【20世紀名車】「1972年スプリンター・トレノ(TE27型)」はトヨタのスポーツスピリットを明確に主張。GR86やAE86の原点となったじゃじゃ馬FRだった

1972年式トヨタ・スプリンター・トレノ。軽量コンパクトボディにセリカGT用の1.6ℓ・DOHCユニット(2T-G型)を搭載したスパルタンスポーツ。1975年の1000湖ラリーでは日本車初のWRC優勝を飾った

1972年式トヨタ・スプリンター・トレノ。軽量コンパクトボディにセリカGT用の1.6ℓ・DOHCユニット(2T-G型)を搭載したスパルタンスポーツ。1975年の1000湖ラリーでは日本車初のWRC優勝を飾った

AE86伝説はTE27型が準備を整えた

 1972年3月に登場した初代スプリンター・トレノ(そしてカローラ・レビン/TE27型)は、コンパクトボディにパワフルなエンジンを組み合わせたFRスポーツ。現在のGR86や、名車AE86のルーツである。それはベストセラーだったスプリンター/カローラのクーペに、ワンランク上のセリカGT用1.6リッターDOHCユニット(2T-G型/115㎰/14.5㎏m)を搭載したホットグレードだった。

 性能は圧倒的。トップスピードは190㎞/hに達し、0→400m加速を16.3秒で駆け抜けた。速さは当時の2ℓスポーツを凌駕した。ハイパフォーマンスには“軽量性”が大いに貢献していた。トレノの車重は865㎏。セリカGTと比較して75㎏も軽かったのだ。パワーウェイトレシオは7.52㎏/㎰。この数値はセリカGT(8.17㎏/㎰)を凌ぎ、トヨタ2000GT(7.47㎏/㎰)に迫った。

エンジン

 足回りは、フロントがストラット、リアは古典的なリーフリジッドの組み合わせ。強力なDOHCパワーに対応した強化型サスペンションだったものの、アクセルをワイドオープンすると姿勢を制御するのにテクニックを必要とした。とくに荒れた路面での操縦は難しかった。ハンドリングは“じゃじゃ馬”と評された。トランスミッションはもちろん5速MTのみ、ステアリングにパワーアシストはない。

 スタイリングはFRP製オーバーフェンダーがレーシーなイメージを演出。クロームモール類がない外観はスパルタンそのもの。内装は、インパネ中央部に電流、油温、油圧計が装備され、ビニールレザー仕様のスポーツシートを装着。走りに不要な時計やオーディオはオプションだった。TE27型は、すべてが“走りのクルマ”を印象づけた。ボディの全長×全幅×全高は3965×1595×1335㎜である。

リア

 TE27型は、モータースポーツシーンで高い実力を証明する。ツーリングカーレースはもとより、ラリーで無敵を誇った。とくにラリーでの活躍は海外でも目覚ましく、1975年の1000湖ラリー(フィンランド)で総合優勝を飾る。これは国産車初のWRC(世界ラリー選手権)勝利だった。

 初代トレノは、デビュー5カ月後のマイナーチェンジでフロントマスクを一新。翌1973年6月にも改良を受け、1.6ℓ・OHV(105㎰)ユニットを搭載した廉価版のトレノJをラインアップに加えた。そして1974年4月にチェンジし2代目モデルに移行。初代のモデルライフは約2年と短かった。

 取材車は1972年の初期型。内外装、とくにボディの状態は素晴らしい。数年前にオリジナル塗装をすべて剝離し、キズやサビを補修して新車時と同様のオレンジで全塗装済み。バンパーなどは再メッキが施されている。塗装の艶は新車同然である。

 ホイールはRSワタナベ製8本スポークアルミ。タイヤは純正サイズよりも太い185/60R13サイズ。内装はステアリングをはじめオリジナル状態。メーターはすべて正常に作動した。シートのクッション性も良好だった。

室内

 走りは迫力たっぷり。ソレックス製キャブレターを2連装した2T-G型ユニットの排気量は1588㏄から1750㏄に拡大され、排気系はステンレス製のエグゾーストマニホールドとマフラーでファインチューン済み。エンジンはセル一発で始動し、吹き上がりはシャープそのもの。キャブレターの吸気音と野太い排気音をBGMに豪快な加速を見せつけた。とくに4000rpmを超える領域でのパワーは圧倒的なレベル。その速さは現在のレベルでも鮮烈だった。ちなみに足回りははっきりと固めの設定。ブレーキの利きは上々だっものの、ステアリングが重いこともあり、“ねじ伏せる”という表現が適切なドライビングだった。

 初代トレノは “雷鳴”という車名にふさわしい走りに徹したモデルの代表。その気骨あるスパルタンな走りは、マニアを魅了する魅力にあふれている。

エンブレム

諸元

フロント

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