れた。アクセルを踏んでも、クルマが前に進もうとしない。一昨年、筑波のファイナルラップでチームが味わった、燃料が尽きかけたときの“あのニガイ感覚”だ。

「頼む、もってくれ!」

ヘルメットの中で叫びながら、加藤は惰性を最大限に生かしてマシンを前へ運ぶ。だが、願いは届かなかった。CD号はヘアピンを抜けた先のコース外で静かに動きを止めた。チェッカーフラッグまで、あと1周足らず。ピットのモニターに映る止まったマシンを前に、誰もが言葉を失っていた。モータースポーツの神様は、時に残酷なまでに劇的なシナリオを用意していた。

結果:悔しい、でも楽しい! 大人が本気で遊ぶ理由

ガス欠でチェッカーフラッグを受けられなかったため、CD号の順位は認定されなかった。後で計算し直すと、足りなかったのはおそらく牛乳瓶1本分、200ccほどの燃料だ。燃費計算のほんのわずかなズレ。レースにタラレバは禁物だが、優勝したahead号のチェッカーのタイミングがあとちょっと早ければ……、CD号はなんとかチェッカーを受けていたはずである。

ピットに戻ると、山本の目には涙が光っていた。予選で昨年の雪辱を果たし、決勝でも満足のいく走りを披露するも……。この1年を誰よりもこのレースに捧げてきた男の涙だ。「真剣に取り組んできただけに、今回の結果はとても悔しいです」。そう言葉を絞り出した山本は、やがて顔を上げ、チーム全員に向かってこう誓った。

「来年は絶対に優勝しよう!」

それにしても、である。一昨年はガス欠、昨年は8秒差の4位、そして今年は再びガス欠。これまでは「あのとき誰かがもう少し……」と犯人捜しをする向きもあったが、今年は議論の余地がない。チーム全員が犯人なのだ。来年の作戦ノートの1ページ目には、大きくこう書いておくつもりだ。

「牛乳瓶1本、みんなで力を合わせて必ず残すこと!」

とはいえ、燃料に泣いたのはCD号だけではない。今年は参加22台中、13台がガス欠でリタイアするという異例の展開となった。つまり、完走したのはたったの9台。昨年とはさまざまな条件が変わった(路面、タイヤ、燃料)にせよ、この結果は想像していなかった。チェッカーフラッグ後の各ピットでは、完走を喜ぶ声と、ガス欠を嘆く声が入り混じる異様な光景が広がっていた。

ピットモニターに映された、ガス欠車両の列。残り時間が1分31秒であることを示している。

ところでこのレースの開催はもちろん、我がチームも協賛企業のサポートがあってこのレースに参戦できている。まず紹介したいのが、3D CADやIoT、ARなどで製造業のDXを支援するグローバル企業の「PTCジャパン」だ。CD号とは3年連続でタッグを組む信頼のパートナーである。

PTCジャパンの面々。忙しい日々を過ごした後の週末にもかかわらず、今年も応援に駆けつけてくれた

そしてカシオ計算機の腕時計ブランド「EDIFICE(エディフィス)」から、今回ドライバーの時間管理をしてくれた自動巻きモデル「EFK-200」シリーズを紹介したい。ブランドの哲学「Speed & Intelligence」を体現したこのモデルは、腕の動きでゼンマイを巻き上げる日本製メカニカルムーブメントを搭載し、最大巻き上げ時で約42時間のパワーリザーブを確保している。シースルーバックからはムーブメントが動く様子を眺められ、内燃エンジンにも通じるメカニカルな駆動感が味わえる。サファイアガラスの風防や10気圧防水など、スポーツシーンでの頼もしさも十分だ。

上からレッド、ブルー、カーボンの文字盤は、見る角度により異なる表情が楽しめる。

さて、このレースの本当の楽しさは、順位だけでは測れない。いい大人が本業の合間を縫ってサーキットライセンスを取り、シミュレーターにかじりつき、たった3時間のために1年をかけて準備する。初参戦の西坂は期待以上に走り、大谷は1年越しの雪辱を果たし、若きエースの佐藤は20番手から2番手まで駆け上がった。ピットでは濱口、中沢、石川、平石、丸山が、ドライバーが走りに集中できるよう最後まで支え続けてくれた。

順位がひとつ上がるたびにピット全体が沸き、最後は全員で同じ悔しさを分け合った。大人が真剣に遊び、仲間と一体になって喜び、悔しがる。それこそがメデ耐の醍醐味であり、ロードスターというクルマが37年以上にわたって人を惹きつけてきた理由でもあるのだろう。

山本の誓いを胸に、CD号の次の挑戦はもう始まっている。来年こそは牛乳瓶1本分の燃料を残してチェッカーフラッグを受け、表彰台の頂点へ!

(マツダならびに関係者のみなさま、今年も素晴らしいレースをありがとうございました! by チーム一同)

文/加藤英昭

■メディア対抗ロードスター耐久レース 44号車「PTC CAR and DRIVER Racing」 フォトコレクション

雑誌『CAR and DRIVER』

特集【クルマを愛するライフスタイル】

特集内に別視点の記事が掲載されていますので合わせてお楽しみください

CAR and DRIVER (2026年12月号)のご紹介

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