【クルマの通知表】「デリ丸」販売絶好調! タフなKマルチワゴンという新価値を確立したデリカミニのデザイン企画力

三菱デリカミニTプレミアム(4WD)/価格:7CVT 223万8000円。デリカミニは実質的にはeKクロススペースの大幅改良モデル。新たなネーミングとデザイン刷新で高い人気を獲得。各部は「オフロードの三菱」らしくこだわった作り込みを実施している

三菱デリカミニTプレミアム(4WD)/価格:7CVT 223万8000円。デリカミニは実質的にはeKクロススペースの大幅改良モデル。新たなネーミングとデザイン刷新で高い人気を獲得。各部は「オフロードの三菱」らしくこだわった作り込みを実施している

一見ブランニュー、実は改良型。高い人気は商品企画力の勝利

 デリカミニは人気絶頂。だが完全なニューモデルではない。内容的にはekクロススペースのマイナーチェンジ版。改名してデザインを大幅に変えたクルマである。
 ネーミングや、「デリ丸。」などのキャラクター設定、そして何よりタフなSUVイメージのしつらえは実に巧み。売れ行きは好調そのものだ。なんとeKクロススペース時代の3~4倍に増えたという。商品企画力の大勝利といってよい。車名に「デリカ」とついていることから興味を持ったユーザーが大勢いるに違いない。

 このところSUV風味の軽ハイトワゴンが増えてきた。その中でデリカミニは本格派のイメージ。ひときわ異彩を放っている。先日「2023-2024 デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」に選出されたのも記憶に新しい。

リア

ドア開け

 とはいえ見た目の雰囲気は大きく変わったが、クルマとしての基本はekクロススペースを踏襲している。メカニズム上は日産ルークスとBROS車の関係にある。
 室内は「アウトドアはもちろん、子育てファミリーも便利に使えるように配慮した」と開発陣が語るように実用的。いたるところに収納スペースが設けられている。水平基調の精悍な色合いのインパネは、「本当はもっとデリカらしい雰囲気にしたかった」らしい。さすがにマイナーチェンジでは難しかったそうだ。

シートには撥水性のある生地を採用。雨滴なども簡単に拭き取れる。それでいて生地の見た目や触れたときの質感は上々。着座感はソフトだ。一見、フラットな形状ながら意外とホールド性に優れることも好印象である。

インパネ

フルフラット

 空調も凝っている。基本的にeKクロススペース時代と同様なのだが、注目すべき点がいくつかある。まず操作パネルがいい。大きなスペースを確保して直感的に操作できるよう配慮している。パネルには微妙に凹凸が設けられており、操作音も出るのでブラインドタッチもしやすい。吹き出し口の位置もちょうどよく、ドリンクホルダーと連携した作りとなっている。頭上にはプラズマクラスターを備えたリアサーキュレーターを備える。後席に小さな子どもを乗せるケースも多いキャラクターなので、こうした親切装備はうれしい。その他、前席シートヒーターやステアリングヒーター、後席向けのリアヒーターダクトとロールサンシェードも装備されていた。

 使い勝手は高水準。リアシートは320mmのスライドとリクライニング機能を内蔵。乗車人数や荷物などに合わせて自在にアレンジできる。荷室の開口高は1080mmあり、フロアも低めなので荷物の積み下ろしもしやすい。

ややクセのあるエンジン特性。タフな足回りに好感

 テスト車は最上級グレードのTプレミアムの4WD。64ps/100Nmのターボエンジンと2.7ps/40Nmのモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドである。動力性能は十分ながら、エンジン特性にはひとクセある。低回転域がリニアではないのだ。右足を踏み込むと、あるところからオーバーゲインぎみにトルクが盛り上がる。

 ごく普通にドライビングする場合や、アクセルを軽く踏み増したときにはリニアに反応するが、素早く深く踏み込むと、一呼吸を置いてから強い加速が始まる。それは市街地だろうと高速だろうと、どの車速域でも同様だ。再加速する際はパドル操作でシフトダウンしたほうが走りやすい。エンジン回転数が上がると、やや騒々しいことも気になった。

 これではACCはスムーズに働かないのではと危惧したが、それは杞憂だった。ACCはエンジン特性をあらかじめ想定した設定なのか、少しでも流れていれば車間距離を適宜保持する。停止してしまうと少々もたつくのだが、限られた動力性能をめいっぱい駆使して前走車に追従していることが伝わってくる。制御はなかなか上手い。
 これは試乗車固有の現象なのかもしれないが、ACCで都市高速を走っていた際に、思い当たる原因もないのに不意に一時的に機能が停止されることがあった。少々気になった。

顔

タイヤ

 足回りはデリカを名乗るだけに、しっかりとした印象。Tプレミアムの4WDは外径の大きな165/60R15サイズのタイヤを履き、サスペンションは専用にチューニングされている。その完成度はなかなか高い。路面からの入力を上手く吸収して、乗り心地は快適。しかも、カーブでのロールは適度だ。ぐらつきはよく抑えられている。ステアリングフィールも心地いい。反応は素直で手応えは上質。直進安定性もまずまずだ。

 未舗装路でも安心感は変わらない。路面の影響を受けにくくステアリングも取られない。トラクションも優れている。下回りを見ると、アーム類を守るための簡易的なガードが装着されていた。デリカミニでもさすがはデリカの弟分である。見た目だけでなくSUVとしての本質も追求している。ユーザーの期待を裏切らない。

通知表/三菱デリカミニTプレミアム(4WD) 価格/7CVT 223万8500円

チャート

総合評価/70点

Final Comment

アクティブなオーナーが満足する使い勝手
オフロードもタフにこなす足回りがいい

 同じKスーパーハイトワゴンのN-BOXと比較すると、使い勝手は両車とも優秀、快適性はデリカミニが上回った。クセのあるエンジン特性はマイナス点。とはいえパワフルなことは確かで、運転もしやすい。ドアミラーやメーターは非常に見やすく、視界を補助する機能も充実。先進運転支援装備も高機能である。足回りはざっくりいうとダンパーの減衰力の縮み側を下げて伸び側を強化している。ハンドリングが素直で、オフロードでもしっかりしているのは安心感につながる。

使い勝手

快適性

動力性能

魅力

コース三菱デリカミニ 主要諸元と主要装備

グレード=Tプレミアム(4WD)
価格=7CVT 223万8500円
全長×全幅×全高=3395×1475×1830mm
ホイールベース=2495mm
トレッド=フロント:1300/リア:1290mm
最低地上高=160mm
車重=1060kg
エンジン(レギュラー仕様)=659cc直3DOHC12Vターボ
最高出力=47kW(64ps)/5600rpm
最大トルク=100Nm(10.2kgm)/2400〜4000rpm
モーター最高出力=2.0kW(2.7ps)/1200rpm
モーター最大トルク=40Nm(4.1kgm)/100rpm
WLTCモード燃費=17.5㎞/リッター(燃料タンク容量27リッター)
(市街地/郊外/高速道路:16.2/18.3/17.6㎞/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トルクアーム式3リンク
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ドラム
タイヤ&ホイール=165/60R15+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=4名
最小回転半径=4.9m
主要装備:e-Assist(衝突被害軽減ブレーキ+踏み間違い衝突防止アシスト+車線逸脱警報&防止支援機能+オートマチックハイビーム+ふらつき警報+前方衝突予測警報+標識認識システム+先行車発進通知)/MI-PILOT(全車速追従機能付きレーダークルーズコントロール+車線維持支援機能)/ヒルディセントコントロール/リアビューモニター付きルームミラー/マルチアラウンドモニター/前後パーキングセンサー/電動パーキングブレーキ&ブレーキオートホールド/フルオートAC/リア:サーキュレーター/ウエルカムライト/グリップコントロール/LEDヘッドライト/フロント:リア:シルバーアクセントバンパー/後席左右パワースライドドア/ルーフレール/本革巻きステアリング/ステアリングヒーター/ナビ取り付けパッケージ/撥水シート生地/前席シートヒーター/助手席シートバックテーブル
主要装着op:アダプティブLEDヘッドライト 7万7000円/ナビドラ+ETC2.0パッケージ(9型ナビゲーション+ドライブレコーダー+ETC2.0車載器)36万9820円
ボディカラー:レッドメタリック×ブラックマイカ(op6万500円)

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