徹底的にリアルに描く/大西蔣美さんの代表作・好きな作品

 

作品①「Ⅳ号戦車F型」 画材:アクリル絵の具・クレッセントボード サイズ:縦45×横65cm 制作期間:40日 制作:2020年 設定:第14戦車師団所属車、1942年夏

どこまでもリアル。ボックスアート(箱絵)の真髄

 プラモデルのボックスアートで軍事車両を専門とする大西さん。ふだん目にすることがない実車や歴史的車両をリアルに再現するイラストは、資料的価値も高いといわれています。

「ドイツ戦車は基本的にⅠ号から始まりⅥ号まで作られました。作品①はⅣ号戦車(クルップ社製。75㎜砲搭載、20トン級。車体全長約5.9m、全幅約2.7〜2.8m)のF型です。Ⅳ号戦車はA型からJ型(I型を除く)まで改良が重ねられ、第2次世界大戦の始まりから終わりまであらゆる地域の戦闘で重要な役割を果たしたドイツの主力戦車でした。F型はE型までの車体から装甲を厚くして、その重量を支える足回りを強化。また、F型は2種類あり、F-1が最後の短砲身(24口径)、F-2は強力な長砲身(43口径)でした。

 F型の砲身変更のきっかけは、ソ連軍戦車による“T34ショック”でした。F型の生産が始まったころ、東部戦線(1941年、独ソ戦開始)でソ連軍のT34戦車やKV戦車に遭遇したドイツ戦車は、砲撃をことごとく跳ね返され、側面や後面からの接近戦を余儀なくされました。短砲身F型のドイツ戦車兵は無線を駆使した戦術と操縦・射撃でソ連軍戦車に対抗しました。

イラストはそのシーンで、戦車長はヘッドホンと咽喉マイク、ターミナルスイッチを装着しています」

都電荒川線のレトロ車輌をテーマに立体分解図に挑戦 イラストはエンターテイメント 自由な発想と表現の宝庫

作品②「都電荒川線・9002号車」 画材:アクリル絵の具・クレッセントボード サイズ:縦65×横65㎝ 制作期間:40日 制作:2016年

 大西さんは、6年ほど前、東京に残る唯一の都電、“リアルな交通遺産”とでもいうべき都電荒川線(三ノ輪橋-JR王子駅前-早稲田まで30停留場、全長12.2km。所要時間56分)の車両を、都営交通のイメージポスターとして描きました。ポスターは都営線各駅と各車内に展示され大好評でした。

「専門外の依頼でしたが、何をどう表現するか、打ち合わせを重ねた結果、作品の構図は、写真では困難な透視図の発想からさらに展開し、あたたかみのある手描きで、かつリアルな立体分解図というアイデアが生まれました。ボクは東京都交通局の荒川車庫を訪ね、鉄道ファン垂涎のレトロな9001号車を、屋根の上から車内、車両の下までくまなく取材させていただきました。昭和初期の東京市電をイメージした9000形2両のうち、9001号車は車体下部が赤、作品②の9002号車は青です。見た目はクラシックでも平成19年導入の新型車両です。イラストの制作期間は、打ち合わせから完成まで約40日。立体分解図の遠近法の表現はひと苦労でしたが、着色に入る頃にはひとつひとつ創り上げていく感覚が楽しくて筆が進みました。仕上がりを見た担当者は満面の笑顔で、ボクは内心“チャレンジ大成功!”と肩の荷がおりました」

  さまざまなデザインが楽しい都電車両は、令和4年4月現在33両。都電荒川線は、いまや観光資源として、また沿線地域の人々に親しまれる交通機関としてPR活動も盛んです。

「ボクの初詣は、もう40年以上も雑司が谷の鬼子母神で、電車の時は必ず都電荒川線で行っています。王子駅前から鬼子母神前までの起伏に富んだ車窓が好きです。荒川線が唯一の都電として残ったのは、路線の大部分が専用軌道だった(併用軌道は1.7km)という理由に加え、沿線住民の存続運動の影響も大きいと思います。都電初体験の方は、ボクが描いたレトロ車両で都電の魅力を楽しんでほしいです」

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