【最新モデル試乗】絶品Mパワー・ストレート6+6MT。BMW・M2はすべてでドライバーを魅了する!

BMW・M2クーペ/価格:6MT 958万円(8SATも同価格) 試乗記

BMW・M2クーペ M2はドライビングを楽しむために開発されたピュアスポーツ。2992cc直6DOHC24Vツインターボ(S58B30型)はM3/M4と共通シリーズ。スペックは460ps/6250rpm、550Nm/2560〜5870rpm。全域シルキースムーズでパワフルな究極のスポーツ心臓

BMW・M2クーペ M2はドライビングを楽しむために開発されたピュアスポーツ。2992cc直6DOHC24Vツインターボ(S58B30型)はM3/M4と共通シリーズ。スペックは460ps/6250rpm、550Nm/2560〜5870rpm。全域シルキースムーズでパワフルな究極のスポーツ心臓

純粋なドライビングを楽しむFRクーペ上陸

 先代のM2は、誤解を恐れずにいえば、とてもスパルタンで、ややもすれば野蛮なスポーツモデルだった。まずは乗り心地がガツガツとして落ち着かないうえに、雨でも降ろうものならアクセルオンで後輪が簡単に流れることも珍しくなかった(トラクション・コントロールをオフにした場合)。

 もっとも、これはM2に限らず、Mハイパフォーマンスモデルと称される先代のM3やM4とも共通した傾向だった。とりわけブレーキングを残したままコーナーに進入すると、その後のブレーキングオフで微妙にノーズの向きが変わってしまう癖は、個人的にどうしても馴染めなかった。

M2メイン

M2リア

 ところが、Mハイパフォーマンスモデルの足回りは、現行M3/M4のデビューとともにガラリと見直された。サスペンションが格段にしなやかにストロークするようになって乗り心地が改善。同時に路面への追随性が大幅に向上したのである。おまけに、ブレーキを残したままコーナーに入ってもハンドリングに影響が出なくなった。「史上最高のM3/M4」と評価したくなるシャシーに変身していた。

 初対面した新型M2は、恐ろしく過激なスタイリングに仕上げられていることに、まず驚いた。前後のオーバーフェンダーは張り出しが強烈なだけでなく、あえて直線的で武骨なデザインにして凄みを増していた。それは長方形のエアインテークが設けられたフロントのエアダム周辺やリアバンパーについても同様。モダンなデザインなのに、どこかレトロなムードがつきまとう。新型M2は、いかにもBMWの現チーフデザイナー、ドマゴイ・ジューケッツらしい作品だ。

M2ハイアングル

 なお、ダッシュボード上には画面が湾曲した大型のデジタルディスプレイが鎮座する。グリップが太めのステアリングホイールと左右のステアリングリム上に赤いM1/M2ボタンが設けられている点は、従来のMハイパフォーマンスモデルそのままの文法である。

新型の足回りはしなやか。マニア垂涎の6速MTは楽しい

 走り始めて新型の変化を直感した。見た目の過激な印象がウソのように乗り心地が洗練されていて、タヌキに化かされているような思いに駆られた。とにかくサスペンションの動きが滑らかで、ゴツゴツした印象がない。おまけに、高速巡航時のロードノイズは十分に低く、エンジン音さえほとんど目立たない。古くからのMファンだったら、ちょっと拍子抜けするほどの快適性と静粛性に仕上げられている。

 新型M2には6速ギアボックスを搭載したMTモデルと8速Mステップトロニックを積むATモデルが用意される。試乗車はよりスパルタンなMTモデル。試乗の折、私は、間の悪いことにソールがワイドなジョギングシューズを履いてきてしまい、フットレストの影響で左足のスペースが限られたクラッチペダルを踏むのに難儀することになったのだが、考えてみれば、こんな経験をするのも本当に久しぶりのこと。まずはドライビングポジションをしっかり合わせ、ステアリングやペダル類を的確に操作できるように体勢を整えてから、M2のドライビングを楽しんだ。

M2インパネ

M2シート

 ワインディングロードで新型M2は期待どおりの走りを披露してくれた。ハンドリングの傾向はM3/M4と同様で、しなやかな足回りを駆使して極めてスタビリティの高いコーナリングを実現している。それどころか、「スポーツ+」という最もスパルタンなドライビングモードを選んでも、サスペンションがほどよくストロークしてロールやピッチといった姿勢変化を許すほど。もちろん、それらの量はしっかりとチェックされているので不安はない。新型は、かつてのMハイパフォーマンスモデルとは比べものにならないほどしなやかな足回りの持ち主である。

陶酔のMパワー! 速さと豪快さ、そして洗練が融合

M2エンジン

 460ps/6250rpmと550Nm/2650~5870rpmを生み出すストレート6は、そのスペックから想像されるほど凶暴ではない。回転数を問わずリニアでレスポンスのいいパワーを生み出してくれる。注意深く観察すれば、ストレート6らしい魅力的な鼓動もしっかりと感じられるのが素晴らしい。物足りなさはゼロといっていいだろう。

M2タイヤ

M2マフラー

 想像するに、スーパースポーツカーを含むすべてのハイパフォーマンスカーが洗練の度合いを増していくなか、Mモデルだけが旧来のやり方にこだわるわけにはいかなくなったのだろう。つまり、一定の顧客を確保してビジネスとして成立させるために、新型M2のような「進化」は必要不可欠だったのである。けれども、週末のたびにニュルブルクリンクのノルドシュライフェに通うようなハードコアなBMWファンにとって、ハイパワーなストレート6と後輪駆動、それにマニュアルトランスミッションという組み合わせは譲ることのできないスペック。そこで生み出されたのが新型M2だったと推測される。

 なお、M3/M4と同じようにこのM2にもMトラクションコントロールが装備されている。電子デバイスというセーフティネットを残したまま大胆にドリフトを味わう運転も可能であることを、最後に付け加えておきたい。

BMW M2主要諸元

グレード=M2クーペ
価格=6MT  958万円
全長×全幅×全高=4580×1885×1410mm
ホイールベース=2745mm
トレッド=フロント:1615/リア:1605mm
車重=1710kg
エンジン=2992cc直6DOHC24Vツインターボ(プレミアム仕様)
最高出力=338kW(460ps)/6250rpm
最大トルク=550Nm(56.1kgm)/2650〜5870rpm
WLTCモード燃費=9.9km/リッター
(WLTC市街地/郊外/高速道路:6.8/10.3/11.8 km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=フロント:275/35R19/リア:285/30R20+アルミ
駆動方式=FR
乗車定員=4名
最小回転半径=5.2m

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