乗り物は人生を豊かにする道具/小川和巳さんの代表作・好きな作品

公道を走る戦闘機「ケンメリGT-R」

作品1『旅たち SR400』/画材:ウインザーニュートン水彩絵の具、アルシュ水彩紙細目/サイズ:26×36㎝/制作:2021年

*最近、五木寛之さんの『折れない言葉』(毎日新聞出版、2022年)をはじめ「言葉」に関する単行本が売れているようです。
■そうですね。ボクも五木さんの『雨の日には車をみがいて』(集英社文庫、1998年)という小説を読みました。心理描写がなかなか面白い。クルマと時代背景も楽しく読みました。昭和のモーレツ時代から平成の失われた30年を経て、つまりこれからは、人間性を大切にする時代に向かっているようですね。

*最初に作品1からお聞きします。
■ヤマハSR400です。ヤマハのリーフレット用に描きました。SRは、むかしボクも乗っていた大好きなバイクです。SRはこれが最終モデルでした。
 全体に明るい色調と、海面のキラキラした表情を工夫しました。紙の白をそのまま塗らずに残す「ネガティブペイント」という技法を使いました。
 イラストの構成は、最後のSRに敬意を表し、女性がSRにまたがって人生という旅に出るイメージです。じつは、この作品のオリジナル原画は、旅立ちののびやかなイメージを物語風に表現するため、砂浜(浜辺)を舞台に描きました。AAF作品展(2022年7月21〜31日)では、オリジナル原画を展示しますのでお楽しみください。

作品2『’73 ケンメリ戦闘機』/画材:ウインザーニュートン水彩絵の具、アルシュ水彩紙荒目/サイズ:31×41㎝ 制作:2021年

*作品2について解説をお願いします。
■1973年型スカイライン(4th)GT-R、通称「ケンメリGT-R」です。「公道を走る、まるで戦闘機のようなカスタム車」というイメージです。高台から朝日を望むシチュエーションにこだわり、左右に観覧車と富士山を配置しました。あるオーナーの依頼で描きました。

作品3『晩秋を駆け抜けるEtype』/画材:ウインザーニュートン水彩絵の具、アルシュ水彩紙荒目/サイズ:31×41㎝/制作:2021年

*作品3は?
■ジャガーEタイプは、軽井沢に住む友人のクルマです。軽井沢の林道をドライブしているときの気持ちよさを表現したくて、実際に現地で取材させてもらいました。クルマのスピード感を出すため、路面の描き方を工夫して、紙が水を吸い込む速度に気をくばりながら楽しく描きました。
 取材は5月でしたが、背景は紅葉が美しい秋の風景に変更しました。

*将来、描いてみたいテーマ、ジャンルはありますか?
■乗り物はそれ自体が目的ではなく人生を豊かにする道具。そんな楽しさや夢にあふれた絵を描きたいです。少し抽象的かもしれませんが……(笑)

*仕事や生活の中で、心を豊かにする言葉は?
■「年をとったから遊ばなくなるのではない。遊ばなくなるから年をとるのだ」です。19〜20世紀イギリスの劇作家、バーナード・ショーの言葉です(アイルランド出身。ノーベル文学賞受賞。1856~1950年)。好きなことに夢中な時間は、心がいつまでも若くいられます。
 最近、家で過ごす人が増えたので、お気に入りの絵を身の回りに置いたり、読書をしたり、そう、心の豊かさを求める傾向です。  ボクは絵の持つ魅力を大切に伝えながら、心豊かなライフスタイルの提案をしていきたいと思います。

作者プロフィール
おがわかずみ/1955年、愛知県出身。自動車雑誌の表紙、自動車メーカーのカタログ用テクニカルイラスト、挿絵、下町のまちおこしのための下町風景画など幅広く手がける。AAF(オートモビル・アート連盟)会員。神奈川県在住

インタビュアー/山内トモコ

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